ザ・ウォーターボーイズのフロントマン、マイク・スコットにインタビュー!~ツイッターで募集したフジロッカーズからの質問も聞いてきましたよ!!~
- 2019/05/01 ● Interview
今年のフジロックに2014年の出演以来、5年ぶりの出演が決定しているザ・ウォーターボーイズ。1983年に英スコットランド・エジンバラ出身のマイク・スコットを中心に結成されたベテランバンドがニュー・アルバムを引っ提げて苗場にまたやってきます!
ザ・ウォーターボーイズは、NYパンク、ニュー・ウェーヴの初期、さらにロックにケルティック・フォーク、アイルランド伝統音楽、プログレ、カントリー、ゴスペルなどを取り入れた音楽性と、文学性豊かな歌詞の融合した楽曲で、活動初期から世界的に高い評価を獲得しています。代表曲「The Whole Of The Moon」は、プリンスがカヴァーしたり、U2が2017年のワールド・ツアーの導入歌として使用したりと、ロック界の名曲のひとつであり、また、アイリッシュ・トラッドを大胆に取り入れた4thアルバム『Fisherman’s Blues』は大ヒットを記録。なかなか来日公演がないので、日本での知名度はいまひとつですが、フロントマンのマイクが2016年に、芸術家のろくでなし子(本名:五十嵐恵)と結婚したことは大きな話題になりましたね。
フジロッカーズ・オルグでは、来日したマイクにインタビューを実施。フジロック初出演の思い出から、今年の意気込み、さらに事前にツイッターで募集したみなさんからの質問まで、いろいろと聞いてきました!
※最新アルバムの情報は、記事の最後に掲載しています。
家族で日本を満喫! 下北沢が大のお気に入り
─ 日本での滞在はいかがですか?
とても素晴らしいよ! 下北沢に滞在しているんだけど、ファンキーなエリアですごく好き。以前にも訪れたんだけど、今回の滞在で詳しくなったよ。小さなカフェやショップ、おいしいイタリアンレストラン、それにすごくいいロックンロールな服屋も見つけて、エルビス・プレスリーが着用したものと同じ型のジャケットとか、いろいろと買ったよ。妻と息子も一緒に日本に来ているんだけど、毎朝息子をベビーカーに乗せて連れ出しているんだ。
─ エンジョイされているようでよかったです。そもそも今回来日された目的は?
親族訪問だよ。僕の妻である恵は日本人だから。僕たちはダブリンに住んでいるんだけど、恵が日本を恋しがっているから、年に2回は日本に来るようにしているんだ。昨年だと僕は1回で彼女は2回。今年は夫婦一緒に2回来日するつもり。
─ 日本に滞在するときは、おもに東京エリアですか?
ほとんど東京だね。恵は静岡県出身だから、彼女の両親を訪ねて静岡に行くこともあるけど、ご両親が東京まで会いに来てくれることが多いよ。
2014年のフジロックがザ・ウォーターボーイズ初の日本公演
─ 2014年にフジロックに初出演したときの思い出は?
とにかく暑かったことを覚えているよ。バックステージも、ステージ上も、道中も、とっても暑かった…。そして、とてもいいオーディエンスに恵まれたよ。みんなファンタスティック! 僕自身はソロで1996年に日本で演奏しているんだけど、ザ・ウォーターボーイズとしては前回のフジロックが初めての日本でのステージだったんだ。
─ ソロとザ・ウォーターボーイズでの活動には、どういった違いがありますか?
ザ・ウォーターボーイズとして活動する方が断然いいね。他の個性とステージを共有するのが好きなんだ。ソロの場合、バンドがいてもバック・ミュージシャンとして見られてしまうでしょ? でも、バンドメンバーたちにスポットライトを当てたいという気持ちがあって。メンバーに二人の素晴らしい女性シンガーたちがいるんだけど、ときおり彼女たちがリードボーカルになることもあるよ。
─ 2014年当時、初めてのフジロック出演が決まったときにどんな気持ちでしたか?
5年前のことだからちゃんとは覚えていないけど…、きっととてもうれしかったと思う。フジロックはヨーロッパでも素晴らしい日本の音楽フェスティバルだと知られていて、ずっとフジロックで演奏したいと思っていたから、もちろん出演が決まったときはうれしかったね。
─ 会場を見てまわる時間はあったんですか?
日本には2日間しかいなかったから、残念ながら会場を見る時間はなかったんだ。あ、でも、原宿で迷子になる時間はあったよ(笑)! 滞在先が東京で、夕食を食べに原宿に行ったんだけど、2台のタクシーで向かったらそれぞれ違う場所で降ろされて、合流できなかったんだよね…。
─ それはなんとも不運なアクシデントでしたね…!
繰り広げられるのは「ソウル・ファンク・ロックンロール・ショー」!
─ 続いて、フジロッカーたちから寄せられた質問を聞いていきたいと思います。先日、フジロッカーズ・オルグのツイッターアカウントでマイクさんへの質問を募集したところ、6件寄せられました。実はマイクさん、ツイッター上でいくつかすでに答えていただいているんですよね(笑)。
Yes, 96 first time. I love Tokyo!
— Mike Scott (@MickPuck) 2019年2月21日
なんと…! よろこんでもう一度答えるよ。
─ ありがとうございます! それでは、一つめの質問です。「このバンド編成は、伝統的なスタイルなんですか?」
もしフォーク(民俗音楽)なのかと聞いているのであれば違うね。7人組のソウル・バンドで、ファンク&ソウルミュージックに近いかな。ロックンロールとほんのすこしフォークミュージックの要素が入った「ソウル・ファンク・ロックンロール・ショー」。エレクトリック・フィドルでディストーション、ファズの効いたダーティですごくファンキーなサウンドを作り出すフィドル奏者、それに素晴らしいファンク・ベーシストもいるよ。
僕は子供の頃にロックンロールのバンド、たとえばローリング・ストーンズにザ・フ―、デヴィッド・ボウイやスパイダーズ・フロム・マーズを聴いたり、ソウルミュージックだとモータウンにマーヴィン・ゲイ、スライ・ストーンを聴いたり。フォークミュージックにハマったこともあって、自分の中にはそういった音楽の要素が混ざっているんだ。でも、ザ・ウォーターボーイズのときにはファンク&ソウルに重点を置いているよ。
─ では、二つめの質問です。オーストラリアの方から。「いつオーストラリアに来ますか? ショーのために、私を(日本まで)泳がせないでください!」という質問をいただきました。
できれば2020年春には、と思っているよ。2015年にオーストラリア、ニュージーランド、東京を周ったから、またそのようなツアーができたらなって。今度はツアーでも日本に呼んでもらえるように、スマッシュを説得しようかな。
─ 今年、フジロック以外の日本でのライブの予定は?
フジロックが終わった後は、イングランドでクロップレディ・フェスティバルに出ることが決まっていて、ヨーロッパで忙しくしているはずだよ。
─ すると、今年はフジロックでしか見るチャンスがないわけですね!
結婚によりもっと深いつながりを感じるようになった日本
─ 三つめの質問に移りましょう。「私は80年代からザ・ウォーターボーイズのファンです。そして、ろくでなし子さんのファンです。ろくでなし子さんとパートナーになり日本に対する想いはどのように変わりましたか?より身近に感じていただけていたらうれしいです」ということです。いかがでしょう?
もちろん日本に対して、以前よりもっと深いつながりを感じるようになっているよ。僕には日本人の義父と義母、妻、それに日本人の血が半分流れている息子がいて、つまり僕は日本の家族の一員というわけ。結婚前に恵と付き合っていた頃は、年に8、9回くらい日本を訪れたし、彼女が妊娠したときには、病院に付き添うために毎回アイルランドから駆け付けたよ(※妊娠期間中に結婚。結婚後にろくでなし子さんはアイルランドに渡って出産した)。
日本人女性と結婚したことで、愛情表現の仕方とか、日本とヨーロッパの文化の違いを常に学んでいるよ。お寿司の食べ方といった簡単なものから、日本での女性のポジションといった込み入ったものまで、恵はいつも日本のことを教えてくれる。僕も日本語を勉強していて、すこし話せるようになってきたんだ。もし若い頃の自分が、日本人の妻、その妻との間に息子がいる現在の姿を見ることができたら「なんて素晴らしいんだ!」って言うに違いないね。
そうそう、日本の子供向け番組もけっこう見ているよ。アイルランドでも日本のテレビ番組を放送しているチャンネルを契約していて、朝の時間帯は子供向け番組を放送しているんだ。キャラクターの名前、全部言える自信があるよ! 息子が好きなアンパンマンの歌も覚えて。僕には5歳になるアイルランド人の娘もいるんだけど、彼女も歌えるんだ。『おかあさんといっしょ』の体操のお兄さんってすごいよね! カリスマだよ、天才!!
─ 本当によくご存じですね(驚)! 奥さんとご結婚される前に『ROK ROK ROKDENASHIKO』を制作されていますよね?
彼女の裁判への支援ソングとしてね。
─ それ以外に、奥さんが音楽活動に与えた影響はありますか?
うーん、そうだね。前作の『Out Of All This Blue』というダブルアルバムに収録されている最後の5曲は彼女との関係を歌ったものだよ。
─ 同じ質問者の方から、「飲み物の自動販売機に興味津々のようですが(笑)、感想をお願いいたします」とのコメントもいただいています。
ああ、自動販売機の画像をいろいろツイートしているからだね(笑)。日本のものは一つの機械に温かい飲み物と冷たいものがあったり、色や飲み物の名称もいろいろとあったり、ヨーロッパ人にはまるで魔法みたい。ヨーロッパのものはすごくつまらなくて(笑)、地元のみんなにも楽しんでもらえるように写真を撮ってツイートするのが好きなんだ。
Vending machines, Tokyo pic.twitter.com/7BufVix9av
— Mike Scott (@MickPuck) 2019年2月19日
創作意欲を刺激する東京、日本は「第三の故郷」に
─ では、四つめの質問にまいりましょう。「ソロで初来日した96年と97年のクラブ・クアトロでのライブを見ました。忘れられない思い出です。96年のライブで初めて日本を訪れたんですよね? どのように東京のことが好きですか?」といただいており、この質問にはすでにツイッター上で「そう、96年が初めて。東京が大好きだよ!」と回答いただいているんですけど、同じ方から追加質問をいただいておりまして。「今晩、東の空に『The Whole Of The Moon(※ザ・ウォーターボーイズの代表曲タイトル。月の全体像)』を見ることができます。東京で満月を見たことはありますか?」という質問です。
数か月前、タクシーに乗っているときに、原宿の上空にとても大きな月を見たよ。すごく美しかったね。滞在していると、東京はとてもクリエイティブな街だと気づくんだ。市街の風景はヨーロッパの街並みとまったく違っていて、ある部分はとても斬新で。刺激的な街が、僕を目覚めさせる。曲作りも容易にできる場所なんだ。視覚的なアイデアにも溢れていて、色やビル群のイメージ、ショップなどは細部にまでこだわった美しさがあって、古いビルもあるけれど、近代的な美しさのものもあるよね。東京にあるすべてのものを見たいという思いから、東京ではあまり地下鉄を使わず、地上を走るバスに乗るようにしているんだ。標識やグラフィティ、そこかしこに貼られたステッカーにショップ、建物、街のエネルギー…、とてもエキサイティングだよ。
─ 東京からたくさんのインスピレーションを得ているんですね。
そうだね。しばらく来ないと東京が恋しくなっちゃうんだよ、妻の恵みたいに。彼女は日本で生まれ育ったから当然といえば当然なんだけど、僕も2,3カ月離れただけで、恋しくなって。僕には出身地のスコットランド、今住んでいるアイルランドとすでに二つの馴染み深い国があるけど、日本のことは第三の故郷のように感じ始めているよ。
「小さな会場で演奏するのも楽しそうだね」
─ では、五つめの質問です。「ザ・ウォーターボーイズ2度目のフジロック出演が発表され、とても興奮しています! これまでさまざまな野外フェスティバルに出演されてきたと思いますが、もっとも印象に残っているフェスティバルは、いつ、どこで開催されたものですか?」
もっともエキサイティングだったのは、25歳でザ・ウォーターボーイズとしてグラストンバリー・フェスティバルに初めて出演したとき。ロックのフェスティバル自体、初めてだったんだ。今ではとても規模が大きくなったフェスティバルだけど、35年前はもっと小さくて、とてもオルタナティブ(主流のものとは違う存在)で。まるで夢のような、エキサイティングな空間が夜通し広がっているんだ。僕たちは新しいバンドだったからお昼頃の早い時間帯に演奏して、ほとんどのメンバーはロンドンに帰ったけど、ドラマーと僕は会場に残ってその雰囲気に酔いしれた…。素晴らしい体験だったよ。グラストンバリーは規模が大きくなったことで主流になったように感じるかもしれないけど、当初から変わらない想いを持ち続けていて、いまだにオルタナティブな、昔ながらの風変わりなフェスティバルであり続けているんだ。
─ 先ほどの質問者の方から「グラストンバリーで、あなたのグラストンバリー・ソングを聴くのが夢です!」ともコメントいただいています。
おー! 来年のグラストンバリーでね、きっと(笑)。
─ それではフジロッカーズからの質問、最後です。「2014年はグリーンステージで演奏しましたね。『The Raggle Taggle Gypsy』、素晴らしかったです! フジロックで大きなステージだけでなく、小規模な会場でも演奏することに興味はありますか?」
ステージが複数回あるとお客さんが分散しちゃうから、ステージは一度で、僕たちを見たいお客さんみんながそのステージにどっと集まる方がよりいい雰囲気で好きだな。でもフジロックでは僕たちの知名度ってまだそれほど高くないから、小さな会場で演奏するのもとてもいいと思う。楽しそうだね。
─ では、小さな会場で演奏するかどうかについては、スマッシュの方々とこの後詰めていただけたらと思います(笑)。
5年ぶりのフジロック、「みんなと一緒にロックすることをうれしく思う」
─ では、今年の出演についてお聞きします。出演するにいたった経緯は?
5月に新しいアルバムを出すんだ。フジロックは素晴らしいフェスティバルで、2014年以来ずっとまた出たいなと思っていたから、出演できることをとても誇らしく思う。日本は演奏するのが大好きな場所のひとつだし、今では日本人の妻がいることもあって、この3年間、本当にたくさん日本を訪れているから、東京や日本のことを以前より理解できていると思う。だから、日本で演奏したいという気持ちは強く持っているよ。ここしばらくは残念ながら日本でのライブはなかったけど、今回戻ってくることができてうれしいな。
─ どんなステージを見せてくれるのでしょうか?
5月に出る新しいアルバムから何曲かやる予定だよ。もちろん、昔の曲もね。今年のツアーが5月から始まるから、そこでメンバーたちと集まってどの曲を演奏するか決めるよ。今の段階だと演奏する可能性のある曲がたくさんありすぎて。でも、一度決めたものにまた磨きをかけるから、フジロックのときにはセットリストがまた変わっていると思うけどね。
─ ステージ以外の時間に、なにか見てまわる予定はありますか?
今年はコンサートの10日前から家族と一緒に来日する予定だよ。他のメンバーは前回と同じく2日間だけの滞在だけどね。僕は時間があるから、恵が提案してくれたディズニーランドに家族で行こうかと思ってる。
─ フジロックの会場にはあまり滞在しない予定ですか?
どうだろう? どの時間帯に演奏するか次第かな。他の出演者のステージを見るかもしれないし、早めに東京に帰るかも。
─ もし時間があれば、ドラゴンドラやキッズランドなど家族で楽しめるアクティビティもあるのでおすすめですよ。
いいね。子供たちを連れていこうかな。
─ では最後に、フジロッカーたちに向けてメッセージをお願いします。
ザ・ウォーターボーイズのことを世界で一番のバンドだと思っているし、僕自身もソングライター、歌い手として、他のメンバーと同じようにいい働きをしていると自負してるよ。そんな僕たちのショーをフジロックで披露するよ。懸命に演奏し、歌うから。フジロックが大好きなみんなと一緒にロックすることをとてもうれしく思うよ!
いかがでしたか? マイクさんの日本に対する熱い思いがビシバシと伝わったのではないでしょうか? 日本や東京での経験が曲作りに昇華されているというのは、なんともうれしいかぎりですね!
5月24日に発売される、2年ぶりのニュー・アルバム『Where The Action Is』は、一部の楽曲が先行公開されていて、第一弾の『Right Side Of Heartbreak (Wrong Side Of Love)』に加え、このほどタイトル・トラック『Where The Action Is』の日本語字幕付きミュージックビデオが公開されました。渋谷のスクランブル交差点界隈を「リアルを感じる場所に行こう」と歌い上げながら練り歩くマイクさんの自撮り映像は、躍動感のある軽快なロックンロール・ナンバーにぴったり。従来のウォーターボーイズ・ファンはもとより、これから聴き始めようという人も、ぜひチェックしてみてください!
『Where The Action Is』ミュージックビデオ(YouTube):
Interview & Text by Izumi Sakamoto
Photo by Ayaka Sirai
最新アルバム情報!
フジロック出演のマイク・スコット率いるザ・ウォーターボーイズ、モッズ/ノーザン・ソウルのクラシック・ナンバーから名付けられたニュー・アルバム『ホエア・ジ・アクション・イズ』を5月24日に発売!1stシングル公開!
今年のフジロックフェスティバルに出演が決定しているザ・ウォーターボーイズは、2年ぶりのニュー・アルバム『ホエア・ジ・アクション・イズ』を5月24日に発売することを発表し、1stシングル「Right Side Of Heartbreak (Wrong Side Of Love)」を公開した。ニュー・アルバムのタイトルは、1960年代のモッズ/ノーザン・ソウル・シーンのクラシック・ナンバーであるロバート・パーカーの『Let’s Go Baby (Where The Action Is)』から名付けられた。また本作は、ミック・ジョーンズに捧げる曲など、実に多様な魅力を兼ね備え、素晴らしい詞とメロディを持ち、冒険心に富み、音楽的に実に素晴らしい作品である。従来のウォーターボーイズ・ファンはもとより最近彼らを聴き始めたようなリスナーでも一聴しただけで興奮するような、そんな傑作である。また日本盤CDには、ボーナス・トラックとして「代々木公園にて」と「下北が好きです」の2曲が収録される。
◼︎1stシングル「Right Side Of Heartbreak (Wrong Side Of Love)」
[Apple Music/ iTunes] https://apple.co/2XId14b
[Spotify] https://spoti.fi/2VDAh1F
[smartURL] http://smarturl.it/Waterboys_JP
ザ・ウォーターボーイズを率いるマイク・スコットは、40年に渡り英国を代表するソングライターとして活動を続け、プリンスはかつて彼らの代表曲「The Whole Of The Moon」を2種類のサウンドアレンジでカバー、またロッド・スチュワート、スティーヴ・アールズ、エリー・ゴールディング等にもカヴァーされるなど、その卓越したソングライティング、ライヴ・パフォーマンスは高い評価を得てきた。
オープニングを飾るアルバム・タイトル・トラック「Where The Action Is」は、ロバート・パーカーの同名曲のリメイクで、その歌詞とともにこのリメイクには今最もマイクが熱中しているあることが反映されている。それは曲の中で絶えず繰り返されるうねるようなグルーヴである。
続いて、より重量級のロックンロールナンバー「London Mick」。これはザ・クラッシュのギタリスト、ミック・ジョーンズへ捧げられた曲である。この小気味の良いサウンド・アレンジはミック・ジョーンズの1977年頃のスタイルへのオマージュである。この作品と対をなす曲が「Ladbroke Grove Symphony」で、かつてウェスト・ロンドンでボヘミアン暮らしをしていた若者たちのハートを揺さぶる素晴らしい賛歌となっている。
1stシングル「Right Side Of Heartbreak (Wrong Side Of Love)」は、マイク・スコットの自宅で録音され、キーボードのブラザー・ポールがナッシュビルのスタジオで完成させた、愛の試練をソウルフルに歌ったアルバムのハイライトのひとつ。
また本作には「Out Of All This Blue」という前作アルバムのタイトルとなった楽曲が収録されている。そもそもこの楽曲は前作アルバム用に録音されたものであったが結局収録されず、それをマイクが昨年再び着手しスタイルを変えた上で出来上がった曲である。この曲は心を病んでしまったある友人のために書かれ、救いを求めるものに手を差し伸べその気持ちを安らげることができるような心温まる一曲となった。
「Then She Made The Lasses-O」はスコットランドの国民的詩人ロバート・バーンズの「Green Grow The Rashes-O」からインスパイアを受けて作られた。「Piper At The Gates Of Dawn」はケネス・グレアムの名著「たのしい川べ」(The WInd in The Willows)の同名(The Piper At The Gates Of Dawn)の章に書かれた最も美しい一節を朗読したものである。昨年の夏、最初にこの作品のインスト・テイクがリアル・ワールド・スタジオで録音され、これに今回マイクがダブリンでボーカルを加えたのがこの作品。マイクの非常に美しく情景が浮かぶような朗読とバンドのブラザー・ポールとスティーヴ・ウィッカムによる優美なサウンドが相まって、透明感あふれこのアルバムのエンディングを飾るに飾る相応しい見事な一曲となった。
◼︎アルバム概要
アーティスト:ザ・ウォーターボーイズ (The Waterboys)
タイトル: ホエア・ジ・アクション・イズ (Where The Action Is)
発売日:2019年5月24日(金)
品番:TRCP-242/ JAN: 4571260588950
定価:2,400円(税抜)
ボーナストラック:2曲収録/解説:新谷洋子/歌詞対訳付
tracklist:
1. Where The Action Is
2. London Mick
3. Out Of All This Blue
4. Right Side Of Heartbreak (Wrong Side Of Love)
5. In My Time On Earth
6. Ladbroke Grove Symphony
7. Take Me There I Will Follow You
8. And There’s Love
9. Then She Made The Lasses-O
10. Piper At The Gates Of Dawn
11. 代々木公園にて (In Yoyogi Park)
12. 下北が好きです(Shimokita Ga Suki Desu)
[amazon] https://www.amazon.co.jp/dp/B07PL6Q417/
[Apple Music/ iTunes] https://apple.co/2XId14b
[Spotify] https://spoti.fi/2VDAh1F
[smartURL] http://smarturl.it/Waterboys_JP
◼︎ザ・ウォーターボーイズ
1983年、英スコットランド・エジンバラ出身のマイク・スコットを中心に結成。バンド名はルー・リードの曲の歌詞から名付けられる。NYパンク、ニュー・ウェーヴの初期、その後の3rdアルバム『ディス・イズ・ザ・シー』では、ロックにケルティック・フォーク、アイルランド伝統音楽、プログレ、カントリー、ゴスペルなどを取り込んだ音楽性と、マイク・スコットの文学性豊かな歌詞が融合して高い評価を獲得、シングル「The Whole Of The Moon」は彼らの代表曲であるばかりでなく、プリンスがカヴァーしたり、U2の2017年のワールド・ツアーの導入歌として使用されるなどロック界の名曲のひとつ。1988年、アイルランドに移住して制作された4thアルバム『Fisherman’s Blues』は、アイリッシュ・トラッドを大胆に取り入れた作品となり、大ヒットを記録。90年代はマイク・スコットは主にソロ活動を中心に行う。2000年代よりバンドとして、アルバムのリリース、ワールド・ツアーを精力的に行う。2014年にフジロックフェスティバルで初来日を果たし、2015年には単独初来日公演を行う。2019年5月、2年ぶりのニュー・アルバム『ホエア・ジ・アクション・イズ』を発売。同年フジロックフェスティバル出演。