• フジロック・オフィシャルフォトグラファー「宇宙大使☆スター」ってどんな人?


    フジロックにはさまざまな裏方が存在する。フジロッカーズ・オルグである僕たちも、現場に入りそこで起こったことを速報レポートとして伝えている裏方だ。今回はフジロック・オフィシャル・フォトグラファーの宇宙大使☆スター氏に注目する。フジロックの隅々まで知る彼にフジロックのこと、写真のことをインタビューした。

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    ─ 早速ですが、宇宙大使☆スターという名前に、由来はあるんですか?

    宇宙大使☆スター(以下スター):これを話すと、フェスの写真を撮るようになったきっかけに繋がっていくんですけど、最初は、いつも一緒につるんでいた仲良し三人組がいて、その仲間でクラブ行ったりレイヴ・パーティー行ったりとかしていたんだけど、せっかくいつも三人いるから、チーム名作ろうって話になったんですよ。それで、思いついたのが、宇宙大使だったんです。

    ─ 全員カメラマンだったんですか?

    スター:違います。一人は、ウェブデザイナーで、もう一人は家具職人ですね。

    ─ 三人のチーム名が「宇宙大使」?

    スター:そう。それで僕が、スターをもらって、あと、ソーラーとムーンがいます。

    ─ へぇ!

    スター:
その三人でよく遊んでいて。

    ─ 別にカメラマンネームとして、スターをつけたわけではないんですね。その時はカメラマンじゃなかったんですか?

    スター:いえ、写真は撮っていたんですけど、フェスとかは撮っていなくて。この3人ではフジロックとかは行ったことなかったんですけど、あんまりでかいフェスっていうのは興味がなくて。そしたら、ある友達が朝霧JAMだったら絶対楽しいから行かないか?って声かけてくれて。それで誘われて行ったのが朝霧JAMで。それで行ったら超楽しくて。

    ─ フジロックより先に朝霧だったんですね。それって何年の時だったんですか?

    スター:2003年だと思う。確か。その時に、カメラを持って行ったんですよ。ハッセルブラッドっていう正方形のカメラで。それで朝霧JAMに行ったら想像と全然違っていて、みんなとても楽しそうで。そういうところばかりを写真に撮っていたんです。その時代のフェスレポートって、ミュージシャンや演者がメインのレポートしかなくて、どういうフェスかってわからなかったんだけど、実際に行ってみたら、みんなが楽しそうで、全然想像していたものと違くて。それで、そういうところを写真に撮って、一緒に行っていたソーラーがウェブをやっていたから、これはみんなに知らせた方がいい! ってなって。それで、勝手に写真サイト作ったんですよ。朝霧JAMフォトグラフみたいな。それでこれを見てくださいってBBSに書き込んだんですよね。そしたら、数ヶ月後に、スマッシュの人からいきなりメールが来て(笑)。それで俺とソーラーがめっちゃ盛り上がって。お、来たぞ、スマッシュって(笑)。

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    一同:(笑)

    ─ すごいですね!

    スター:そう、それでメールを読むと、我々が求めているフェスの形をうまく表現してくれている、素晴らしいです。みたいなメールをいただいて。それで朝霧JAMの公式サイトから、僕らのサイトにオフィシャルのリンクを貼ってもらったんですよ。そういう経緯でスマッシュの人たちと繋がったんです。それでその年かその次の年のフェスティバル・エコーだったかな、それに写真を使ってもらって、その時にクレジットどうする?って話になって。それでサイトウツヨシじゃなくて、宇宙大使☆スターで行こうってなって(笑)

    ─ ちなみにその当時の朝霧のサイトって残ってるんですか?

    スター:今の朝霧JAMサイトのフォトギャラリーがそれですよ。

    ※ASAGIRI JAM PHOTOGRAPH:http://www.tsuyotsuyoniconico.com/asagiri

    ─ そうなんですね!

    スター:そのままずっと使ってくれてて。

    ─ じゃあ運営はソーラーさんがやってるんですか?

    スター:そう。僕とソーラー。

    ─ その流れでフジロックも?

    スター:そう。同じようなテイストでフジロックもやってみない? って言われて。

    ─ 元々朝霧JAMで最初にオフィシャルカメラマンになったんですね。フジロックと朝霧ってやっぱり違いますか?

    スター:うん、全然違いますね。朝霧JAMはキャンプインなので、フジみたいに会場からいったん外に出されることもない。参加している人全てがずっと会場内にいるという心地よさがある。それと、ほどよく楽ですね。ゆったり楽しめるちょうどいい規模感で。今時、ツーステージっていうのも良いと思います。

    ─ フジロックでもお客さんを撮り続けていますが、その理由ってあるんですか?

    スター:ライブはみんな撮ってるから、まぁ僕が撮らなくてもいいかな、って。それよりも、誰も撮っていないフジロックの魅力を見つけてみたいんです。

    ©宇宙大使☆スター

    ©宇宙大使☆スター

    ─ 毎年会場を歩いていると、結構な割合でスターさんとすれ違うんですけど、この人いつも会場歩いてるなーって勝手に思っていて(笑)。何か撮りたいものがあるのかなぁって思っていたんですが。

    スター:そうですね。撮りたいものいうか、撮ってしまう素敵な出会いを探しているって感じかも。

    ©宇宙大使☆スター

    ©宇宙大使☆スター

    ©宇宙大使☆スター

    ©宇宙大使☆スター

    ─ オフィシャルフォトグラファーって、何か役割って決まっているんですか?

    スター:そうですね。やっぱりスマッシュが欲しい絵があるので、例えばグリーンステージ周りとか、お客さんが盛り上がっているところとか。そういうところはアーティストの出演順とか見て、狙っていきますね。それでもグリーン、ホワイトあたりが多いかなぁ。あとは僕が見たいって思ったアーティストは必ず見に行きます(笑)。

    ©宇宙大使☆スター

    ©宇宙大使☆スター

    ©宇宙大使☆スター

    ©宇宙大使☆スター

    ─ 今までのフジロックで印象に残っている出来事ってありますか?

    スター:載せられる話ですよね?(笑)

    一同:(笑)。

    ─ お願いします(笑)。

    スター:その質問でパッと思いつくのが、2009年の清志郎さんのトリビュートバンド。あれはフォトピットで写真撮っていたんですけど、始まる前の会場が熱くなっている感じとかやばかったですね。またステージの演出もすごい良かったですよね。ステージに本当にいるような。

    ©宇宙大使☆スター

    ©宇宙大使☆スター

    ─ 今年のフジロックで楽しみにしていることはありますか?

    スター:アンフェアグラウンドが楽しみですね。あれだって、全部持ってくるんでしょ? 

    ─ 本場グラストンバリーでのアンフェアグラウンドも体験されていると伺っていますが、実際どんなところなんですか?

    スター:すごいところですよ。大体あそこに足を踏み入れると明け方まで帰ってこられないみたいな(笑)。

    ─ 規模的にも大きい?

    スター:でかいですね。確かそのエリアって、いくつかの夜遊びエリアが集まっているんですけど。その内の1つがアンフェアグラウンドで。全て合わせると相当広いですよ。夜で暗くて確かではないですけど、多分、朝霧JAMくらいあるんじゃないかなぁ。

    ─ へぇ。すごい規模ですね。サーカスだけで、ですか?

    スター:いや、ライブステージもあるし、色々あります。それで暗いから、なんだかわからないんだけど、歩いていて楽しい感じ(笑)。果てしなく歌舞伎町みたいな(笑)。

    ─ 今年の奥地は楽しそうですね!

    スター:そうですね。アンフェアグラウンドは日本には無い雰囲気だから、とても楽しみです。

    ─ いろんなフェスを体験しているスターさんですが、他のフェスと比べてフジロックでどう映っていますか?

    スター:出演ミュージシャンに関してだと、毎年楽しみっていうのがありますね。外タレが来るっていうのももちろんそうだけど、フジでしか見られないアーティストも絶対いるし。他のフェスって日本人がメインってところもあるし、その辺の差はとても感じています。あとは、規模だったり、手作り感とかですかね。フジロックって普段何も無いところに一から作るから、手作り感というのをとても感じます。ここまでやるか!っていう。それでその場所に何万人っていうお客さんが入って、ほとんど朝までやっているわけでしょ?テントや苗プリで寝ていて、明け方起きてもまだ音が聞こえる安心感って、やっぱり他では味わえないと思います。

    ─ ちなみにフジロックって音にもこだわってるんですよね。

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    スター:そうですよね。音に関しては、ぶっちぎりでフジロックが良いと思います。全然違うと思う。野外であれだけの音出すってすごい。

    ─ スターさんはどのステージが好きですか?

    スター:やっぱりグリーンかなぁ。ホワイトも好きだけど。あの一体感とか総合的に見てグリーンが一番好きです。あと最初に入って一番に出てくるのがグリーンっていうのもあるんだと思う。金曜朝に会場入ってきて、グリーンで音がガンガン鳴っていると、あぁ帰ってきたなぁって感じるんですよね。

    ─ 他に好きなステージは?

    スター:オレンジ良かったですね。入り浸ってた記憶があります(笑)。

    ─ なんか奥地が好きな人ってみんな同じっていうか、似てる人が多いなぁって気がしてます(笑)。スターさんっぽいっていうと語弊がありますが、雰囲気が似てるっていうか。

    スター:そうですか?(笑)でも奥地の裏方って、他のフェスとかで良く会う人が多いかも。だから結構友達っていうか知り合いが多いんですよね。だからたまっちゃうっていうか、そういうのもあるのかもしれませんね。いろんな現場で会う人はいるんだけど、会わない人もいる。でもフジロックだと、全員いるっていうか。

    ─ 集大成みたいな。

    スター:そうですね。逆にフジロックに関わっている人って、全国のどれかには絶対関わっているっていうか。そういう感じがします。

    ─ スターさんにとってフジロックって?

    スター:フジロックの無い世界なんて考えられないですね。一年何しよう? みたいな。

    ─ 最初は否定的だったのに、すごい変わったんですね。

    スター:そうですね(笑)。本当に食わず嫌いって怖いなぁって思います。年齢を重ねたからか、その辺がゆるくなったのかもしれませんが、例えばアイドル行かないとか言っていても、一歩踏み出したら、やばいかもしれない。とか思うことは増えましたね。行かないとわからないっていうか。

    ─ スターさんならではのフェスの楽しみ方ってありますか?

    スター:無理しないことかなぁ。高いチケット買って入るんだから、色々見たいとか思うんだろうけど、もちろんそれも一つの楽しみ方だと思うんだけど、俺なら、見たいのはもちろん見るんだけど、テントサイトの隣の人と仲良くなったりとか、音楽だけじゃない楽しみ方を結構してるかも。楽しみたいと思う割合は、アーティストとその他で半々っていうか。その他が楽しくないフェスには行かないかな。

    ─ 最後に良い写真を撮るコツを教えてください。

    スター:待つことですかね。次起こることを予測して待つっていうか。例えば、男女が歩いていて、こうなるだろうなぁっていうところで構えていて、「さぁ、コイっ!」みたいな(笑)。まさにハンティングですね。あとは偶然の出会い!なんてことももちろんあります。記憶にあるのは、雨のグリーンステージでバトルスだったかな。その時に、僕は後方の方で見ていたら、一人の男性がいい感じに踊ってて、周りが集まってきて、彼の隣が踊り出し、それが連鎖していって広がったんですよ。最後はもうバトルス見ている人なんていなくなっちゃって。すげぇ!って。

    ©宇宙大使☆スター

    ©宇宙大使☆スター

    このインタビューをして思うことは、裏方であろうがフジロックを楽しみにしているし、フジロックを楽しんでいるということ。たとえそれが仕事であっても、楽しさを伝えるには自分も楽しむ必要がある。それを能動的にするのではなく、楽しませてくれる、そんな感覚ではないだろうか。フジロックの魅力は、その存在全てなのであって、どれというものは無い。大きな器が用意されているから、その上でどう踊るかは自分次第なのである。フジロックは仕事の本質を気づかせてくれる場所だと彼はいう。スター氏は、自身のさまざまな経験から立つべき場所に立ち、現場で起こる奇跡を一枚の写真におさめている。その奇跡を切り取る快感も、フジロックの魅力の一つなのかもしれない。

    (了)


    [PROFILE]
    宇宙大使☆スター
    写真家。フジロックフェスティバル、朝霧ジャム、ロッキンジャパン、ライジングサンなど日本各地のフェスティバルでオフィシャルカメラマンを務めている一方、写真は生活を豊かにする、そんな想いで、自らも世界中を飛び回り、その日その場所でしか起こりえない情景、出会いを感じながら、あらゆるシーンでシャッターを切り続けている。

    取材・文:紙吉音吉、北村勇祐
    写真:北村勇祐

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