• さらさとフジロックの4年間の歩みを振り返る

    9月25日に約1年ぶりとなる新曲“青い太陽”をリリースした、シンガー・ソングライターのさらさ。先日には約1年ぶりとなる東名阪ツアー『Thinking of You Tour 2025』の開催も決定した彼女だが、さらさとフジロックの縁は深い。その理由は、コロナ明け以降の出演回数の多さ(2022、2024、2025に出演)にも分かりやすく表れているが、彼女の楽曲性・アーティスト性とマッチした出演ステージの割り振りにあると考える。この記事では、さらさのフジロックにおける歩みはもちろん、彼女が着実に積み上げ続けたキャリアの証明となるワンマンライブも交えて、来たる東名阪ツアーへの展望を綴っていきたいと思う。

    さらさ

    さらさは湘南出身のシンガー・ソングライターで、自身のテーマでもある「Live Bluesy(ブルージーに生きろ)」というテーマ、アティテュードを持ち、活動している。それは、ブルースというジャンルの中にある「隠と陽」や「ポジティブとネガティブ」などの対になる感情、それらの在り方を楽曲をはじめとした様々なクリエイティヴに映し出したもので、敢えて一言で言うならば「人間が持つ様々な感情を肯定する」ではないだろうか。

    そんな彼女のアティテュードを、フジロック初出演となった2022年のジプシー・アヴァロンでのステージで感じた時の感情は、今でも鮮明に心に残っている。

    フジロック’22 @ GYPSY AVALON – 22/07/30(土)

    オレンジコートの面影が見えたフジロック初出演

    初めてのフジロック、当時23歳だったさらさ。当時のことを彼女はライブ後日「緊張していた」と振り返っていたが、当日客席から見た時はそんな風には見えなかったし、むしろ貫禄の雰囲気すら漂っていた。そう感じた要因としては、落ち着きのあるステージパフォーマンスに、緩やかにグルーヴする素晴らしい楽曲に起因している部分が強かったが、今振り返ってみると、その土台になっていたのは「Live Bluesy」な歌詞世界にあったように思う。アブストラクトがゆえに多様に解釈できる彼女の歌詞。それら全てをパッケージして改めて音源を聴き直し、あの日の光景を思い出すと、そこに重なって見えたのは、やはり2014年まであった「オレンジ・コート」の面影だった。

    ワンマンライブ『(star)』@ WWW X – 23/12/12(火)

    心の共鳴を通して、お互いを照らしあった光が美しく写った一夜

    Photo by 白井絢香

    「良いライブ」や「記憶に残るライブ」は今までにもたくさん観てきたが、まるで心が共鳴位するような感覚が強く残ったこの日のライブは、筆者にとって特別なライブとして非常に記憶に残っている。「Live Bluesy」というテーマの”本質”を頭で理解することは簡単なようでとても難しい。理由は明白で、そこには人の数以上に存在する様々な「感情」があるからだ。というか、完全に理解する必要もないのかもしれない。ただ、心の周りにある感情を受け入れる。それが「ネガティブな感情を受け入れてポジティブに変えていくこと」だったり「心が不安定で曖昧な場所にいることを《いい感じ》と捉える」ことに繋がっていくような気がするのだ。この日のライブの中盤、さらさはMCで「どんなことがあっても、みんながいるから頑張れる」と言っていた。その一言を聞いて思わず「それは、お互いにだよ」と心に走った言葉に間違いはないと思う。さらさにとってファンは光であり、ファンにとってもさらさは光である。そういう意味でも、この日のライブタイトル「(star)=光」はまさにぴったりなネーミングだったと思う。

    フジロック’24 @ GYPSY AVALON – 24/07/30(土)

    さらさの新たな表現の形を切り拓くトリオセット

    Photo by 白井絢香

    さらさは全国の様々なイベントやライブで、異なる「編成」のライブを行っている。バンド編成(5人編成の”ラブリーロンリーさらさらバンド”)、弾き語りのソロセット、そしてこの年のフジロックからは、新たにトリオセットも加わった。この時のトリオセットは、さらさ(Vo/Gt)とオオツカマナミ(Ba ※ラブリーロンリーさらさらバンドのメンバー)に加え、梅井美咲(Key ※今年のフジロックには梅井美咲名義で『ROOKIE A GO-GO』に出演)が参加。ピラミッド・ガーデンの開放的な雰囲気の中で行われたこのトリオセットでのライブは、サウンドも含めとても自由な雰囲気が印象的だった。従来のブルースやソウル、R&B由来のグルーヴに、梅井によるジャズピアノ由来の自由なフレーバーが溶け込んでいく、その新しいアンサンブルはピラミッド・ガーデンにいい風を吹かせていた。

    ワンマンライブ『Golden Child Tour 2024』@ LIQUID ROOM – 24/09/10(火)

    さらなる広がりを見せた “Live Blusey” のアティテュード

    Photo by Yukitaka Amemiya

    さらさの“Origin(起源)”がタイトル名に据えられた2ndフルアルバム『Golden Child』。このアルバムを引っ提げ行われた、彼女自身初となる東名阪ツアーの最終日、LIQUID ROOMでのライブには、彼女のここまでの人生が詰まったような空気に満ちていた。
    母から言われた「まあ、さらさは “Golden Child“ だから大丈夫だよ」という言葉。彼女のある意味“Roots(原点)”でもあるソウルメイト“かたぴ”(※)たちとの出会い。それらが今の彼女を形作っていることが、この日歌われた曲とさらさのMCなどからひしひしと伝わってきた様な気がして、より彼女の楽曲にのめり込んでいく未来しか想像できないほどに、意味も意義もあったライブだった。

    (※) 今年4月からSpotifyで始まったポッドキャスト『さらさとゆとりくん(かたぴの別愛称)のちちんぷいぷいRADIO』は、ソウルメイツである二人の関係性や、さらさのぶっ飛んだ一面も聴けるので、さらさそしてゆとりくんのことをもっと知りたい方は是非。

    フジロック’25 @ ORANGE ECHO – 25/07/27(日)

    フジロックが持つ様々なグラデーションを表現したステージ

    Photo by 平川啓子

    今年、新ステージ「ORENGE ECHO(オレンジ・エコ)」が発表され、後日さらさの出演が決まった瞬間、思わず「やった!」口走ってしまった。かつて様々な国のミュージシャンが出演していた多国籍ステージ「オレンジ・コート」ではないものの、彼女の音楽性は勿論のこと「Live Blusey」というテーマもまたオレンジ・コートの親和性は間違いなく高い。だからこそ、同じ場所に彼女が立つというだけで個人的には感動しかなかった。
    残念ながら筆者は彼女のステージを観られなかったのだが、ライブ後の彼女のインタビューによれば、フジロックの“特性”を見事に表現したステージだった模様。例えば、自然の豊かさだったり、山の天候による不便さ、あとは近年インバウンドのお客さんが増えたことによる多国籍感。そんな多様さの中にいる人たちの感情や価値観のグラデーションに光をあてるようなセットが組めるのは、彼女の真骨頂と言っていいかもしれない。

    ───

    11月に行われる東名阪ツアー『Thinking of You Tour』。さらさが、このタイトルに込められた思いは何なのか?彼女のインスタライブなどで軽く触れられてはいたものの、深いところまでは明かされなかった。このタイトルから文字通りに受け取ることもできるが、ここにもきっと多様な意味が隠れているんだろうと(勝手に)想像すると、楽しみは増していくし、加えてここに新曲“青い太陽”と、彼女が匂わせていたさらなる新曲が加わると思うと、当日のステージング、セットリストも含め、楽しみは尽きない。

    彼女のファンはもちろん、これまでさらさのステージを観たことなくて、フィールド・オブ・ヘブンや、かつてのオレンジ・コートが好きなフジロッカーには、是非観てほしいライブだ。

    text by 若林修平

    ◆ 公演情報 ◆

    『Thinking of You Tour 2025』
    2025年11月13日(木) 名古屋 ell.FITSALL
    2025年11月19日(水) 東京 Spotify O-EAST
    2025年11月20日(木) 大阪 UMEDA CLUB QUATTRO
    開場時間/開演時間 18:00/19:00
    オールスタンディング 5,000円(税込/ドリンク代別)

    <チケット販売情報>
    一般販売 発売中
    チケット販売: チケットぴあ / ローチケ / イープラス
    ※お一人様4枚まで
    ※発券形態:紙と電子チケット併用
    ※個人情報取得:購入者のみ取得
    ※入場制限:未就学児入場不可、小学生以上チケット必要

    ◆ 新曲情報 ◆

    ニューシングル『青い太陽』
    2025年9月25日より、各種音楽配信プラットフォームより配信中。
    https://lnk.to/salasa_aoitaiyou

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