• 小沢健二とコーネリアスがいたフリッパーズ・ギターとは?いろんなものに例えてみた


    Ozawa_Kenji-Cornelius

     今年のフジロックで、一番ざわつかせた話題といえば、小沢健二とコーネリアス(小山田圭吾)の出演だろう。同じ日にでる、同じ時間帯にでる(結局、出演時間はズレるけど両方を完全に観るのは厳しそう)とずっと話題の中心になっている。その2人のいたバンドがフリッパーズ・ギターで、解散して約26年経つ。若い人にとってこの騒ぎっぷりがわからないでしょう。

     しかも、「うわっフリッパーズ・ギター再結成?」という反応を見透かしたように小沢健二は「あ、フリッパーズ再結成とかそういう暇は全くありませんので、よろしくお願いします」と書けば、小山田圭吾が「えっそうなの(笑)? あははは! じゃあ(再結成は)ないんですよ、きっと(笑)」と応え、さらに「20年くらい会ってない」と語る。まあ、ないのでしょうけどファンは熱狂している、と。

     そこでorgスタッフがフリッパーズ・ギターをいろんなものに例えてみた。その前にフリッパーズ・ギターがどんなにすごかったのかを説明したい。

    1.シーンを切り開いた功績

     バンドブームの最中にネオ・アコースティックをはじめとする洋楽テイストを導入して、のちの渋谷系と称されるムーブメントの先駆けとなった。センスのいい、オシャレなものとしての音楽は多大な影響力があった。

    2.人気絶頂で解散

    「恋とマシンガン」がドラマの主題歌として使われ、お茶の間レベルでの人気者になっていく。しかし、3rdアルバムを発表後に突如として解散を発表する。解散の理由は今までたくさん議論されているけど、本人の口からもはっきりしたものは語られてない。

    3.解散後2人の偉大な歩み

     そしてここから現在にいたる26年間がすごい。小沢健二も小山田圭吾も解散後、ほどなくしてソロ活動を始める。小沢健二は2nd『LIFE』で90年代の金字塔を打ち立てメディアにも積極的に取り上げられる。紅白歌合戦にも2年連続ででた。しかし、だんだん佳作になり、メディア露出も少なくなった。そして2000年代半ばには音楽活動もみられなくなった。2010年に音楽活動を再開して、4年後テレビにも16年ぶりに登場。その2014年3月の『笑っていいとも!』にでたときのSNSにおいての騒ぎはすごかった。

     小沢健二は「人気のタンス預金」がすごいのだと思った。フリッパーズ時代から『LIFE』までに多くのファンを獲得して、活動休止期のおかげか露出過多で飽きられることもなく、駄作を連発してがっかりさせることもなかった。さらに取って代わるようなアーティストがでてこなかったので、ファンの人たちはタンスに預金を隠しておくように潜伏していたのだ。それがテレビ出演解禁からフジロック出演までの約3年間に次々と世の中に出回るようになってきたのだ。もちろんインフレになればタンス預金は実質目減りするので、16年の間に多少は減っただろうけど、もともとの預金額が多かったということだ。おそらくフジロックでそれが可視化されることでしょう。

     一方、コーネリアスこと小山田圭吾の歩みを振り返ると、アルバムとしては2nd『69/96』、3rd『FANTASMA』、4th『POINT』の傑作群を発表し、2002年にはフジロックに出演。コーネリアスとしてはアルバムの発表ペースは落ちても、例えば2011年にYMOのサポートとしてフジロックにでたし、豪華なメンバーが集結したMETAFIVEの一員としての活動は記憶に新しいところ。

    YMO 2011レポート

     海外からの評価も高く、様々なアーティストからリミックス依頼があったり、海外で数度のツアーやフェス出演も積極的におこなっている。小山田圭吾は「サウンドの人」だった。、1stアルバム『ファースト・クエスチョン・アワード』ではフリッパーズ・ギター解散にまつわる話を暗示させたり、歌詞も饒舌だったけれども、だんだん歌詞がシンプルになっていき、言葉はそぎ落とされていった。最新作『Mellow Waves』では坂本慎太郎に歌詞を提供されていたりもする。この歩みが言葉を失っていく過程にもみえる。小沢健二が音楽活動を止めているときでも社会問題にはむしろ雄弁になっていたのと対照的だ。

     さて、それらを踏まえて、2人を何に例えるか。もう一度整理すると

    1.シーンを切り開いた功績
    2.人気絶頂で解散
    3.解散後2人が成功(そして仲がよくない)

    です。まず洋楽編いってみよう。

    洋楽編

    ビートルズのジョン・レノンとポール・マッカートニー」。いきなり大物登場。さすがにビートルズとフリッパーズ・ギターでは影響力に違いがありすぎるとは思うけど、社会問題への発言や休止期間が長かったということを考えるとジョン・レノンと小沢健二が被ることもなくはない。

     時代が下って「ザ・スミスのモリッシーとジョニー・マー」。これも「言葉の人」であるモリッシーと小沢健二、「ギタリスト」ジョニー・マーと小山田圭吾が重なる。解散後、両方とも成功を収め、ジョニー・マーは何度かフジロックにもでている。もし、同じ日にモリッシーがグリーンステージに、ジョニー・マーがホワイトステージにでたらスミスファンは悶絶することでしょう。

    ジョニー・マー 2015レポート

     まあ、こういう意見もありました「ニュー・オーダーのバーナード・サムナーとピーター・フック」。ニュー・オーダーは解散してないけど、ピーター・フックは脱退。現在進行形で不仲なんで。

    ニュー・オーダー 2005レポート

     最近だと「オアシスのノエル・ギャラガーとリアム・ギャラガー」という例えが一番しっくりくるかも。ただし「人気絶頂で解散」となれば『ビー・ヒア・ナウ』あたりで解散して20年以上経ったという感じだろうか。

    オアシス 2009レポート

    アイドル/お笑い編

     アイドルというかジャニーズだけど複数挙がった。フリッパーズ・ギターの2人もお坊ちゃんの雰囲気を漂わせながら(実際お坊ちゃんだけど)、オシャレで当時のサブカル女子には人気があった。解散後、どちらもCMにも出演していたくらい。要するにアイドルでもあった。


     KinKi Kids、タッキー&翼、修二と彰が挙がったけど、この辺は「時代を切り開いた」という点でちょっとインパクト弱いかな(ファンの人すいません)。もし2000年あたりでKinKi Kidsが解散して、以降ソロでそれぞれ成功なら近いかも。だけど、やっぱりジャニーズで例えるなら「SMAP解散後20年過ぎて木村拓哉がグリーン、中居正広がホワイト」というのがニュアンスが伝わるだろうか。まあ、中居君がホワイトステージで何をやるのか、というツッコミはなしで。

     そしてお笑いに例えるのもアリでは? ということで、「現在のではなく1995年ころのダウンタウンが解散して、松本人志も浜田雅功もピンで成功したけど20年間共演NG」あたりがよい例ではないだろうか。あと、不遇なときもあるのでどの時点かは微妙だけど、オリエンタルラジオの中田敦彦と藤森慎吾が「PERFECT HUMAN」をヒットさせた直後に解散というのもどうだろうか。

    邦楽編

     やはり邦楽のバンドやユニットの例えが多く挙がった。まずは「ブルーハーツの甲本ヒロトと真島昌利」でその後のハイロウズやクロマニヨンズが存在しなかった「If」の世界ならこうなったかもしれない。それから時代をさかのぼるけど「BOOWY(ボウイ)の氷室京介と布袋寅泰」がある。先述の3条件を満たしているけど(影響力や人気は上回るかも)、欲をいえば「最後の東京ドーム公演がなかったBOOWY」といえるだろう。

    クロマニヨンズ 2016レポート

    布袋寅泰が飛び入りしたロキシー・ミュージック 2010レポート

     また「B’zの松本孝弘と稲葉浩志」も挙がった。もし2001年くらいに解散したらこういう空気になったかもしれない。フリッパーズ・ギターが好きな人はB’zを好きじゃないだろうし、フジロックには合わなさそうだけど。この説の違和感を考えてみると、フリッパーズ・ギターの場合、バンドがセールス的に安定した状態になることなく解散したということも大きい。10作連続1位とか、恒例となった年に1回の全国ツアーがすぐ売り切れるとか、毎年夏に西武ドームとかそういうことがなかった。つまりフリッパーズ・ギターは数字に残るレジェンドではなく、記憶に残るレジェンドだったのだ。いってみればヴェルヴェット・アンダーグラウンド型のレジェンドといえる。

     フジロックに寄せるなら「電気グルーヴの石野卓球とピエール瀧」『A』をだしたころ解散して卓球はDJや作曲家として成功、瀧は俳優として成功……って解散してないだけで今とあまり変わらないか。現在進行形なら「スーパー・バター・ドッグの永積タカシ(ハナレグミ)と池田貴史(レキシ)」とか「サケロックの星野源と浜野謙太(在日ファンク)」。どちらも仲は悪そうではないけど。あともう少しするとスーパー・バター・ドッグやサケロックのことを知らない世代が多くを占めるだろう。

    電気グルーヴ 2016レポート

    ハナレグミ 2015レポート

    サケロック 2011レポート

    在日ファンク 2016レポート
    星野源 2015レポート

     それからフリッパーズ・ギターの2人がフジロックにでるということから、割と多くの人が連想したのは「ハイ・スタンダードの横山健と難波章浩」2000年のエアジャム以降活動を停止して、それぞれがソロを活発におこなって、再び恒岡章を含む3人が集まることはないのかも……と思っていた矢先、2010年のフジロックで横山と難波がそれぞれに「Stay Gold」を演奏したことから「もしかして?」という空気が流れて2011年エアジャムでの復活につながった。

    難波章浩 2010レポート
    横山健 2010レポート
      

     以上いろいろ例えてみたものの、当然ながらピッタリしたものはなく「フリッパーズ・ギターはフリッパーズ・ギターでしかない。何かに例えるなんてふざけんな!」という人もいるかもしれない。だけど、フリッパーズ・ギターをしらない世代の人たちに、どれだけのレジェンド感があるのかが多少でも伝われば幸い。最後はこの曲を聴いてお別れです。

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