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A SEED JAPANのメンバーが語る「去年のフジはどうだった?」

 フジロックで、ごみ分別の案内をするボランティア団体であるA SEED JAPAN(ASJ)に話を伺った。フジロックが終わると「会場にごみが落ちるようになった」「来ている人のマナーが悪くなった」といわれることがある。一方で、「フジロックは世界一クリーンなフェスティバル」といわれることもある。一体どっちなんだ!? という疑問が芽生え、ならば一番現場に近い人に話を聞くのがいいと思いASJを訪ねた。

 話してくれたのは、お馴染み、ASJ・ごみゼロナビゲーション統括責任者である羽仁カンタさんと、だいすけさん、トキコさん、よしひろさんである。それぞれフジロックに活動で参加した回数も違う4人から意見が聞けた。

■世界一クリーンなフェスティバル?

 まずは、ASJの人たちがステージ・アピールの時に口にする「世界一クリーンなフェスティバル」というのは実際どうなのだろうか? 

「日本一クリーンなフェスといえばアラバキ・ロック・フェスティバルで、モッシュピットにごみが落ちてない。くるりがやっている京都音楽博覧会もクリーン。だけど、フジロックは規模が違うよね。あの広い空間の中であれだけのことができているのは、フジロックだけ。クリーンなことも大切だけど、なによりもお客さんが自分でフェスを創ろうっていう意識がフジロックの醍醐味だね」(羽仁さん)

「あれだけ海外のアーティストを集めたフェスとしてはクリーン。オーストラリアのフェスにも行ったら散々な状況だけど、世界の基準からすればフジロックは世界一クリーンだと思う」(だいすけさん)

「夜のオアシスエリアはみんなノリがいい。ごみの分別に嫌な顔をする人は少ない。マナーはあると思う」(トキコさん)

「ごみ分別を嫌な顔せずに、自発的にやってくれる人が多い。他のフェスだと嫌がる人もいる」(よしひろさん)

■ステージ・アピール

 ASJというとその日のトリが終わって、ごみ分別を呼びかけるステージ・アピールというイメージを持っているかもしれない。しかし、意外にもステージ終了後のステージ・アピールをおこなっていなかったときがあった(昼間のステージ・アピールは継続しておこなっている)。再びステージ・アピールをおこなうようになったのはなぜだろうか? 

「ここ3年ぐらい各日終了後にステージ・アピールをやっている。雨のせいもあるだろうけど、ブルーシートが置き去りになって、ものすごく汚くなったときがあったので、ステージ・アピールをするのと同時に、ナイト班がオアシスだけで活動していたのを、メンバーを増やしグリーン・ステージでも活動して、各ごみ箱に人がいるようにした。さらに、照明を工夫してもらって会場を明るくしてごみがわかるようになった。これらの複合効果でよくなった」(羽仁さん)

「ステージアピールは、ホワイト・ステージでもやってるし、レッド・マーキーもやっている。だけど、レッド・マーキーはなかなかきれいにならない。21時と朝の5時の2回アピールやるけど、21時ころは盛り上がっているし、朝5時はみんなフラフラで協力が得られにくい。

 フィールド・オブ・ヘヴンやオレンジコートはきれいだから、ステージ・アピールする必要がない。初日のオールナイト・フジのあとのオレンジは汚いけど。オールナイト・フジのあとだけなんかやってもいいかもね。オールナイト・フジのとき、ナイトチームは一回見回りはするけど、(オレンジコート方面に)拠点がないから常駐することはできない。もし、常駐することにしたら仕組みを変えないと。ボランティアがいなくても、ブライアン(・バートンルイス、オールナイト・フジのオーガナイザー)が、なんかアピールしてくれれば」(羽仁さん)

■2010年のフジロック

 2010年は雨が激しいときが長かった。そうした天候は会場のごみ事情に影響を与えるのだろうか? 

「ノースフェイスから良い雨具が提供されたからとても助かった」(羽仁さん)

「装備がしっかりしていれば、別に雨でも問題なく、目だって倒れた人はいない。雨と装備のおかげでダニに刺された人が減った。ダニに刺される人は毎年5,6人いる」(だいすけさん)

「ナイト班は雨で大変だったけど、つらい分、交代で休憩取ったり、班同士で協力したり、すごいチームワークが強くなった」(トキコさん)

「雨が多いとペットボトルを飲む人が減るので、ペットボトルが集まらない。ホワイト・ステージではペットボトルが集まらなかったので、ecoアクション・キャンペーンを中断した。グリーン・ステージでは何とかかき集めて細々とやっていた。雨が降ると、体力が減るから食べ物が売れるので、割り箸が増えるけど、紙コップやペットボトルは減る。今年、ecoアクション・キャンペーンに参加したのは2602人。いつも3000人くらい。キャンペーンに参加した人は、アラバキやライジングやサマソニと比べると年齢層は高い」(羽仁さん)

■ボランティア像

 ボランティアに参加する人たちはどのような人だろうか?

「ボランティアは、なるべくリピーターが3割になるように抑えている。作業のためにやっているのではないし、無償の労働力としてやっているわけではない。NGOの主張としてやっている。アルバイトとは違うので、同じ人がやればいいという発想はない。今のメンバーとは関係ないけど、過去にトラブルを起こしたこともある」(羽仁さん)

「慣れた人が多いと感動が薄れてしまう。むしろ新しい人たちに活動のすばらしさを伝えたい。ボランティアは、参加動機を重視、信頼できるかどうか」(よしひろさん)

「当日になってキャンセルすると困るので、過去にキャンセルした人はデータでわかるようにしている。チケット代が高いからとか、アーティストを観たいから、という人は取らない。

 2009年のフジロックはボランティアが足りなかった。不況でボランティア活動する人が減ったからかもしれないし、若者の人口が減ったからからかもしれない。以前は敷居をあげるために紙(郵便など)でしか応募できなかったけど、それだと集まりも悪くなったので、今年からはwebと『フェスティバル・ボランティアガイドブック』(ASJ発行のフリーペーパー)で告知して、webで応募できるようにしたら応募者が増えた」(羽仁さん)

■まとめ

「思い返すとフジロックは一番楽しいんですね。改めて面白いなと思ったことがあって、ピラミッドガーデンへ23時ころに行ったんですが、お客さんは50人くらいしかいない。一日3万人来るようなフェスで、新しくステージ作るなら、当然お客さんに来てほしいっていうのが普通だけど、たくさんお客さんが来るというふうに作ってなかった。来たい人は来ればいいし、自分たちは好きなことをやるよ、っていうことを打ち出したなと感じた」(だいすけさん)

「ASJのスタッフでも、ミスチルが好きでap bankから参加する人がいるけど、フジロックが終わるとフジロックがいいってなる。音楽も自分の好きなのを選べよ、というスタンスでフジはapより自由。アラバキもタイコクラブも大好きだし、2年位前から地元のNGOを紹介したり頑張っているけど、フジロックは会場が圧倒的に面白い。98年のフジからみても遊びが増えて30倍くらいになった。

 他のフェスはなぜか『食べ物屋さんと飲み物屋さんとステージ』になってしまう。食べ物を提供するのは主催者の責任だけど、遊ぶところを作って、あれもこれもやろうというのは、フジの他ではライジングくらいだよね。地方のフェスはそういう発想が少ない」(羽仁さん)

「ボランティアの僕たちがいるから会場が盛り上がる。自分たちが楽しければ、お客さんに伝わるし、フジロックは踊りながら分別したり、こちらから楽しませなくてはいけないと思う」(よしひろさん)

「グッズがものすごく出回ってきて、お客さんは知識とグッズに走っている傾向がある。いい装備が買えないとフジには行けないのかというところがある。応用力が試されるのに。商業的なイベントだから仕方ないけど、身の回りにあるもので工夫したりという、チャレンジ精神、冒険心が減っているとは思う。

 ボランティアは以前やんちゃな人が多かった。環境問題が一般化したので、まじめな人が増えたかな。老人ホームに訪問するというような福祉のボランティアなら、(日本で)何万人、何十万人っているけど、野外フェスのボランティアだと2500人くらい。野外で、ごみ問題の、ボランティア活動をするなんて間口がとても狭い。でも、フジだからね。やっぱりフジって感じの人が集まる」(羽仁さん)

text by nob

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