ROOKIE A GO-GO経験バンドに訊く「フジロックってなんだ?」Vol.5: 後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION/Gotch & The Good New Times)
- 2016/07/08 ● Interview
20回目の開催を機に、ROOKIE A GO-GO出演経験バンドに「自分にとってのフジロック」「フジロックが果たした役割」「これからのフジロック」etc…について訊くシリーズ企画。ゲートをくぐりグリーンステージ制覇に到ったバンドもいれば、去年のROOKIEに出たばかりのニューカマー、そして今は音楽活動とは別の道に進んだバンドも存在する。彼らの言葉を通して見えてくるフジロックの20年、そしてこれからとは?
今回は2002年に『崩壊アンプリファー』をインディーズからリリースし(2003年4月、Ki/oon Musicからリイシュー)、翌2003年にROOKIE A GO-GOに出演し、名実ともに00年代の日本のトップバンドへ躍進を遂げたASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文がアンケートに答えてくれた。2006年、2009年にはグリーンステージにも立ち、Gotchバンド(新作からはGotch & The Good New Timesとなった)でも2014年にレッドマーキーを沸かせてくれたことも記憶に新しい。自身もバンド主宰でフェスを開催し、また全国各地のフェスに出演するGotchにとってフジロックとは何なのか。示唆を含む回答は必読です。
Q1:ROOKIE A GO-GOでのステージの思い出をなるべく具体的にお願いします。
Gotch:当日はとても緊張しました。ここで良いライブをしなければ場内のステージには呼んでもらえないだろう、あるいは、失敗すれば一生フジロックには出られない、そんなことを考えていたらどんどん緊張感が高まって、本番前はじっとしていることができませんでした。また、最終日の夜明け前のステージだったので、観客はみんな帰途について、客席がガラガラなんじゃないかという不安もありました。実際には、1000人くらいの観客が残ってくれて、とても良いライブになったのですが。ステージに立つまでの時間は今でも覚えていて、思い出すと身体がギューっと硬くなります。一生忘れられない思い出です。
Q2:ROOKIE出演前・後にフジロックに参加していますか?参加、出演した時の自分のライブの思い出や他アーティストのライブで強烈に記憶に刻まれたものを教えてください。また、それはどんな理由でしょうか。
Gotch:98年の豊洲のフジロック、ミッシェルガンエレファントのステージは鮮烈でした。当時は、洋楽ファンからすれば日本のロックバンドはゴミみたいな扱いで、そういう中で、ほとんどホームグラウンドみたいなライブを打ちかます姿に痺れました。日本人でもあんなに格好良いロックができるのだ、自分もああなりたいと憧れました。
僕は二度、グリーンステージに立っているのですけれど、初めてグリーンステージから観客席を眺めたのは、ニューオーダーに招待してもらったときでした。ステージ脇からでしたけれど、谷の向こうの杉や檜の森や観客たちがゆらゆら揺れる姿が美しくて、ロックスターたちはこんな景色を眺めながら演奏しているのか!と感動しました。
Q3:20年間のフジロックでいい変化、これはどうなのかな?と疑問に思う変化はありますか?
Gotch:一言で良い変化、悪い変化を語るのは難しいですね。でも、20年前に比べれば、フジロッカーたちの環境に対する適応能力は随分と変わったと思います。大雨でも、まあそんなもんだよね、くらいのリアクションですから。僕も含めて、観客たちがタフになったんだと思います。
オレンジコートというステージが減ってしまったのは、少し残念ですね。ひとつのステージにかかる予算を想像すると、なかなか簡単に戻してとは言えませんけれど、ステージが減っても、これまでのフジロックと同じように、多種多様なジャンルの音楽を楽しめる場所であってほしいと願います。で、それについては心配していません。
Q4:フジロックを含め、日本に音楽フェスは根付いたと思いますか?
Gotch:フェスバブルなんて揶揄もありますが、僕は根付いたと思います。今後はもっと細分化されて、地方の祭りの一形態として、より深く根付いていくと考えています。ただ、淘汰されるフェス、うまく行かないフェスも出てくると思うんですけれど、それは根付いて行くための通過儀礼みたいなものなのではないでしょうか。
Q5:リスナー目線で現在のところ、今年のフジロックは魅力的ですか?もっとこんなアーティストが出演してほしいという要望はありますか?
Gotch:とても魅力的なフェスです。特に出演アーティストに対する不満もないですね。世界的にフェスが夏に集中するなか、ブッキングが大変じゃないのかと心配していますけれど。
フジロックの良いところは、普段では知ることのできないような非英語圏のバンドにふらっと出会って恋をしてしまうような瞬間なので、今後も、いろいろな角度から、いろいろな音楽を紹介するフェスであって欲しいです。
あとは、苗場プリンスのクオリティくらいですかね、要望は。笑。
Q6:20年目のフジロックに期待するアクト、ステージ、それら以外のアプローチなどの提案があればぜひ聞かせてください。
Gotch:今年はwilcoからBeckという流れが楽しみです。でも、仕事で行けないんです。泣きそうです。レッチリから電気グルーヴへの流れも、感動的でしょうね。
あとは、マイクとギターが一本置いてあって、観客が勝手に歌って良いステージとか、今後できたら面白いかもですね。僕だったら、そこで詩の朗読をしてみたいです。
Q7:フジロックがこれまで果たしてきたものとは?個人的にでもバンド的にでも、音楽文化的にでも構いません。
Gotch:世間的なことはどうか分かりませんが、世界に対する意識とか、ユニバーサルな感覚とか、そういう音楽に対する様々なフィーリングについて、フジロックを通して体験してきたように思います。ある種の、翻訳機的な役割と言いますか。
それから、ロックを含む大衆音楽は社会の写し鏡のひとつだと思うのですが、ある種近親交配的に閉じていく可能性のある文化を混ぜかえすことによって、自分が日本人であると共に世界市民でもあることに気づく、もっと大きな鏡の一部であることを自覚する、僕にとってはそんな場所なんだと思います。
同じ時代に息吸って飯食って糞して、誰かを好きになったり、抱き合ったり、憎んだり、嫉んだり、ぶん殴りたくなったり、ときに絶望したり、それでも音楽を愛している、そういう人間が世界中にバラバラとたくさんいて、僕もその人たちと隔たったままどこかで繋がっている、そんなことを想像させてくれるフェスでもあります。
[過去記事はこちら]
• ROOKIE A GO-GO経験バンドに訊く「フジロックってなんだ?」Vol.1: told
• ROOKIE A GO-GO経験バンドに訊く「フジロックってなんだ?」Vol.2: Tempalay × Walkings対談
• ROOKIE A GO-GO経験バンドに訊く「フジロックってなんだ?」Vol.3: オレスカバンド
• ROOKIE A GO-GO経験バンドに訊く「フジロックってなんだ?」Vol.4: ダニー(ザ50回転ズ)
取材・文:フジロッカーズ・オルグ
Information
ASIAN KUNG-FU GENERATION
ニューシングル「ブラッドサーキュレーター」
2016.7.13リリース
ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2016-2017「20th Anniversary Live」
2016.12.17 幕張メッセ・イベントホールよりスタート
いずれも詳細は以下
http://www.asiankung-fu.com
http://www.akglive.com/20th/
Gotch 2ndアルバム『Good New Times』発売中
Gotch & The Good New Times
「Tour 2016 ”Good New Times”」
2016.9.6 渋谷CLUB QUATTROよりスタート
いずれも詳細は以下
http://www.onlyindreams.com/artist/gotch.html
http://gotch.info
• おまけ(後藤さんありがとう)
https://t.co/GIDZBFNRXbのメールインタビューに応えようとしてるんだけど、1問目が「ROOKIE A GO-GOでのステージの思い出をなるべく擬態的にお願いします。」で困惑している。すんごいハードル高い。何に例えれば良いんだろう。大喜利的な設問なのだろうか。
— Gotch (@gotch_akg) 2016年6月22日