「台風を乗り越え、12回目の開催に向けた挑戦~トヨタロックフェスティバル
- 2018/03/13 ● Interview
愛知県豊田市で開催される「トヨタロックフェスティバル(トヨロック)が、存続の危機に立たされている。
そもそもこのフェス、入場は原則無料。無料と言っても、これまでの出演者は初回から出演し続けているTURTLE ISLANDのほか、サニーデイ・サービスや、渋さ知らズオーケストラ、eastern youth、KING BROTHERS、DACHAMBO、海外からはRICO RODRIGUEZも出演している豪華ぶり。それが無料で見られてしまうのである。会場内には音楽だけでなくFMX(フリースタイル・モトクロス)バイクショーや子供から大人まで楽しめるようなブースが多数あり、会場の豊田スタジアム周辺一帯は幅広い層の来場者で賑わっている。
昨年、2日開催の予定だったが、超大型台風21号の直撃を受け、開催前に2日目の中止を決定。出店料やキャンプチケットの払い戻しなどを行い、大きな赤字を抱えたまま、12回目の開催に向けて動き出している。
その現状と、トヨロックについて、主催者である矢澤英介氏に伺った。
─ 今年で12年目となりますが、トヨロックが始まったきっかけを教えてください。
矢澤氏:トヨロックは2007年から始まりましたが、主催は1992年に豊田市、トヨタ自動車株式会社、豊田まちづくり株式会社などを中心に多くの協賛企業の協力を受け、豊田で働く若者の楽しめる場所の創出を目的に発足した「ジョイカルウェイブ」という団体です。
ジョイカルウェイブ発足当時はバンドブームの中、アマチュアバンドバトルやTV局とタイアップした音楽イベント等をやっていました。2004年に自分がジョイカルウェイブ事務局をしている豊田まちづくり株式会社で働きだした頃は、活動自体は下火になっていて、協賛企業が抜けたり、減額が続き、予算規模も縮小しているころでした。
事務局として、数年間はそれまでの人の繋がりを広げていろいろなイベントを企画運営してきました。そして、2006年に豊田市がジョイカルウェイブから抜けることになったのを機に、組織を再編し、限られた予算の中で、それまでに繋がった仲間たちとより自由に面白いことをやっていこうと、2007年にトヨタロックフェスティバル(通称トヨロック)がスタートしました。
主催はジョイカルウェイブになりますが、トヨロックを創って運営しているのは、普段は別の仕事をしながら、トヨロックに集った地元の音楽好きやお祭り好きの有志によるトヨロッククルーが運営しています。フェスとしては少し特殊な成り立ちですが、変化しながら今に至っています。
─ 音楽だけでなく、たくさんの人が楽しめるお祭り的な文化を感じますが、意識している点はありますか?
世代やジャンルなど関係なく、「人と人が繋がる楽しい場所をつくりたい」という思いでやってきて、自然とそうゆう積み重ねがカタチになってきたんだと思います。
豊田市には「橋の下世界音楽祭」(※)っていう所謂、音楽フェスティバルとは異なる「祭り」があります。TURTLE ISLANDの永山愛樹を中心に、フェスとはまた違う、何歩も先に進んだ「祭り」を有志で創ってます。成り立ちや、やり方は違いますが、トヨロックも地元の有志たちが垣根なく集える場所を手作りで創ってきました。トヨロックと橋の下(※)は関わっているスタッフとかも結構被ってるし、お互い協力し合いながらやってきてます。
(※)橋の下世界音楽祭…TURTLE ISLANDが主催する、河川敷で行われるフリーフェス。商業的なフェスとは一線を画す、国内では類を見ない独立した空間を持つフェスティバル。
─ 毎年、入場料無料で実施していますが、なぜ無料で実施できるのでしょうか?
矢澤氏:元々ジョイカルウェイブのイベントは、主催団体の負担金でアマチュアバンドバトルやTV局と連携して、LOVE ROCKS、GOGO ROCKなどといった野外ライブイベントを入場無料でやってきていました。
その流れもあり、トヨロック立上げ当初は、その当時から比べると格段に少ない事業費の中でしたが、ジョイカルウェイブの負担金のみで開催をしていました。
しかし、2年目、3年目と事業費の更なる減額が続く中で、自分たちの繋がりからトヨロックに対しての協賛を集めていきました。仲間や先輩のお店、繋がりのある会社などからトヨロックに直接応援をしてもらえるよう協賛をお願いして回ったり。仲間たちで何度もミーティングを重ね、出店料、駐車場などから、イベント収入を作ったり、回を重ねるごとに、より面白いものになるようにと、試行錯誤しながらトヨロックを創ってきました。有料でやる方法もあったと思いますが、最高のフリーフェスを作っていきたいっていう仲間たちの心意気がやっぱり一番でかいと思います。
なるべく敷居を低くして、音楽好きな人たちだけじゃなく、地元の小中高生やおじいちゃんおばあちゃんにも気軽に遊びに来られる場所にしたかったですからね。
─ 地元と連携したり、協働で動くなど、工夫されていることはありますか?
矢澤氏:豊田市駅前から会場の豊田スタジアムまで、徒歩で10~15分位の距離なんですが、せっかくたくさんの人が豊田に来るので、「会場までの動線や、まちなかでもいろいろ出来ればなぁ」と常々思っていましたが、なかなかやれてなかったんです。そもそもトヨロック会場だけで手一杯で。ですが、昨年はまちなかのお店が、合同で自主的にイベントを開催してくれました。
自分たちだけじゃやりきれないところを、トヨロックをキッカケにそれぞれで考えて楽しいことを膨らませてくれているのがうれしかったです。
時間はかかりますが、そうゆうふうに、あまりこっちから仕掛けなくても、思い立った人たちが増え、自然に拡がっていくのがいいなと思っています。
─ これまで出演したアーティストはどういった経緯でブッキングしているのですか?
矢澤氏:トヨロックには現在5つの音楽ステージがあります。
出演アーティストは、それぞれのステージを担当しているクルーを中心にした、ご縁や繋がりから出演してもらってます。全国のフェスでも常連のアーティストや海外のアーティストも出演してくれていますが、地元豊田はもちろん、東海地方で活躍する地場のアーティストにも必ず出演してもらうように構成してます。
トヨロックをやり始めたころは、やっぱり地元にTURTLE ISLANDってすごいバンドがいて、もっとたくさんの人に観てもらいたいって思いがありました。初めてタートルのライブ観たときの衝撃を、音楽好きな人だけじゃなくて、もっといろんな人に聴いてもらいたいって思ったし。去年は雨で流れてしまった2日目に出演予定だったんですが、トヨロックの前身の「JOYRIDE MUSIC FESTIVAL 2006」に初めて出演してもらってから、欠かさず出演してもらっています。
2日間開催にしてからは、毎年50組以上のジャンルレスなアーティストが出演してくれていますが、限られた費用の中で、どのステージも最大限素晴らしいアーティストに毎年出演してもらえるよう動いてます。
いろんな音楽に溢れていることで、参加者のみんながそれぞれ新しい音楽との出会いや発見につながっていけば良いなと思います。
トヨロックは音楽ステージ以外にも、いろいろなコンテンツが盛りだくさんですが、2013年からは、世界で活躍するDAICEなどFMXプロライダー達のアクロバティックなFMXバイクショーが観られる「FMX AIR JACK」も始まりました。
─ 昨年、2日目の中止を決定した経緯を教えてください。
矢澤氏:昨年の10月は雨や台風が多い年で、天気予報とにらめっこしながら準備を進めていましたが、開催予定の日曜日に、ちょうど豊田市を直撃するコースになってしまいました。やむなく金曜の夕方判断で日曜日の開催とキャンプサイトの中止を決定しました。
中止決定後は、土曜開催の準備を進めながら、台風に備えた撤収も進めていくハードな状況でしたが、スタッフも参加者も事故や怪我などなく無事に終われて良かったです。
─ 中止後の対応について、周りの反響はどうでしたか。
矢澤氏:ギリギリのタイミングでの中止のアナウンスでしたが、出店者の皆さんやキャンプサイト参加者さんなど、急な変更対応にも本当に皆さん協力的でありがたかったです。関係者も含めみんな本当にやりたかったし、悔しい気持ちで一杯でしたが、よくぞ中止決定してくれたとの声ばかりでした。
その後は、残った大きな負債と支払い、キャンプサイトの前売りチケットや出店料の払い戻しなど、いろんな対応も大変でしたが、今回の件で本当に多くの人に愛されているトヨロックなんだなぁと改めて実感しました。
返金対応の際に、出店者さん、キャンプサイトの前売りチケットや駐車券購入の皆さんに払い戻し金から寄付のお願いもアナウンスさせてもらったんですが、本当に多くの方にご支援と応援メッセージをいただきました。また、トヨロックのピンチにいち早く募金箱を設置してくれるお店やライブハウス、地道な募金活動をしてくれるイベント主催者さんなど、それぞれが出来る支援活動を自主的にはじめてくれています。
そして、毎年お互いサポートしあっている静岡の頂-ITADAKI-のチームは、同じ日の台風で大きな被害を受けた「あわのね」主催者が関わる白浜フラワーパークとトヨロックをサポートする企画「FRIENDS SAVE FRIENDS」を立上げて応援してくれてます。本当に感謝しかないです。
─ 今年の開催に向けた取り組みについて教えてください。
矢澤氏:去年10月の開催からだいぶ間が空いてしまいましたが、3月1日からCAMPFIREでクラウドファンディングをスタートしました。去年の中止に伴う800万円ほどの赤字の補填、そして次は興行中止保険に入らないといけないので、いろいろ踏まえて1,000万円という大きな金額で設定しています。
トヨロックはよく潤沢な予算があると思われがちなんですが、今回の件を機に、より多くの人にトヨロックのことを理解していただき、12年目のトヨロックに向けてクラウドファンディングを成功できるように応援してもらえたら嬉しいです。
そして3月17日(土)には、トヨロックをここまで一緒に創ってきてくれたTURTLE ISLANDとmicroActionと共に、「SAVEトヨロックGIG!!!」と銘打って、廃校になった旧豊田東高校武道場「豊田武道館」を会場に高校生以下は入場無料でチャリティライブを開催します。トヨロックに縁の深いアーティストばかりが出演してくれます。市内会場のため、終了時間は早めですが、トヨロックが凝縮した一日になればと思います。
また、豊田以外でも近隣の街の仲間たちが、SAVEトヨロックのチャリティライブや企画などを考えてくれてます。いろんな取り組みを皆さんに応援してもらいながら、12年目のトヨロックに向けて進んでいきたいと思います。
─ 最後に一言お願いします。
矢澤氏:今回の台風直撃、開催中止の影響で大変な状況になってはいますが、より多くの人にトヨロックの事を理解し、応援してもらえる貴重な機会だと思っています。今回の件を恵みの雨だったと思って、ピンチをチャンスに変えていき、トヨロックが本当の意味でのフリーフェスティバルになっていければいいなと思います。
いろんなカタチがあると思いますが、それぞれのカタチで皆さまの応援をどうぞ宜しくお願いいたします。
─ ありがとうございました。
(完)
フェスが乱立する中、多くの人の協力のもとでここまで続いてきたトヨロック。他のフェスとは少し違う、地域のお祭り的なフェスであり、ぜひリベンジして欲しいと思っています。少しでも興味をもっていただけたら、12年目に挑戦するトヨロックを応援しましょう!
文:古川喜隆
写真:トヨタロックフェスティバル提供
INFO
TOYOTA ROCK FESTIVAL HP -SAVEトヨロック-
https://toyotarockfestival.com/savetoyorock
https://twitter.com/TOYOTAROCKFES
ジョイカルウェイブHP
https://joyculwave.jp/
SAVEトヨロック CAMPFIREクラウドファンディング
https://camp-fire.jp/projects/status/57904
頂-ITADAKI- トヨロックサポート企画「FRIENDS SAVE FRIENDS」
http://fsf.itadaki-bbb.com/
「SAVEトヨロックGIG!!!」
日時 2018年3月17日(土)
10:00-18:00(開場 10:00 / 開演 11:00)
会場 豊田武道館(旧豊田東高校武道場)
〒471-0034 愛知県豊田市小坂本町5-80
入場 前売り 3,000円/当日 3,500円 ※高校生以下は入場無料
出演 タートルアイランド / かむあそうトライブス / T字路s / ヤスオイル ザ ウェルカーズ / GIANT STEPS & イーリャムーリャ / 刃頭 / キムモリソン / nutsman
MCウクレレ未知 / 宴師大地