認真戀愛”大港開唱”五秒前 ~台湾のロック・フェスに行きたいわん Vol.2~
- 2025/05/22 ● REPORT
*美食評論*
さて、大港開唱 Megaport Festival のフェス飯はというと、大港橋から「女神龍」のゲート付近まで1kmちかく続く岸壁沿い、駁二大義站から駁二蓬萊站までのライトレールの高架下、大港橋をわたって九號碼頭(9号埠頭)側にも飲食出店のテントが立ちならぶエリアがいつくつかあって、2日間ですべてをのぞいて見るのは無理なくらいに充実している。まぁ、ステージをまったく観ないなら可能かもしれないけれど。でも、基本的に1店舗は2メートル四方ほどのテント1張で2~3人のスタッフだけでこなしていて、見るからに美味しそうな人気店だと、注文して整理券をわたされ、できあがるまで1時間待ち、という場合も。
なので、手軽なものが現実的なのか、ホットドッグを供する店を多く見かけた。それでも各店舗こだわりの焼きたてのソーセージやバンズ、トッピングとそれだけ手間もかかるから、10~20分待ちは覚悟しておいたほうがいいかも。九號碼頭にある「美食市集(グルメ・マーケット)」にはテント2張ぶんのお店もあって、ある程度つくり置きできる日式の焼きそばやお好み焼きのお店が回転もよく人気のようだった。
でも、せっかくなので台湾らしいものを食べたい! とはいえゆっくり物色する時間もなく、ほぼ唯一食べたのが「美食市集」にある店の「刈包(グァバオ)」。もっちりした饅頭(マントウ)の皮のバンズに豚の角煮とパクチー、レタスのピクルスをはさんで、そこに香ばしいピーナッツ・パウダーがふりかかって…これが、めちゃくちゃ美味しかった! 角煮がほんのりと醤油と八角の味付けで、トロトロに煮込まれてほぼコラーゲン。八角もパクチーも苦手ではないけれど、濃すぎずクセなく上品な味。やっぱり整理券をわたされて15分ほど待ったのだけれど、店のお姉さんに「Could you call my number in English?」とたのむと快諾してくれた。
さらにコーヒーの美味しい台湾らしく、カフェ専門の出店もいくつもあって、「美食市集」で飲んだカフェオレのお店は台中市から来ていたらしく、今年もまたRock in Taichungに行けたらいいんだけど、と伝えると、スタッフの女の子が「ウェルカム!」と笑顔でこたえてくれた。駐車場にできた「美食市集」ではまんなかに木製パレットがいくつも置かれていて、そこに腰を下ろして憩えるし、岸壁のもやい杭や倉庫の裏などちょっと座れる場所には困らない。倉庫のなかにもレストランやカフェがあって、休憩ついでに食事や喫茶もできる。今回、折りたたみ椅子をもっていこうか迷ったのだが、埠頭の「南霸天」からからしばらく動かずにいるのなら、背もたれなしでもごく簡易的な椅子があってもよいかも。それ以外では大義公園の「MEGAFUN」を含めて、休憩できる場所はかなりある。
仮設トイレは「南霸天」の後方の一角や「女神龍」ほか会場内の各所に点在していたが、倉庫跡のモールや高雄流行音楽中心、「海龍王」のオーディトリウムのトイレが使用できて、おのずとステージ間の移動のついでに利用していたので、今回、仮設トイレは1度も使わなかった。高雄流行中心の4階から上はポップ・ミュージックの博物館になっていて、1階で別途チケットを購入すれば地元高雄出身のバンドやアーティストを中心にした展示を観ることができ、リストバンド提示で割引があるという。1階にはショップもあって、「打狗祭 Takao Rock」や「滅火器 Fire EX.」主催のフェスのグッズやアパレルなんかが購入できる。
夜は22時に大港開唱のトリが終わり、そこからMRTに乗ってホテルにも近い、というか通り1つ手前にある六合観光夜市へ。深夜まで営業している飲食店があまりないのか(行きたかった海鮮系のお店や居酒屋も21時まで)、メガポートから流れてきたお客さんの姿も多かった。港町ということで海の幸を期待していたけれど、六合観光夜市は台湾のわりとオーソドックスな料理の屋台がほとんど。注文票の置いてある店も少なくて、言葉が通じなければ指差しでの注文になる。初日の晩は牡蠣と魚皮のお粥とアサリの麺。高雄の昔ながらのお粥の魚皮は、、なんの魚なのか茶色いコリコリとしたコラーゲン質で、あまり馴染みのない食感で好みがわかれそう。帰りに空港で食べたスズキのような淡白な白身の虱目魚(サバヒー)のお粥も、高雄や台南の昔ながらの庶民の味だそうだ。
六合観光夜市では、生ビールのあてに一口蟹(ソフトシェル・クラブ)のフライもつまんだのだけれど、八角や花椒、シナモン、クローブなどの台湾独特のスパイスの五香紛(ウーシャンフェン)がかかっていて、ビールにぴったり! ほかにも塩胡椒やチリ・パウダーなどが注文できて、これが当たりだった。仲間がもの珍しさからいろんな種類を大量に買ってきて、食べきれなかったけれど。2日目は前述のとおりお腹がいっぱいで生ビールだけだったが、仲間は胡椒餅をたいらげていた。
ふだんは油ものを極力控えているので、3日目の朝もやはり胃もたれしたまま。地元の早餐屋さんも開店まえから行列だった美麗島站の出口にある有名な鶏肉飯のお店もあきらめて、ホテルで果物と野菜の朝食。せめてコーヒーは…と思って朝の8時に近所を散策したものの、月曜日だというのに駅近のカフェは開店する気配もない。高雄はコーヒー不毛の地か!? 結局、仲間とようやく路面店のカフェにたどり着いたのは20分以上、MRTの1駅ぶんを歩いたあと。でもそこがとてもいい雰囲気の店で、広末涼子がメイン・ヴィジュアルの大港開唱2025のポスターも飾られ、BGMには流線型と比屋定篤子が流れている。しっかりと焙煎されたコーヒーが美味しい。
帰りは「前金 Qianjin 站」からMRTに乗って、美麗島站で降り、今回のフェス旅のミッションの…えっと、いくつめだろう、タロ芋のスイーツを求めて出口すぐにある不二緻果(高雄不二家)へ。老舗洋菓子店のタロ芋のケーキとロールケーキが名物なのだが、日本語の堪能な店員さんに「買ってから1時間以内に冷蔵してください」と説明され、お土産にはあきらめて自分用にタロ芋のシュークリームを購入。ホテルの自室でさっそく食べたけれど、生クリームとタロ芋クリームはあっさりとした甘さとコクで、パイ生地もサクサク香ばしくて、めちゃくちゃ美味しかった。ぜひ、現地で堪能されたし。
さて、これでまだ未達のミッションは…そう、CDとレコードだ。帰国便は午後。お昼まえの1時間ちょっとの時間に、空港までの途中の「三多商圏 Sanduo Shopping District 站」で降り、生活感ただよう路地を歩いてたどり着いたのは、老人の店主が1人、AVアンプを半田で修理しているなかに中古LPが雑然と積まれたような店で、「謝謝」とそうそうに辞去して、百貨店ならCDショップくらいあるだろうと、駅前の交差点にそびえる「大遠百貨店」へ。17階の広大な「誠品書店」にCDとDVDをとりそろえた一角があり、おまけにレコードまで! 洋楽や邦楽の新旧譜やジャズやクラシックとならぶなか、『独立音樂』のコーナーで、日本ではなかなか入手しづらい台湾のインディーズ・バンドのCDとLPをここぞとばかりに購入し、難関だった最後のミッションも大収穫。帰国便のチェックイン・カウンターで、機内持ち込みの手荷物の重力超過で一悶着したけれど…。
最後に肝心のチケット購入方法。今年も一般発売の開始10分で完売したという大港開唱 Megaport Festival。発売日が例年1月なかばとけっこう直近。のんびり構えていると、あっというまに終わってた、なんてことになりそう。まずは「tixcraft」という台湾のプレイガイドに登録してアカウントをつくっておこう。ここから一般発売が買えるのだが、大港開唱の公式サポーター「大港人 MEGAPORTER」に登録すると一般発売の前日、「大港人+スポンサー」枠だと2日まえに買うことのできる先行購入権が得られる。おまけに、今年でいうと800NTD(当時のレートで3,900円弱)ほど割安になる。ただし、大港人枠は2日通し券のみで各曜日の1日券はなし。販売枚数にも限りがあるので、これで買えなかったら翌日の一般発売に賭けよう。
決済時に購入者の個人情報およびパスポート番号、また複数枚(1人4枚まで)購入の場合はパスポートに登録された各自の氏名(日本のパスポートの場合だとアルファベット表記)の入力が必要だ。激戦のチケット争奪戦に敗れたとしても、購入日から1週間以内で可能なキャンセルぶんの再販売があるので、1週間ちょっとはこまめにtixcraftのサイトをチェックしよう。また、台湾籍以外の海外向けに、旅行代理店「kkday」で大港開唱 Megaport Festival のチケット付き各種プランが購入できる。
無事、決済・購入できれば、引換コードと引換票番号がページ上に表示される。日本語を選択していれば、現地での発券方法が日本語で説明されるので、あとは台湾に到着してから、最寄りのセブンイレブンの端末機で説明に従って引換票を発券。それをカウンターにもっていき紙チケットを発券してもらう。紙チケットには登録した氏名が書かれているので、複数人の場合は名前をまちがえないように気をつけよう。あとは会場に行き、『手環兌換』と表示された場所でチケットとリストバンドを交換してもらえば、万事完了。
会場周辺のホテルは当然のように、一般発売の当日から翌日には即満室になり値段も高騰するのだが、これも本番当日に近づくほどキャンセルが出て値段も相場なりになるので(といっても、ふだんよりは割高だが)、複数の宿泊アプリを見くらべて、根気よくこまめにチェックしよう。MRTやライトレールで1~3駅以内の前金站、美麗島站、高雄85大楼や中央公園付近のエリアがホテルも多くて、会場にも通いやすいだろう。高雄国際空港へも台鉄・高雄駅へもアクセスもよい。
と、個人的な忘備録も兼ねてかなりの長文になってしまったけれど、これで大港開唱 Megaport Festivalの空気が伝われば。充実した盛り上がりをみせる台湾のインディーズ系の音楽や、もちろん食事もさることながら、なによりおおらか。それがいちばんの魅力かもしれない。
追記。帰国してから、地図アプリに「唱片」と繁体字で打ちこんでみたら、百貨店のすぐ近くにCD・レコード専門店があったみたい。おまけに会場から徒歩圏内にも。後悔先に立たず。これは…ぜひとも来年リベンジしたいわん!
〈了〉
Text & photo by ken.
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