• フジロック 苗場20th特別インタビュー「フジロックと苗場を繋ぐ人」師田冨士男さん編


    フジロックって、やってて面白いよ

    Photo by Masahiro Saito

    Photo by Masahiro Saito

    ─ よろず屋という意味がよくわかりました。

    冨士男さん:フジロックって、やってて面白いよ。色々な人間と友だちになれるし、深い付き合いにもなるし、色々お願いするから悪いなぁって思うけど、電話一つで物事が動いているから、ありがたいことだなって感謝してる。だって、フジロックがなければそんなことも無いじゃない。フジロックが何なのかって言うと、友だちの付き合いの輪が広がっている。(フジロッカーズ・オルグの)皆さんもそうだけど。会ったら「おーい!」って言えるよね。

    ─ 再会って嬉しいですよね。

    冨士男さん:フジロックで人対人の繋がりができたかな。イギリスのジェイソン(SMASH UK)たちもそうだけど、ジェイソン・グループの人たちとは年に1回しか会わない。だけど、なんか友だちと会ったみたいに接することができるからさ。日高さんにはよく「兄貴みたいに付き合わせてもらっている」って言うんだけど。個人的に日高さんに好き勝手言えるってのはね、上を見ちゃっていると敬わなければいけないけど、兄貴みたいに考えているから屈託のない話も出来るしさせて貰ってる。(日高さんにも周りのスタッフからも)涼しい顔して「(無茶振りなことは)できないです!なんて言えるのも、冨士男さんしかいねえよ!」って言われるんだけどね。甘んじている訳ではないんだけど、こっちで出来ることは最大限にやっているから、好きなことが言えるのかなって思うよ。

    ─ 人と人との繋がりですよね。

    冨士男さん:それこそ、キンタさん(ザ・キンタ社長=金澤龍太氏)や健太(ザ・キンタ専務)を感心して見ているのは、あの人たちはさ、寝る時間も惜しむって言うんじゃないけど、日高さんたちと付き合いが良いよねぇ。俺には絶対できないもん。俺がズルいのかもしれないけど。俺は夜10時になったら、さっさと帰るから。フジロックで付き合っている人は、それをわかっているから、話は早いんですよ、早く帰っても大丈夫なんです。お互いわかっているから。お酒も飲まないからね。

    ─ 冨士男さんはお酒を飲まないんですか?

    冨士男さん:飲まないよ。親父の遺言守ってんだもん。「酒、タバコ、女」はすんなって。

    ─ すみません、僕は全部大好きです。(*インタビュアー=アリモトシンヤ)

    冨士男さん:でも、それも人の花道だから良いんだよ。あとね、フジロックに関して何が良かったかって、特にないんだよね。自分の中で面白い、面白いって言ったら語弊があるけど、楽しんでいるのかな。嫌な部分もあるけどね。フジロックが始まる1週間前くらいが一番嫌だよ。

    ─ トラブルに対する心配事とかですか?

    冨士男さん:なんなんだろうね。「またフジロックが来んのか!」っていうのが毎年あるんだわ。他の人に言うわけじゃ無いんだよ。でも、始まるとあっという間なんだわ。だから(その要因が)なんなのか、自分でもよくわからないんだけどね。困ったことがあると、逆に自分でも喜んでんのかなぁ、トラブルを楽しむみたいな感じかなあ。それは年取ったせいかな…。結局、フジロックに関することは、色々あるけど人との繋がりだから、面白いとしか言いようがねえのかなあ。

    ─ 最初からずっと関わってきて、大変な中で自分なりの楽しみ方がわかってきたのでしょうか。

    冨士男さん:そうなんだと思う。1回目、ほら天神山だったじゃないですか。私は鳴沢村まで行ってきたし。

    ─ 1回目のフジロックに行ったんですか?

    冨士男さん:(第1回目の)フジロックの為に行ったんじゃ無いよ。苗場でやるって決まる前にね。鳴沢村の観光協会に行って、(フジロックってどうなんですか?と)地元の人に話聞いたり。2回目は豊洲だよね。江東区の警察に行って話をしてきたり。逆に考え方が気楽なんです。悪いところをピックアップして、それを直せば何も(悪いことは)ないじゃない。後は町内の話し合いのときに日高さんが「(フジロックを苗場で開催するにあたって)町内の要望は全部やります」って言ったから「じゃあ、もうやれば良いじゃん」って軽い感じで答えた。でもね、最初の2年くらいは朝、地元を巡回したよ。地域で不満を持つ人がいるかもしれないから、できる限りのことをしようって、まあ、物好きだよね。

    苗場食堂 | Photo by 阿部光平

    苗場食堂 | Photo by 阿部光平

    ─ 苗場食堂についてはどうですか?最初は苦労されましたか?

    冨士男さん:酷かったんだよ。1年目は、それこそ(スタッフも)大雑把だったから。例えば、米の話でいうと、米を35俵も頼んでしまったヤツがいたんだから。しかも無洗米、洗っちゃってる米をさ。そのとき、キンタさんが「ふーちゃん(冨士男さんのあだ名)米を見た?」って電話して来て「いや知らねえよ」って。35俵もあるんだから(笑)。でも、そのうち使ったのは10俵もないんだから。終わった後、みんなで売って歩いたよね。

    ─ ・・・。

    冨士男さん:スタッフ同士のトラブルもあったな。手伝いに来た女の子同士で喧嘩になってな「途中で帰ります」って泣き出しちゃったから「帰らずに、なんとか助けてくれねえか?」って言って、俺が連れて来たスタッフじゃないのに、なんで俺が(頼んでるんだ)って思ったけどね。ま、そんなことがあって今があるから、結局面白いよねって。愚痴じゃなくてね。やっぱり(トラブルはあったけど)輪があったから楽しかったのかなぁ。これからも健太だとか輝彦(師田輝彦氏)もそうだけど、面白いって思って苗場を変えていけば良いのかなぁ。

    フジロックは人との繋がりができて、一番大きい存在

    冨士男さん:フジロックってたくさん人も来て、銭にもなるけど、それ以上に色々な人と関わり合いになれることが良いんだよなぁ。こうやって、話を聞きに来てくれている訳じゃないないですか。どこに行っても自分のテリトリーではないけど、「金六さーん!」って挨拶することができる人が増えたってことは、俺なりに格好良いことだと思うんだよ。人の道ってお金じゃないんだよ、人との繋がりなんだよ。友だちって作ったら一生ものじゃないですか。だからねぇ、フジロックは人との繋がりができて、一番大きい存在なのかなって。あとは、今のフジロックの森プロジェクトとか、山菜ロックとかね、そういったことにも繋がっていったから。皆さんの力を借りながら、地域の皆も楽しんでいるのかな。

    ─ 冨士男さんは、前夜祭の盆踊りで太鼓を叩かれていますよね。

    冨士男さん:私の前はミヤジマさんって人が叩いていたんですよ。私は実はまだ経験は浅いんですよ、まだ10年やっていないんじゃないかな。そんなものなんですよ。地域の中で、(ミヤジマさんの次は)誰が叩くんだ?っていう話が来たんですよ。で、「太鼓なんて叩きゃ良いんだよ」って思っていたし。自分でもそうやっていたんだけど、一度若い人に(フジロックの前夜祭で)太鼓を叩けるぞって言ってあげたんですよ。そしたら、日本のお祭りの太鼓ってテンポがスローで、ドンドカドン!って感じではないんですよ。でも、ドラム叩くみたいな調子でやっちゃう。「おい、そうじゃねえんだよ!」って。「いや、だって冨士男さん、叩けっていうから」、「じゃ、上がったんだし好きに叩けば良いよ」って。

    ─ ははは(笑)。

    冨士男さん:最初の頃はね、地域の母ちゃんたちも出てたんですよ。前夜祭の盆踊りに。応援で。今は皆さん出なくなったけど。苗場音頭の太鼓も、苗場の8月のお祭りのときに私じゃない人も叩いているんですよ、でも私とは叩き方が、リズムが違うんですよ。「なんでお前が叩かないんだよ」って人に言われるんだけど、気持ちよく叩いんでいるんだから、叩かせておけば良いじゃないって。ただのリズムだけなんですよ。だから、誰が叩いても良いんですよ。

    前夜祭 | Fuji Rock Festival '17 | Photo by 安江正実

    前夜祭 | Fuji Rock Festival ’17 | Photo by 安江正実

    ─ フジロックでは年々、前夜祭は盛り上がっていて、お客さんいっぱいですよね。

    冨士男さん:本当に感心するんですよ。「今回は雨が降ってるから来ないよな」とか思っているけど、関係ないよね。私は皆さん踊ってることよりも、太鼓の皮が濡れたら困るよなとかそんなことを考えているんだけど(笑)。本当にね、乗せられてやってるんだけど、最後はもう止めようぜって言ってるんだ。太鼓って、私は本職じゃないから、結構力いるんですよ。腕もしびれてくるし、しびれてくると握力が無くなって来て、バチを投げなきゃ良いなってそれだけなんですよ。

    ─ でも、雨が降っていても盆踊りのときって晴れますよね。

    冨士男さん:そうなんだよなあ。今年は雨が降ってるからヤメ!よしよしって言ってると、金六さん、雨止んだよ!って言われてなぁ「嘘だぁ!」とか言いながらやった年もあったね。正直、ぶっつけ本番も良いとこかな(笑)。それでも、できるから良いんだけどね。

    ─ 最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

    冨士男さん:私ね、いつも同じことしか言わないんだけど、音楽を楽しみながら、この地域の、何もないんだけどね、自然を楽しんでくれ!って伝えたいね。川でもそうだし、山の中を歩くこともだけど、そして寒さも踏まえてね。寒いねって感じたりすることも含めて楽しんでもらいたいなって思います。音楽は我々がやるわけじゃないから、アーティストがやることだから、音楽を楽しんでくれ!なんて言うのは100年200年早い!って思うよね。苗場に来たんだから、苗場を楽しんでくれって話なんですよ。地元の人達が何を提供できるかって、地元の人たちが言葉で伝えるってことが本当はあったら良いけど、実際はなかなかなくて。だから、苗場に来たら苗場の人たちとも触れ合って欲しいって言うのがお願いかなぁ。フェスティバルってお祭りじゃないですか?自分の故郷に帰るのと一緒で、私は爺なんです、困ったことがあったらなんか言ってくれよ、と。皆さんも来て頂けたら「お〜い金六さんっ!」て声かけてくれないかって、それが親しみの始まりで、楽しみの始まりなんだ。故郷に帰って来る感じで来てもらえれば一番良いかなぁ。

    ─ そして、人との繋がりが始まるんですね。

    冨士男さん:誰とでも図々しい顔して付き合ってんだけど。

    朝霧JAMにて | Photo by アリモトシンヤ

    朝霧JAMにて | Photo by アリモトシンヤ

    ─ そこが冨士男さんの良いところであって。朝霧JAMのときも女の子に日本酒を「飲め!飲め!」って注いでましたよね。

    冨士男さん:俺は損とか得とか考えないんだよ。苗場食堂でも、もち豚とかでもやるんだけど、持っていって食べなよって。今は、キュウリが駄目になってしまった(出せなくなった)けど、駄目になる前は1日キュウリを100キロくらい配っていたの。米袋10袋くらい。農家に頼んで、売れない規格外のキュウリを。これも付き合いのあるからこその「あ・うんの呼吸」で。買うのではなくて集めてもらってね。もちろん終わった後は、ありがとうってお礼もするけどさ。だから、フジロックでいくら儲けてって計算していないんですよ。最後に終わってから支払いをして、まあ何もないよりは良かったかな、ってくらいで。商売って感じでやっていないのが良いのかもしれない。朝霧JAMの話もそうだけど、飲ませて注いで、また注いでって平気な顔してやるんだけどね(笑)。

    ─ いつもたくさん飲ませて頂いて…なんかすみません。

    冨士男さん:でも、それが顔見ようかなって来てくれた人への感謝の気持ちだよね。お酒飲みながら、ほろ酔い加減でほらもう一杯飲んでいけって感じになるんだよね。こんなんで良いかな?ほら、もしだったら風呂に入っていきなよ、温まるから。(インタビューは雪ささの湯で行いました)

    ─ 気持ちは本当にありがたいのですが、これから宿に戻らなくてはいけないので…。

    冨士男さん:だったら後で日本酒を持って遊びに行くからよ。

    ─ 嬉しいです。本日はお忙しい中、ありがとうございました!


    今だから話せるフジロックで起こった数々のエピソード。そしてフジロック愛。「とにかく苗場を楽しんで欲しい」と語る冨士男さんの真っ直ぐな気持ちを皆さんも感じることができたのではないでしょうか?フジロックと苗場、そしてフジロッカーを繋ぐ架け橋とも言える存在の冨士男さん。今年のフジロックの前夜祭でも、冨士男さんによる苗場音頭の太鼓が、オアシスに気持ちよく響き渡ることでしょう。前夜祭行きを迷ってる方は、是非冨士男さんの太鼓を聞きに、足を運んでみて下さい!

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