スタッフやアーティストを支える影の功労者、Racco氏のフジロック。
- 2018/07/16 ● Interview
フジロックには、出演するアーティストが利用するホスピタリティエリアという場所が存在する。そのエリアでアーティストに食事を提供するRacco氏。岡山県、大船渡のRACCOS BURGERと東京、幡ヶ谷のRACCOS BARを営み、Idol Punchというバンドで音楽活動をおこなっている。そんな彼にこれまでホスピタリティエリアでの苦労や感動した話などを聞いてみた。
─ いきなり質問と違うのですが、まずはご結婚おめでとうございます。
Racco:ありがとうございます。「いいね」押しました?
─ もちろん!
Racco:じゃオッケー笑
─ それでは、一つ目の質問です。ラコスバーガーがアーティストホスピタリティエリアで出店をするようになった経緯を教えてください。
Racco:もともとホスピタリティっていうセクションに入っている業者が人手不足になってきている。ということで主催側のスマッシュから誘われました。
今はRACCOS BURGERだけでホスピタリティを担当しています。
─ それは大体何年ごろ前からですか?
Racco:うーん、確か8年ぐらい前かな。
─ フジロックが苗場に移ってからですね。
Racco:そうですね。
─ それから現在に至るまでに2012年にキャンプサイトでも出店されてましたね。
Racco:もともとホスピタリティエリアっていうのはスマッシュが管理してやっていて、出店者としてフジロックの会場内で一般出店もしてやってみたい、という気持ちがあったんですよ。それがちょっとおもしろい話なんだけど、スマッシュ側からずっと「やらない方がいいよ」と勧めら言われていました(笑)。
─ そうなんですか?
Racco:そう、かなりきっついから。売り上げが上がるかどうかではなく、「体力的にきりっきりになるよ」って言われていました。96時間営業ですからね。でも、それ以上に希望があったので一度やらせていただきました。
─ なるほど、フジロックで出店するようになる前はどのような場所で出店されていましたか?
Racco:毎年やらせて頂いている大型フェスも多々あります。年間通して3分の1位は出店営業に関わる作業を行ってる様な気がします。
─ すごい数ですね。ということは、体力面的に厳しさはあるかもしれませんが、フジでの出店自体はスムーズにいきましたか?
Racco:オペレーション自体ももともと持っていましたので大丈夫だったと思います。場外、キャンプサイトエリアでは飲食店アンケートでRACCOS BURGERが1位に選ばれて「大変だったけどまた出店したい」って感じだったんですが、キャンプサイトの店の前で、夜フジに出演していた友達とかに弾き語りとかしてもらったりとか、かなり自由にしてたので、翌年のFUJI ROCKの出店募集に応募したらサクっと落とされました。(笑)。
勝手ばかりするから出店管理会社(スマッシュじゃない会社)が面白くなかったのかなと。
─ 厳密な調整が必要なんですね。それでは次の質問ですが、これまで出店をしていて印象に残っているお話はありますか?
Racco:今はいないbloodthirsty butchersの吉村さんが、ラコスバーガーで働きたい!ってしょっちゅう参加してくれていました。きっと出演者としてではなく、出店の手伝いとして関わることが楽しかったんだと思います。
─ すごい話ですね。
Racco:よく働いていましたよ(笑)。仕事として関わると一通り働いてくれました。「吉村さん、6個先に焼いておきましょか?」っていうと「はい!」って言いながら焼いてくれていました。それと、僕らは一週間位苗場に滞在するんですけど、開催期間中にオアシスエリアへ行って飲める時間は、1~2時間ぐらいしかないんです。なので、ライブは、どうしても見たい1アーティストぐらいしか見られない感じです。モーターヘッドが最後に出演していた年はどうしても見たくて行きましたけど。中でも一番の思い出は、ラコスバーガーにレミーが来てくれて一緒に写真を撮ってもらえたことが一番思い出深い話です。
世界的に有名なアーティストがうちの店に普通に並んで順番待ちしてくれていたりするのですが、忙しいので自分の手先を殆ど見ているだけです。アーティスト以外では、現場で働いているスマッシュの人たちのケータリングも担当しています。出演時間の遅いアーティストたちには食べるものがない場合もあるので、僕らが用意したりとかもしています。
─ そのあたりは、スマッシュ側から8年間の信頼の元で依頼があったりするわけですか?
Racco:ある程度、信頼していただいて新しい提案とかもあります。朝から晩まで働いているスマッシュの人たちに対して、食事は楽しみの一つだと思うので、そこの期待こたえられるようにしたいと毎年考えてます。
しかもみんな感想を言ってくれたりして参考になるし勉強になります。
─ そのあたりはメニューの展開も考えてらっしゃるんですか?
Racco:ハンバーガーとして出すことはそんなにないですが、意見は聞いています。裏方で出したメニューの評判を聞いて、表のメニューとして出したりとかはありますよ。
─ ありがとうございます。それでは最後の質問です。フジロックの魅力とは何だと思いますか?
Racco:移動やそれ以上にかかる費用を考えても、お客さんの年齢層も少し高めに感じます。一年に一回有給使ってフジに来て、音楽を聞きながら会場でお酒を飲んでいるのは最高かと思います。勿論フジロックに限っているわけではないですが、やってはいけないことばっかり言っているフェスと違って、モラルやマナーをお客さんにある程度任せているのを運営側から感じていて、お客さんの質も高く、阿吽の関係性が主催者とお客さんで成り立っているなと思います。
僕も仕事終わりに少し遠くから聞こえるレッドマーキーやROOKIE A GO-GOやオアシスエリアのざわめきを肴に厨房の裏で煙草を吸いながら缶ビールを飲む時間が好きです。
そして明日の集合時間とケータリングメニューを決めて会場には行かずに寝床に向かいます。
たまにスマッシュスタッフから「今日の晩飯美味しかった!」とか言われて調子に乗ったりしています。RACCOS BURGERのFUJI ROCKはそういう日々の事です。
─ ありがとうございました。
いかがだっただろうか。Racco氏にとってフジロック開催中の3日間は通常の24時間×3日間より長く忙しく楽しい3日間だと思えた。過酷な条件や環境ではあるが、長年フジロックの裏方としてアーティストやスマッシュ、観客と接してきたRacco氏だからこその経験を聞かせて頂けた。観客はもちろんのこと、働いているスタッフにもそれぞれ異なった思い出があり、フジロックってやっぱりいいな。という時に言葉では形容し難くなる感情は、こういった人たちの気持ちもいつの間にか自分たちの心に入ってきているからなのかもしれない。
写真・インタビュー:Taio Konishi