フジロック3日目に登場!Buffalo Daughterインタビュー
- 2014/07/18 ● Interview
フジロック3日目の夜、レッドマーキーに出演するバッファロー・ドーター。7月23日にはニューアルバム『Konjac-tion(コニャクション)』をリリースし、フジロック最後の夜を楽しませてくれること間違いなしであろう彼らにインタビューを行いました。新譜の話から、彼らが今年参加した海外フェスティバルの話まで色々と語ってくれましたよ。
現代美術アーティスト、ピーター・マクドナルドとの共演
―まずは今回のアルバムコンセプトの”ブロック・パーティー”についてお伺いしたいのですが。2011年に金沢の21世紀美術館で、現代美術アーティストのピーター・マクドナルドさんの展示で演奏したことから始まったそうなのですが。実際にライブをやってみていかがでしたか?
大野由美子(以下大野):子供からお年寄りまで色んな人が見に来てて、まさしくそこがブロック・パーティーの雰囲気だったんですけど、私達ってそんなに色んな世代の人の中で演奏したことってなかったのですっごく楽しかったです。
―演奏は作品が展示してあるところと同じ場所だったんですか?
シュガー吉永(以下吉永):そうなんですよ、美術館にホールがあるのにそっちじゃなく。とにかくその展示の部屋の中でやるっていうことに意味があるっていうか。ディスコ(ピーター・マクドナルドの作品名)の部屋の中で音を鳴らしたいっていうんでPA機材も持ち込みなわけです。
―そうなると音響面は大変そうですね。
大野:(反響音が)体育館以上だったよね。
吉永:そこは一番大きな部屋で、天井もすごい高かったし。音響のことは考えられてない部屋なんで。
大野:リハーサルの時は、ちょっとこの曲演奏したら危険じゃない?ていうのがあって。どうかなって思ってたけれども、お客さんがパンパンに入ってたから(反響音を)吸ってくれて。それで大丈夫だった。
ピシっと「K」なものが入れたかった
―アルバムのタイトルの『コニャクション』というのは、どうやって決まったのでしょうか。
大野:私が最初、みんなと繋ってるっていうところから、コネクションみたいな名前がいいかなと思ったんだけど、でもちょっとコネクションだと普通すぎちゃっておもしろくないからどうしようかって話してたんです。そこで、コンニャクだと頭が「K」ていうイニシャルで始まるのがカッコイイから『Kojac-tion(コニャクション)』っていうのはどうかな?って。
―コンニャクというのは突然思いついたんですか?
吉永:たまたまwikiかなんかで、コンニャクっていう項目を見たんです。タイトル云々っていうのと関係なく色々と見てた時に”Konjac”っていう言葉を見つけたんですけれど、読んでみたら食べ物のコンニャクの話だったの。「コンニャクってこういうスペルなんだ!」って思って目から鱗。
―コンニャクって英語だとそんなスペルで書くんですね。
Kっていうのがすごいカッコイイと思ったんです。NでJとかが入ってるって渋いじゃないですか。日本人的なあのコンニャクのイメージからすると「これかー!」ていうのがすごいなと。で、コネクションって言葉が大野から出てきてたから、コネクション…コネ…コニャクション、だとカッコイイんじゃない?と思って(笑)
コネクションをね、Kで書けないかなっていうのをちょっと考えてたんですよ。今回は「C」じゃなくて「K」なんです。それは実はアルバムを作ってる途中からあって、ドイツっぽいイメージというか、サウンド的にもドイツの硬質なものを入れたかった。ディスコなんだけれども、そういうグルーヴィーなボワンとしたサウンドだけじゃなくて、ピシっとしたものが入れたくて、タイトルにもKがあるといいかなと思ってた。そこにあのKonjac(コンニャク)という言葉と出会ったから。
―ピタッとはまったんですね。
吉永:そう。私達日本のバンドだし、そういう意味では日本人のアイデンティティとしてこんなに素晴らしい物はない。
大野:ふふふ、コンニャクって(笑)。
―前作の『The Weapons Of Math Destruction(数学破壊兵器)』にしてもそうですけど、今までのアルバムタイトルは結構硬派なメッセージが多い印象だったので、今回コンニャクというのは意外でした。
吉永:コンニャクって聞くと、グニュっとした感じがするじゃないですか。サウンド的にもディスコサウンドって柔らかい感じがするんだけど、「K」だと全然イメージ変わるじゃないですか。だからボヨンってしてる様でめっちゃ硬派。それはまさにサウンド的にやろうとしてたことだから、こんなにぴったりな言葉はなかった(笑)。
―ジャケットのピーターさんの絵って頭が風船状になっているじゃないですか。それで他の人の頭と頭が重なっている部分の色が変わっていて。もしかしたらクラウド的なものが他の人とつながって、コミュニケーションをとってるのかなと思ったんですよ。で、頭の部分がコンニャクなのかなと個人的に考えて。
吉永:丸コンニャクですね(笑)。
―そう思ってジャケットを見てみると、コンニャクが並んでつながっているように見えて(笑)。
吉永:玉コンニャクなんですね!素晴らしい!それで全部お願いします(笑)。
大野:初めて聞いた、すごいわ(笑)。
―しかもやわらかい繋がりっていうか。そういうメッセージが含まれているのかなと…。
大野:含まれてるんです。っていうことにしといて(笑)。
―いつも勝手に、そうやって妄想してしまうので。
大野:でもそれが楽しいじゃない?
吉永:そういうのをね、呼び起こしたいんですよ。そういう風に思って言ってくれるっていうのが、一番いいよね。
大野:勘違いかもしれないけど、言ってくれたらもしかして「その通り!」てなっちゃうかもしれないし。そういうやりとりが楽しいよね。
―Oui OuiのMVを作られた合田経郎さんについても、合田さんの絵ってラインは少ないんですけど真似して描いても絶対同じ顔にはならなくて。足し算で積み重ねていくというよりも、どこか絶妙なバランスじゃないとそれにならないっていうのが、リンクするところがあるなと。
大野:レコーディングって、今トラックをどんどん好きなように増やせるけど、でもそうやっていってもやっぱり元がしっかりしてないと。あんまり良くないなと思ったトラックに色んな味付けをしていっても結局なんかね。どんなに厚くしてもおもしろくないよね。
Buffalo Daughter "Oui Oui"
近い感じがするっていうのは、お互いにある
―その味付けという意味では、今回の新譜ではたくさんのアーティストの方と一緒にコラボレーションされてますが。これはどのように人選をしたのでしょうか?
大野:全然計画的に頼んだわけではなくって、ちょっと足りないところにこの人が合ってるんじゃないかなって思いついて。
吉永:合田さんにしてもピーターさんにしてもバッファローのことを好きで聞いててくれた方たちなので、さっきちょっと出てきてたけど「近い感じがする」みたいなのね。それは多分だけどお互いにあるんですよね。
やっぱり始めて間もないバンドだとなかなかそういうコネクションが生まれづらいと思うんですけど、20年やってるもんですから。その間に好きで聴いてくれているアーティストがいて、私達も逆にその人達のことを見に行ったり聴いたりして。そういうことが積み重なって、今一緒にやるところまできたのかなって感じですよね。全然違うフィールドでも、なんとなく遠くからお互いのことを見てたんですよ。
―曲のこの部分をお願いしよう、というのはある程度固めてからオファーしたんでしょうか?例えば日本勢のコラボレーション相手の一人に元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎さんがいますが、坂本さんがボーカルで他のアーティストの楽曲に入ってるのが初めてなんじゃないかと。
大野:そういうことはあんまり考えてなかった(笑)。
吉永:うん、考えてなかった。あれは男女のデュエットにしたかったんです。元々(レイ)ハラカミくんとデュエットしようと思って作った曲だったんだけど、だいぶ以前にデモを渡した時には反応がなくって(笑)。自分達としては良いと思ってた曲だから、ハラカミくんに渡した時とはちょっとアレンジを変えたんですけど、2番は元のイメージ通り男性のボーカルにしたいと思った。で、うちにはボーカルもとれる男性がいますから(笑)。
日本語の歌詞をムーグさんが書いて歌ってみたんだけど…ちょっとおもしろすぎたというか、超アングラな感じになったんですよ。70年代の裏サイケみたいな(笑)。幻の7インチで100枚しか出ていないみたいな、そういう雰囲気になったんです。そのままアルバムに入れるかどうか最後まで悩んだんですけど、やっぱり変えたほうが良い気がすると思って、他にボーカルって誰だろうって考えた時に、坂本くんのことが頭に浮かんだんです。
(歌のキーは)私が低くて男性が高いんだよね。それは考えてたの。
ムーグさんはファルセットで歌ったんですよ。ディスコ時代のミック・ジャガーがファルセットで歌ってるじゃないですか、あのイメージで歌ってもらったらだいぶおもしろくなっちゃった(笑)。
山本ムーグ(以下山本):その通りです。
全員:(笑)。
山本:自分でもやってて、なんか…難しかったです(笑)。ファルセットだったしなぁ。
吉永:最初坂本くんにも「ファルセットで歌って欲しいんだよね」って言って歌ってもらったの。そしたら「普通の歌いかたもやっとく?」って言ってくれたんです。そうだね…じゃあそれもやってもらっていいかなって、お願いしてみたら、もうあの坂本節だったわけですよ。これはいい!と思って。
大野:低いのも歌ってくれたんだよね。
吉永:上中下全部。後半は実はファルセットを使っているんですけどね。3番の一緒に歌ってるところで。
―なるほど、そんな風にコラボレーション相手が決まっていったわけですね。
ではDisc2はリミックス盤にしようと思ったのはどうしてですか?
吉永:それは今年の頭くらいに、仕様についての話をレーベルの人と話して決めたんです。前作(ベスト盤)では、空のCD-Rをつけて2枚にしたんですけど、2枚組って結構いいかもしれないと。じゃあ全曲リミックスを作って2枚組にしたらどうかなっていうアイディアが出たの。それからリミキサーの選定に入ったんです。色んな国の人に入ってほしいなと思って、日本、台湾、イギリス、アメリカ…とか。
―リミキサーの中のしんなりちゃんという方が気になったのですが。
吉永:最近、若手のトラックメーカーで色んな方たちがいますけど、レーベルにも紹介してもらいながら色々と聴いた中でダントツなんですよ。しんなりちゃん。すごいピンときて。
あとVARO(ヴァロ)も私達すごく好きで、交流が始まったのが4、5年前くらいなんですけど、以前、彼らのアルバムの曲のリミックスを頼まれて。それ以来「ヴァロは良い!」って言い続けてます。本当にいいんですよ。
VARO "Dr. Strangelove"
吉永:昔、彼らはオルタナティブっていうか、実験ぽいバンドだったんです。今は台湾のワンさんっていう女の子一人で、だいぶテクノDJっぽくなってる。今回リミックスを頼んだ時に、「昔のヴァロみたいなオルタナティブみたいなこともできるし、でも私最近テクノっぽいのよね、どっちがいい?」て言われたんです。どちらでもいいからあなたの好きなようにしてって伝えて出来上がってきたのが今回の曲(Disc2 ”Calling Out From The World Of Echoes”)。彼女はその時「久しぶりにテクノ以外のことをやったらすごく楽しかった。ありがとう!」ていう感想をくれたの。
―お互い良い刺激があったわけですね。
まさにブロック・パーティーな海外フェスティバル
―今年、海外のフェスティバルではサウス・バイ・サウス・ウェスト(3月にアメリカのオースティンで開催。以下サウスバイ)とグレートエスケープ(5月にイギリスのブライトンで開催)に出られましたがいかがでしたか?どちらもショーケース型フェスですね。
大野:みんな楽しんでるよね。サウスバイ一発目はどこだっけ?
吉永:昼間のカフェかな?(同じステージの)一番最初に出た子がかわいくて。中学1年生くらいの女の子たちだけのバンドがすっごく好きだった。
大野:そうそうそうそう。お父さんとか、お母さんがビデオ撮りまくって(笑)。
吉永:お父さんがローディーだったよね(笑)。ギターアンプから何から、車でかけつけて全部運んであげるの。すっごいかわいかったよね。そういうの楽しいですよ。
大野:そういうバンドの音楽をイギリスとかアメリカの人達って楽しんで聞くじゃない?バーに行って話しながら演奏を聞いて。日本の場合カラオケだから、そういう演奏を楽しむっていう文化があんまりないんじゃないかな。
吉永:まさにブロック・パーティー感が良かったですよね。サウスバイの昼間のやつとか完全にそうですよ。だってかなりの爆音なのに周り全部住宅だよね。正面の家とか相当うるさいと思う(笑)。
大野:かと思えば子供がドリンクを作って家の前で売ってたり、それをお父さんが、ああしろこうしろって言ってたりとかして(笑)。あとお店の前でどういう人だかわからないんだけど、ジャンジャカ、ジャンジャカ、演奏してる(笑)。練習してるのか、お金が欲しくてやってるのか全然わかんないんだけど、みんな勝手に楽しんでるっていうオースティンの街が見えてすごくおもしろかったです。
―当日は会場内をじっくり見て回ったりしたんですか?
大野:そんな時間はなかったかな(笑)。
吉永:昼間そこでやって、そのあと違うところでやって、さらに夜やって、みたいなそんな感じだったから。
山本:全部自分たちのライブが終わってからオフだったんですよ。で、昼ぐらいに会場に行って。ちょっと変わったことしてたんですけど、道に落ちてる黒いトートバッグを拾ったんですよ。新人アーティストがいっぱい出演するんだけどプロフィールとかCD-Rとかがセットになってるんです。で、パッと見てみたら道にCD-Rが本当に信じられないくらい捨ててある。急におもしろいなと思っちゃって、ロックのゴミを拾ってみようと思ったんです。ずっと5、6時間ぶらぶらしながら、リストバンドとかCD-Rとかステッカーとかピックとか色んな物を拾ってた。それだけでコラージュ作ったらおもしろいんじゃないかなと思ったんです。
―アートの血が騒いだわけですね。
山本:そうそう。すごいおもしろかった。
吉永:物を拾ってる危ないおじさん(笑)。
山本:(落ちている物を)選んで、「違うな」とかやってたから本格的な…(笑)。
―(笑)。それぞれに楽しまれていたわけですね。
ディープな時間でのフジロック
―フジロックではいかがですか。会場内を回ったりしますか?
大野:うん、わりとしてる。疲れてなければ(笑)。
―今年楽しみにしているバンドはありますか?
吉永:うちの真裏がアウトキャストなんですよね。いっさい見れないじゃないですか!
全員:(笑)。
吉永:でも土曜日の(オノ)ヨーコさんはちょっと楽しみですね。揺るぎのないパフォーマンスを、あのレッドで見れるかと思うと。お客さんがどうするんだろうね、あのパフォーマンス。盛り上がるんだろうね。
大野:お客さんもね、好きなんじゃない?そういう感じ。
吉永:あとレッドの、うちの直前にやるロード。どんなことやるのかちょっと楽しみだな。早めに行って見ようと思って。
大野:昔あそこ(レッド)で昼間やったときに、サウナ状態ですごい暑いときがあって、その時自分の楽器が壊れたんだよね、暑すぎて。ゴムが溶けちゃったみたいな感じ?それはびっくりしたの。でもいつも楽しんでる。演奏する気分もすごく良いし。
吉永:今回日曜日の結構ディープな時間で、だいたいみなさん帰路につく時間だとは思うんですけど、そこで熱い演奏を聴かせたいなっていうね。帰ろうと思った人が「やっぱ見ていかなきゃ」と思うようなものがそこにはある。アウトキャストの真裏だけれども!(笑)やったことのない時間なんで楽しみですね。
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