“FUJI ROCK” AFTER PARTY ホットハウス・フラワーズ来日公演レポート!
- 2018/08/09 ● Report
フジロック・アフター・パーティとして、ホットハウス・フラワーズのライヴが7月31日の渋谷クラブクアトロでおこなわれた。
会場はやや高めの年齢層。フロアには椅子が並べられ、クアトロでは珍しく着席制だった。会場で販売されているドリンクは通常のものに加えてギネスが飲めるようになっていた。男女比は7:3くらいで、おじさんや外国人が目立つ。
その日のゲストとしてウエスタン・キャラバンがまず登場する。ウエスタン・キャラバンはSMASHの日高社長がニューヨークでみつけてきたバンドである。2017年のフジロックでおそらく初来日、そして今年も連続してフジロックに出演した。カントリー&ウエスタンにジャズをミックスさせ、さらにロカビリー、ブルースを演奏する。1930年代に流行した「ウエスタン・スウィング」のスタイルが彼らの基本にあるようだ。「肉を焼いてるレストラン」で演奏していたらしくアメリカ各地に数限りなく存在する「箱バン」(ディスコ、キャバレー、レストランなどで専属契約してその店のお客さんを相手に演奏するバンド)の底力を体感できる。
ギター、ベース、ドラムにスティールギター、さらにフィドルが2人、そしてヴォーカルという結構な大所帯、それぞれのプレイヤーがしっかりとした技術の持ち主なんでスリリングな音の重なり合いが楽しめた。テキサスへの望郷から高速道路での車のトラブルまでさまざまなものを歌い「演奏して生きる(生活する)」ことの積み重なりの味を感じさせるステージだった。
セットチェンジ中は、両バンドのグッズが当たる抽選会、そしてホットハウス・フラワーズのみどころを、今回のプロモーターであるプランクトンの人が語る(ひとつとして同じライヴがない、お客さんが盛り上がればリアムものってくる)ところもあって、20時を少し過ぎたところでホットハウス・フラワーズが登場する。
ホットハウス・フラワーズは14年ぶりの新作アルバム『レッツ・ドゥ・ディス・シング』が、世界に先駆け日本で発売される。2016年に公式サイトでダウンロードはできるようになっていたけれども、CDという形で世にでるのは日本が最初ということなのだ。
今年のフジロックでホットハウス・フラワーズは苗場食堂、フィールド・オブ・ヘブン、どん吉パークの3回出演した。どのステージも短い出演時間だったけれども、フジロックでは多くの人たちの心を掴んでいた。
ステージにはフジロックのときのような電子ピアノでなくグランドピアノが置かれたので、クアトロが狭くみえる。
ゆったりとしたピアノ、そして中東ぽいメロディかと思ってよく聴いたらやっぱりアイリッシュなものを感じさせる歌が立ち上がっていくオープニングからソウル、フォーク、ブルース、ロックが怒涛のように押し寄せる、もしくは優しく包み込む。
ヴォーカル&ピアノのリアム・オ・メンリィは何色というのか……白っぽい道士のような服を着ている。中国ぽいなと思ったけど、どうやらアフリカのマリで買ったものという話だ。このライヴでは「○○ぽいと思ったら、実は××だった」ということがある。それだけ、世界各地を旅して混ざり合ったものが彼らの音楽になっているのだろう。
リアムはマイクスタンド前に立って踊る場面もあった。一方、盟友であるギタリストのフィアクナ・オブレナンは、ヴォーカルを取ったり、ティンホイッスル(縦笛)を吹いたりと活躍し、長年に渡るリアムとの息もぴったり。もうひとりのオリジナル・メンバーであるピーター・オトゥールはベースとブズーキ(バルカン半島由来の弦楽器。アイルランドでも使用される)を使い分ける。バンドが2004年にスタジオ・アルバム『Into Your Heart』を発表した後、10年ほどバンドを離れていたピーターがバンドに復帰して、久々に3人が揃っての姿を日本で観ることができた。他のメンバーも演奏の確かさももちろん、コーラスの厚みがすごすぎて、その響きだけで十分な音楽体験である。
プリンスの”Purple Rain”のカヴァーも、リアムのソウルな声と重厚なコーラスと熱量高い演奏でソウルクラシックな曲になっていたのだ。これがこの日のハイライト。
もちろん”Don’t Go”もすばらしかった。カリプソというかアフロビートというか、リズムが陽気に改造されて、名曲が全く新たな姿となって現れた。アイルランドで生まれた魂がカリブ海からアフリカを巡って日本に降り立つ。音楽が国境を越えてしまうところを体験するのである。
バンドはアンコールに2度も応えて、盛り上がり続けた約2時間20分は、フィールド・オブ・ヘヴン(60分)+苗場食堂(40分)+どん吉パーク(40分)の出演時間を合わせたのと同じなのだ。フジロックにいけなかった人も同じように楽しめたフジロック・アフター・パーティーだったのである。
Text by イケダノブユキ
Photo by Koichi Hanafusa