東日本一帯を揺らした大地震から間もなく1ヶ月。いまだ高らかに復活の声をあげられないままの日本ですが、それでも街には春の訪れがちらほら現れ、そして、今年の夏もすぐなんだなと気付く自分がいます。
5月28日、フェスティバルシーズンの先陣を切る形で、茨城県笠間市の笠間芸術の森公園を舞台に「センス・オブ・ワンダー」が開催されます。おそらく被災地発としても一番最初の「復興の声」となる野外フェスティバル。その主催者である株式会社OBNの小林宏明さんにお話を伺いました。
センス・オブ・ワンダー(以下SOW)のはじまりは2007年。以後、国内アーティストを中心にユニークなラインナップを揃え、音楽だけでなくアートパフォーマンスにも力を入れるなど、国内フェスの中でも特色をもったフェスティバルとして認知している方も多いと思います。2010年からはアクセス面の改善やアートとの親和性を背景に、茨城県笠間市に舞台を移動。イベントとしてのエッセンスはそのままに、緑の斜面を客席に迎えたステージや広大なスペースが加わり、今年の開催が待たれていました。
■ラジオを聴いて、泣いた。――それを聞いて開催しようと思いました
「3月11日は東京にいました。それから1週間くらいは笠間市の人達と連絡が取れませんでしたね」
笠間市、震度6強。焼き物で有名なその町の被害は甚大でした。歴史ある焼き窯は壊れ、倒壊により営業停止を余儀なくされたお店やホテルも出たそうです。茨城だけでなく都内でも近年になかった大きな揺れを体験し、小林さん自身、開催を真剣に悩んだそうです。
「それでも最終的には、やろうということになりました。SOWは笠間や水戸の若い人達も手伝ってくれているんですけど、そういう地元の人たちの協力と、彼らから『こういう時だからこそ』と言ってもらえたんです。それなら、ということで開催することにしました」
「笠間では震災から1週間近く電気が通らなかったそうで、初めて電気が復旧してラジオから音楽が流れたとき、自然と涙が出たそうです。そんな話を何人も地元の方から聞きました。だったらやっぱり音楽を、それも野外で音楽を味わうことで、今回の傷を少しでも癒してほしいですし、たぶんそれが僕らにできることなんじゃないかなと思っています。SOWは滅多なことがない限りは開催する方向でいきます」
こうした想いもあり、開催の方向に進むSOW。4月7日に最終ラインナップの発表となり、20組以上のアーティストが出揃いました。また、震災後不通となっていましたJR水戸線も運行再開となり、アクセスも回復したといっていいでしょう。着々と準備が進められています。
■2011年という、特別なフェスティバルを迎える
さてここでフェスティバルの中身についてもご紹介。
昨年はボアダムスが「ドラム神輿」という驚異的パフォーマンスが“神話”として知られるところですが、今年もダチャンボやイースタンユースといった面々が盛り上げてくれそうであったり、ジム・オルーク等やたらとメンバーが豪華なカヒミ・カリィ、活動21周年を迎えたトーキョーナンバーワンソウルセットなど幅広く楽しませてくれそうです(正体不明の2人組、ディープ・カヴァーというグループはYouTube見たらコメント欄でネタバレしていたけどそこはご愛嬌ですかね)。
音楽以外に目を向けても、奇天烈パフォーマンスユニットの鉄割アルバトロスケットからキャンドル・ジュン氏によるキャンドル装飾と、まさに色とりどりのアートが会場のいたるところで待ち構えている模様です。キャンプインや地元割りチケットなど新たな試みにもトライしている今年のSOW。小林さんのオススメは?
「んーーー、どのミュージシャンが、どのアーティストが、という点というよりもフェス全体が、ですかね。地元の方の盛り上げていこう、復興していこうという気持ちと、それに対して僕らの力を出していこうという、お互いのパワーがあいまったフェス。被災地の入り口で開催される野外フェスとしてはこれが初めてで、そしてこれが最初で最後になるでしょうから、そういう意味で普段では味わえないエネルギーを感じられると思います。ぜひ東京や関東、他地方の方も来ていただいて、一緒になって元気になれるイベントにしていけたら嬉しいです」
出演アーティストの一組、オーバーグラウンド・アコースティック・アンダーグラウンドのメンバーは地元出身ですし、今回は地元割チケットも販売しており、地域性が強い特別なフェスとなりそうです。何かが生まれる可能性は大いに有り得ます。日頃の節電や自粛ムードで貯めこんだ元気を一気解放するとともに、ぜひ笠間に元気を持ち込み、僕らなりのサポートをしようじゃありませんか!
フジロッカーズオルグでは、これからもこうした形で日本のフェスティバルを取り上げ、サポートするという形での支援を行っていきたいと思います!フェスティバルシーズンは、もうすぐだ!
■Sense of Wonder 2011 〜ゆめからこぼれだした音のしずく〜
http://s-o-w.jp/
■出演者
(音楽)
chaplin production(And Vice Versa、鳥と麺と、mal da kid)
CINEMA dub MONKS
Dachambo
DEEP COVER
eastern youth
mama!milk
MIDICRONICA×Fragment
OOIOO
Open Reel Ensemble
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
PICIDAE
Predawn
SKAIDI
salyu × salyu
sleepy.ab
u-zhaan × ???
TOKYO No.1 SOUL SET
カヒミ・カリィ
児玉奈央
ロックブッダ
(パフォーマンス)
いしいしんじ
鉄割アルバトロスケット
テリエ・イースニングセット×三隅舞華
(インスタレーション)
Candle JUNE
D. H. Rosen
Masaaki Kawaguchi
MIRRORBOWLER
金谷裕子
風の可視化アート Project
柴崎辰規
須知大
八田綾子
細野ひで晃
山口香織
吉村由美
■開催日
2011/5/28 土曜日
■開場 / 開演
9:00 / 10:00
■終演 / 閉場
24:00 / 25:00
■開催地
茨城県笠間市笠間芸術の森公園
■チケット
* 前売チケット:¥8,000
* 当日券:¥10,000
* 地元割:¥5,500
* 地元割当日券:¥8,500
* テント券:¥2,000
* 駐車場:¥300
text by ryoji
※記事中の写真はセンス・オブ・ワンダー2010のものです。