みなさんお待ちかね、大将インタビュー ~ アーティスト編 ~
- 2012/06/11 ● Interview
たいへん長らくお待たせしました。まだかまだかと待ち焦がれた日高大将のインタビューです。ステージ割が発表された6月7日、フジロッカーズのみなさんが知りたいこと、たっぷり聞いてきましたよ。前編はアーティストの話題、ヘッドライナーやブッキングについてお送りいたします。
― 今回のインタビューのお願いを3月くらいにしていましたが、その時「もうちょっと待って」とのご返事でした。それがこの時期になってしまったのは何故だったんでしょうか。
中途半端な形で話をするより、こういう具合に作ろうって話になってから、オルグとの話し合いをしたほうがいいと思って。今年は新しく場所を入れ替えたりするからね、そのイメージを確認に行った。(例年は)5月の連休終わりに溶けるんだけど、雪が多かったんだよね。うちのスタッフはステージの配置だとかを測量しに行って、だいたい6月に入って(スタッフから)返事が出たから俺も行って見てきてね。
異例の発表の裏舞台
― ありがとうございます。まず、例年は年明けだったフジロックの開催発表が、今年は2011年11月という異例の時期になりました。どのような経緯でこうなったんでしょう。
これは、THE STONE ROSESとRADIOHEAD だよね。去年、みんな(お客さん)がARCTIC MONKEYSを観ている時にグリーン・ステージの裏側で、THE STONE ROSESとRADIOHEADがほとんど決まりかかったんだ。RADIOHEADはワールドツアーがあるから。彼らは「韓国で(ライブを)やってあと東南アジア、たしかシンガポールとかやって日本に来たい」っていうことだったから、とりあえず日曜日のヘッドライナーってことで。
― 去年のフジロックで今年のヘッドライナーが決まっていたんですね。THE STONE ROSESもなんでしょうか。
その前からチラッと聞いていたんだけど、THE STONE ROSESが再結成するらしいっていうのがあったからね。まぁ、同じマネージメントだったから。俺たちとTHE STONE ROSESの関係って非常に長くって、イアンとかマニと酒飲み仲間で、非常に仲がいいんだよ。いつか再結成すると思っていた。その時は絶対、フジロックじゃなくてもスマッシュとしてはやりたいなっていうのが俺の心の中にあったから。じゃ、絶対やろうよってことで。
― THE STONE ROSESが再結成の発表をした時、彼らをフジロックで観ることは誰もが夢見ていたと思います。
そうなると、特にTHE STONE ROSESは再結成じゃない。だから、「(ツアー日程を)発表させてくれ」と強い要望だったんだよ。再結成するって言ったのは8月の終わりから9月の頭ぐらいで、その時に「もうツアーの予定を全部入れたい」と。でも、うちのやり方があるから勘弁してくれって、最初は反対したんだよね。3月1日までフジロックだけは待ってくれって。それがダメなら、1月1日の発表の日(例年、フジロックの開催が告知される日)はどうだと。でも、どうしても「一斉に発表したい」と。
マネージメントとしては、俺もわかるんだよ。で、どうしようかな、うーん、今までそういうことやってきてないからなって悩んだんだけどね。そこから先は俺のいいかげんなとこで、ま、いっかと。いつまでもおんなじ考え方を持っていても、しょうがないよなと。
― あの早い発表の裏には、そんなやり取りがあったんですね。
そういうのがあったから、(フジロックの開催発表とTHE STONE ROSESの発表を)一斉にってことで。で、それを聞いたRADIOHEADも、「じゃ、俺たちもやらしてくれ」って早めの発表になって。もう、1組(出演発表を)やればみんな同じだから(笑)。アーティスト側の要請があって、そうしたってことだよ。
ギャラガー兄弟、苗場に帰還
― 他のラインナップに関しても、世界で初めてOASISのメンバーだった、リアムとノエルのバンドが出演することになりました。
もともと、2人とも出たいっていうのはあったんだよ。あと、もう1個のポイントはTHE STONE ROSESだよね。THE STONE ROSESが憧れでバンドを組んだつうのがあるし、彼らのもう大好きなバンドじゃない。それがあったからBEADY EYEがやりたい。ノエルもやりたいって。願わくならば、同じ日にTHE STONE ROSESの前でやりたいつうのがあったんだよね。
で、あんまり仲良くないから、同じ日に並べたらどうなるかよくわからないからね。だから、BEADY EYEがその前ということで。それでノエルはこの前、武道館でやったばっかりなんだけれども、今年の頭ぐらいに東京ドームシティホールでやったじゃない。その時に土曜日のヘッドライナーでいこうかって話をしたんだよね。まぁ、それがあってOASISの2人のメインのメンバーが金曜と土曜に分かれて、どっちもOASIS曲を歌うっていう。
今年1番の苦労
― 土曜日のヘッドライナーがNOEL GALLAGHER’S HIGH FLYING BIRDSになりましたが、この日のグリーンは今までのアーティストの並べ方と違っている感じがします。ヘッドライナー前のTHE SPECIALSはホワイトのヘッドライナーだろうと思っていました。
異色って言ったら異色だけど、そういうのは楽しんで欲しいよね。今年、1番苦労っていうか、おいおいおいっていうのがあったのはグリーンの最後から2番手だよね。
世界のフェスティバルの約束ごとっていうのがあって、最後に出るヘッドライナーっていうのはかなりの権限を持っているわけ。サウンドはこういうものを使いたい。それから、自分の前に出るアーティストは自分らの許可とまでは言わないけれども、一種の許可(を要求する)。
― 一種の許可…確認みたいなものですかね。
だから、ブッキングをするときの楽しみでもあるわけだよ。ヘッドライナーの前にこいつらを入れれば、あいつらも喜ぶだろうな、お客さんも楽しみじゃないかとか。
今年に限ってはね、3つのバンドともそんなにきつくは言わなかったんだけど、「許可を頂戴」と。いつもだったら、(バンドの候補を)1つずつ出すわけだよ。最後から2番手のバンドを1つ出すのが大変なんだよ。それを今年はヘッドライナーから「2つか3つ出してくれ」って言われてさ、まいったなって。(2番手のバンドと)交渉してから名前を出すわけではないんだから。
まず、ヘッドライナーにどうだろうこの人たちはって聞いて、「この人たちがいいね」ってなったら交渉する。それでまとまればいいけど、まとまらないケースもあるわけだから。言っている意味わかるかな?
こっちは(出演が決まるかもわからない)バンドの名前を出していくだけだから。で、選ぶのが大変だし、それを「2つ出せ」とか言われると本当困るよね。駆け出しのバンドだったらいいけど、ある程度売れているバンドだからね。だから、はっきり言って今年の2番手のバンドは金曜から日曜までみんなヘッドライナーが選んだ。
― そうなんですか!?
BEADY EYEはどうだろうって(THE STONE ROSESに)聞いて、「いいよ」ってことで。
土曜日もそうだよね、THE SPECIALSの他にあと2つ位いて。ノエルはレイ・デイヴィスが大好きなんだよ。尊敬する人だからさ。たまたま俺も付き合いが長いから、レイ・デイヴィスと食事したりお酒飲んだりする仲で。レイからも今年は出たいと。前、1回出ているから。じゃ、出てもらおうっていうことでパッと頭に浮かんだのがね、ノエル喜ぶだろうな、2番手に絶対選ぶだろうなと。そしたら(ノエルが)「レイとは何回もやっているけど、THE SPECIALSとやったことがないから、THE SPECIALSでやりたいな」と。もちろんレイにも出てもらうよ。だから、3番手に回って貰ったんだけど。
日曜日もRADIOHEADに聞いて、ELVIS COSTELLO AND THE IMPOSTERS。エルヴィスとは去年、日本に来た時にそろそろフジロックに出ないかいって話をしながら食事したんだよ。「是非、喜んで」みたいなことだったから、ELVIS COSTELLO AND THE IMPOSTERSと他のアーティストを出したんだけど、(RADIOHEADが)「エルヴィスとやりたい」みたいな感じだった。
で、日曜の場合はどうしてもアメリカが欲しかったんだよ、異色が。ヘッドライナーがUKバンド、全部ブリティッシュじゃん。俺は日曜日にJACK WHITEが決まったから、かなりホッとしたよね。それと、AT THE DRIVE-INが動くって聞いて、絶対にホワイトのヘッドライナーに欲しいと思っていたから。裏側でUSないとなっていうのはあったし、まぁ、向こうも出たいっていうのはあって、是非ってことで。
今後の発表&大将おすすめアーティスト
― 今のところ、日曜日にクロージング・アクトがないんですが、これから発表があるんですか。
今年はないね。どれだけ考えても思いつかん。悩みのもう1個だったよね。でも、6月の頭でギブアップした。いつも何か浮かぶんだよ。ピーンときて、これだ!と。無責任に聞こえるかもしれないけどさ、もう間に合わないしね。書類手続き上、6月20日前後までには決めとかないとさ。ま、それもあったけど、とにかくこんな時はなかったね。全然浮かばなかった。
― では、RADIOHEADが長時間やるんですか。
彼らが演奏するんだから、それは彼らが決める。
― ステージ割が発表されて、オールナイトフジの文字が見当たらなかったのですが…
あれはいつもギリギリじゃん。6月の半ばか終わりか。それまで、お楽しみっていうかさ。あと、アヴァロンも、もうちょい経ってからの発表となるよね。
― これから、苗場食堂のアーティストも発表されていきますよね。
今年の苗場食堂にはセッションというか、苗場音楽突撃隊っていう元ザ・ルースターズの連中と話して、1日によければ1バンドかな。来たメンバーにセッションで、たぶんやってもらえるんじゃないかなと思う。結構、選曲とか俺がやったりしているんだけどね。もし、それをやったらみんな大笑いすると思うよ。是非、苗場音楽突撃隊の時は観に来るといいよね。
去年は来られなかったけど、苗場食堂にBUDDY GUYを予定していたんだよ。今年はやっぱし、本チャンに専念して欲しいから。去年キャンセルした時に彼の方から「来年は必ず大丈夫だから」と。絶対聴いたほうがいいよね、BUDDY GUY。最後に残ったブルースの巨人だから。
― 他におすすめアーティストはありますか。
そんなもんは言えない。ただ1個だけグリーン・ステージでは、俺の趣旨、考え方があって。いつもロック、ロック、ロック、ってきていたから、土曜日にSEUN KUTI & EGYPT 80だとかTOOTS AND THE MAYTALS。特にSEUN KUTI & EGYPT 80なんて、本当は3時間位ライブをやったほうがいいんだよね。だんだん、グルーヴが出てくるんだよ。で、いつもやっと火がついたと思った頃には終わらなきゃいけないっていうのがあるから。昼っていうか、午後から早い夕方にかけて、ナイジェリアのSEUN KUTI & EGYPT 80のグルーヴを。そして、60年代のジャマイカの伝説的なバンドではあるけれどもTOOTS AND THE MAYTALSね。もちろんスカやレゲエであったり、ジャマイカのルーツ音楽であるんだけれども、60年代のポップスが流れてきているんだよ。だから、60年代のすごく懐かしいアメリカンポップというかソウルの曲っていうのかな。是非、観てもらいたいなっていうのはあるからね。要するに、紹介したいっていうのかな。もちろん、他のステージでも出るんだけれども。ま、そういう2つのグループを今まで無かったような組み合わせで、土曜日の昼はいきたいなっていうのはあるよね。
以上で前編のアーティスト編は終了です。
インタビュー中はもちろんですが、アーティストについて何でも知っている大将の頭の中がどうなっているのか不思議でなりません。大将のアーティストに対して真摯に向き合う姿勢が世界に誇れるフジロックのラインナップを生み出すのだと感じました。
みなさんが気になる会場のことについても、去年とは違う新しい試みがあるようです。
なんでも、ムーンキャラバンの場所が変わるそうで、そのことについても大将が話をしてくださっています。詳しくは後編をお待ちください。
アーティスト表記は全てフジロック公式サイトを参照しております。
写真 藤井大輔
文 小川泰明