さくらサーカス @ 堺旧港エリア特設会場 2025/06/22 堺公演レポート「魅せる超絶パフォーマンスの源は家族の愛 笑顔の花咲くさくらサーカスへようこそ!」
- 2025/07/17 ● REPORT
大阪の堺旧港エリアに突如出現したピンクの桜のマークが目を引くサーカス小屋。周囲にはミニメリーゴーラウンドやふわふわトランポリン、できたばかりだというミニローラーコースターから団員による大車輪体験まで。愉快な音楽が鳴り、笑顔ではしゃぐ子どもたちの笑い声が聞こえてくる。笑顔の花を咲かせる大家族サーカス団、さくらサーカスが約2年ぶりに大阪に帰ってきたのだ。うだるような暑さとなった6月22日。この日最後の回となった16時半から約1時間半に渡って繰り広げられた公演の模様を徹底レポートする。

公演後に実施したインタビューはこちら!フジロックの話題を中心にたくさんお話いただいたので、ぜひこちらも読んでパレス・オブ・ワンダーに足を運びましょう!
フジロック・ファミリーと育むサーカス家族の絆 – さくらサーカスインタビュー
さくらサーカスは、2020年7月に和歌山県は日高郡印南町に誕生したサーカス団。ギネス世界記録を持つ綱渡りアーティストで、120年以上続くサーカス一家の4代目であるコロンビア出身のアラン・マルチネス団長を筆頭に、超絶足技「イカリオス」で2020年1月にサーカス界のアカデミー賞といわれるモンテカルロ国際サーカス大会において日本人初の金賞を受賞したマルチネス・ブラザーズなど、旗揚げ来各地で世界トップレベルのパフォーマンスを披露し続けてきた。さくらサーカスの最大の特徴は家族の暖かさを感じられること。アラン団長と妻で代表も務める小深田尚恵さん、その子どもたちを中心に、コロンビア、ロシア、アルゼンチン、メキシコ、日本の団員からなる総勢40名強の国境、人種を超えた大家族で構成されている。サーカス小屋の裏手に並ぶトレーラーを家として生活し、劇場の設営から受付、販売や裏方の運営まですべて自分たちの手で手掛けるという徹底したDIYっぷり。そして、家族経営ならではの世代交代を見せることもさくらサーカスの魅力的なパフォーマンスと言えるだろう。ひとつひとつの公演が団員にとって大切な家族の思い出の1ページなのだ。
非日常体験を創るサーカス一家の日常 さくらサーカス グランドオープン!
https://fujirockers.org/?p=15663
フジロックには2010年に初出演後、度々登場して非日常なフェスティバル感を演出してきた。2023年から連続出演を果たしている。昨年は前夜祭のパフォーマンスに加え、深夜のパレス・オブ・ワンダーのパレス・アリーナで特大セットで空中ブランコや綱渡りをして場を大いに盛り上げた。今年も当然のごとく出演ラインナップに名を連ねている。団員みんなが毎年苗場に行くのを心底楽しみにしているというし、すっかりフジロック・ファミリーなさくらサーカスである。
MARTINEZ FAMILY(2018)
https://fujirockexpress.net/18/p_2312.html
SAKURA CIRCUS(2023)
https://fujirockexpress.net/23/p_2185.html
SAKURA CIRCUS(2024)
https://fujirockexpress.net/24/p_1327.html
南海電鉄の堺駅を降り、仲間と合流し水辺沿いを歩き会場を目指す。中世に海外貿易港として発展したロマンが残る堺旧港エリア。十三から移転した名ライヴハウスのFANDANGO前を過ぎ、GEZANが全感覚祭を繰り広げたという会場跡を見やり、あれこれ話しながら向かう道すがらも何とも楽しい。すると「SAKURA CIRCUS」のサインと会場周りにたくさんのピンクの旗がたなびいているのが見えてきた。装飾されたリムジンやスポーツカーといったかっこいい車がずらっと並び、子どもたちを楽しませる仕掛けが満載のアクティビティの数々、実物を目の前にして想像していた以上の大きさに圧倒されてしまうサーカステント。入場口へと流れる赤いゴージャスなカーペットが未知の異世界への通路のようで並んでいるだけで問答無用に高揚させられてしまう。
中はトレードマークの大きな桜がいくつもほどこされ、高さは10メートルは越えているであろうピンクの大型円形テントは何とも壮観。中央のステージを囲むように客席が設けられていて、600名程度が入場可能とのことだ。我々が通された席はステージ正面のBOX席。ステージとの距離の近さに、開演前にもかかわらず興奮伴う緊張感に包まれてしまった。
いよいよ開演。アーティストたちが次々に姿を見せ、手を叩いて場に一体感を生み出していく。のっけから名演目の大車輪が登場。回転する直径約2mの2つの車輪を自由自在に転がしながら2人のアーティストが輪の内側・外側に出入りしたり前転や後転とアクロバティックに軽々と優雅に宙を舞う。極め付きは黒い頭巾をかぶり目隠し状態で車輪に飛び乗る危険極まりないパフォーマンスだ。アーティストのアラン・ダビッドが、頭巾をかぶりながら十字架を切り挑むその様。危険と隣り合わせのぎりぎりのところで魅せる究極の身体表現に早くも撃ち抜かれてしまった。
さくらサーカス名物ピエロのハンスが登場。ド派手なメイクにカラフルなハート満載のスーツをまとってベタな演出をもって笑いを誘い観客を巻き込んで会場をひとつにしていく。息を呑む圧倒的なパフォーマンスの間に挟まれるピエロの時間。サーカスという異世界に観客を取り残さない重要な案内人がピエロであるとよく分かった。
お次はエアリアル・ストラップのソロパフォーマンス。2本の紐を駆使し柔軟な身体で縦横無尽な動きを披露するのだ。ステージ背面に映し出されるアーティストの影も美しい。紐を回転させ、我々のすぐ頭上上空で回転し華麗に踊っている。風を切る音が生々しく聞こえてくるこの近さは本当にすごい。紐の先を口にくわえて高速回転するパフォーマンスも圧巻だった。
幼稚園から小学校にかけての体育の時間に馴染み深いフラフープだが、異次元の演技に魅せられっぱなしだった。手足のみならず身体全身でフープを軽やかに回転させる。どんどん増やしていって最後は44本、重さは12kgになるというフープをあの華奢な身体でどうやったらあんなに自由自在に操ることができるのだろう。
3つからはじまりどんどん球数を増やしていくジャグリング。敢えて小さなステージ上で驚異的なスピードで弾ませテクニカルに玉を操る。ステージの電気を落とし、蛍光色に光る玉の動きを幻想的に演出したのも特筆しておきたい。またもやハンスが登場し、お客にりんごを渡し、口にくわえたフォークに刺さるように投げるよう促すのだ。当然何度も失敗してしまうことになるわけだが、それらすべてが場を笑顔でひとつにするための演出。掛け声とともに客席側に登場した太鼓を手にした3人組。太鼓を叩き、タップダンスを繰り出し、2本の紐を高速で振り回しリズムを取り音を奏でる。サーカスの演目の多様さに更にのめり込んだ瞬間だった。
ショー前半のハイライトはこれで決まりだろう。男女二人が繰り広げるアクロバットローラースケート。Mcfly版のクイーンカバー“Don’t Stop Me Know”のビートに乗って小さな円形ステージ上でアイススケートショーのごとく、いや遥かに超えたパフォーマンスだ。男性アーティストの首にかけられた紐を女性アーティストが口にくわえて高速回転するなど、目の前で何が行われているのか分からなくなるほど度を超えている。アーティストの緊張感、熱気がびしびしと伝わってくる。一体どれほどの鍛錬をつんできたのか。立て続けの限界を超えてくるパフォーマンスを目の当たりにして打ち震えてしまった。
ここで小休止のインターミッション。ステージ上で団員たちとの楽しい記念撮影、リストバンドなどグッズ販売に群がる親子に、圧倒的なパフォーマンスを目の当たりにした観客同士での興奮したやり取りがそこかしこで盛り上がっている。この時間こそが今日この日のたった一度切りのかけがえのないまたとない機会なのだ。
後半開演前になると、見上げるテントの天井には踊っているダンサーや「Welcome」といったネオン動画が映し出される。音と視覚効果の演出も素晴らしい。サーカスは、舞台上の卓越したパフォーマンスだけでなく、ステージ全体で表現される音響や照明、構成を含む総合芸術なのだと気づかされる。
後半一発目の演目は、世界記録を保持するマルチネス・ファミリーによる綱渡り。1.8cmほどの細さの綱を行き来するこのひやひやのスリル感はどうだ。長い棒を手にバランスを保ちながら進む自転車、綱の上に設置された椅子に絶妙に乗りこなしたり、縄跳びを繰り広げたり…。常人離れしたバランス感覚と集中力。3人組手のパフォーマンスを目撃するに、やはり家族だからこその絶対的な愛と信頼で支え合っているのだと見て取れた。
これまた凄いのが登場した。父から受け継いだローラーボーラーというパフォーマンスを繰り出すアーティスト、デミトリー。今さくらサーカスでこれができるアーティストは彼だけなのだそうだ。筒状のオブジェの上に板を設置して逆立ちをしたり、滑ったり、飛び上がったり。もはやバランス感覚がどうのこうのレベルではない。ひとつひとつの技が成功した時にはただただ拍手を送るしかなかった。
第2部初の登場となったハンス。黒に縦横の白いラインが入るシックな上下できめている。玉やクラブを使ったオーソドックスなジャグリングかと思いきや口からピンポン玉を出したり、何度もブーメランのごとくハットを投げては見事にキャッチ。確かな技術に裏打ちされたコミカルさなのだ。やはりハンスは一筋縄ではいかない。
さくらサーカスの真骨頂、イカリオスが遂に披露された。アラン・ダビッドの足の上をアラタが目にも止まらぬ速さで宙返りを繰り返し続ける圧巻の足技。テーマ曲である2チェロズの“Kagemusha”とともに華麗に、そして鮮やかに回転技を繰り出していく。ジャッキでかなりの高さまで上昇する高台がパフォーマンスを繰り出す度に揺れまくる。終始ハラハラさせられっぱなしだ。パフォーマンスをやり切った後の二人の親密なハイタッチや決めポーズ、そしてアラタの愛らしい投げキッス。完璧だ。
‟APT.”の掛け声とともにハンスが再び登場。観客と一緒に踊り倒してハイタッチをし、ステージに上げて目隠しをさせたりとやりたい放題に盛り上げまくる。サーカスはただ鑑賞するものではない。参加し一緒に創り上げる場なのだ。
いよいよ本公演最後の演目となった。6人の団員がほぼ天井間際という高さで披露する空中ブランコだ。思い切り勢いをつけてアクロバティックに宙返りしながら飛び出す手足を、がっちりキャッチするというとんでもない技を鮮やかに何度も成功させていく。その度に客席が大歓声に包まれる。そしてこの距離の近さ。音、団員の緊張感までダイレクトに伝わってくる。やはりBOX席で観るのを強く勧めたい。最後はそれぞれの団員が華麗にネットに落ちて来て、並んでにこやかに手を振りステージを後にした。
まさか、ここまで心が揺さぶられるとは。大家族の縁が生み出す感動の円。人が本来持っている能力や個性を磨き上げ、フルボリュームで表現する。約1時間半に渡る究極の身体表現あふれるエンターテインメントショーに魅せられっぱなしだった。目前に迫ったフジロックのショーも必見だが、やはり体験すべきは本公演。堺公演は11月3日まで。ぜひ本公演をその目で目撃してほしい。
Photo by エモトココロ
Text by 三浦孝文
さくらサーカス 堺公演 in 堺旧港エリア特設会場
2025/6/7 Sat. – 11/3 Mon.
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