轟音に包まれる夜再び ── マイブラ8年ぶりの来日公演は新たな伝説となるか
- 2026/01/13 ● COLUMN

イギリスの伝説的バンド、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(マイブラ)。現時点での最新作にして、待望の大復活作となった『m b v』のリリース直後のジャパンツアーから早13年、2018年に開催された『SONIC MANIA』と豊洲ピット公演からも約8年が経とうとしている。そんな中、昨年4月に待望のジャパンツアーが発表され、東京公演と大阪公演は追加公演も含め、4公演全てソールドアウト!
彼らのライブはもちろん「聴くもの」であり、「観るもの」でもあるが、それ以上に「体験すること」が一番重要だと思っている。「マイブラ体験」それは唯一無二。美しいメロディと轟音サウンドという凄まじいコントラストから生まれる体験は、観ている自分の身体が壊れてしまうんじゃないかと思ってしまうくらいハードなものではあるが、あの感覚は一度味わったら絶対に忘れることはないだろう。
このコラムでは、彼らが出演した2008年と2013年のフジロックと、『m b v』ツアーのキックオフ間もなくして行われた新木場スタジオコーストでのライブを振り返っていきたいと思う。
【フジロック’08】初のヘッドライナーを飾ったそのステージは「伝説」となった

Photo by Izumi Kumazawa
ライブで全身があんなにも “物理的に震えた” 感覚は初めてだった。当時ライブを見るに際して、彼らの曲を音源で聴いていたわけだが、「ライブはすごいことになる」という予感はあったものの、実際はその予感・予想を遥かに超えたものだった。
約10年もの間、解散状態にあったバンドが奇跡の再結成を果たし、初のフジロック出演をヘッドライナーとして出演した2008年。この時のステージを一言で言えば「伝説」。苗場の夜空に響くホワイトノイズとも称される轟音は、屋外にも関わらず、その場の空気を、そしてライブを観ていたフジロッカーズを震撼させた。
圧巻だったのは、ライブのクライマックスを飾った名曲 “You Made Me Realise”だ。曲も終盤にさしかかり寂しさを感じ始めたところからが、マイブラの真骨頂だった。10分以上にわたり同一音の轟音を鳴らし続ける通称「ホロコースト・セクション」を披露。明らかに疲労が残る中で浴びる轟音は、正直に言って肉体的には過酷だった。それを凌駕する不思議な恍惚感に包まれ、いつしか「終わってほしくない」と自然に願うようになっていた。天国か地獄か、あのいつ終わるかも分からない轟音を浴び続ける体験(実際20分は浴びていた)こそがこの日のライブを「伝説」として語り継がせる所以だろう。
【フジロック’13】トライ&エラーの先に見えたマイブラの新たな煌めき

2回目の出演となった2013年は、22年ぶりの新作『m b v』を引っ提げてのステージだった。この年は夕方の時間帯の出演で、彼らの象徴でもあるホワイトノイズがグリーン・ステージに響き渡るのかに注目が集まったのだが、残念ながら、彼らのステージは決して素晴らしいとは言えないものだった。
ただ、それはあくまでも「my bloody valentine」という既存の固定観念を持って観た場合の話で、新作『m b v』に見られた様々な新しい試みを取り入れたライブと捉えたら、見え方は全く変わってきたのだ。過去の栄光を再生産するのではなく再構築する、そんなケヴィンのアーティスティックな面が前面に押し出された『m b v』。その世界観を既存のマイブラの世界観に溶け込ませつつも前進させる。しかし、それは決して容易いことではなかった。実際ライブ中も明らかにグダっている場面も見られたし、ケヴィンの苛立ちが表情に現れることもあった。
しかし、その演奏の中に煌めくものがあったのも確かである。その極めつけが、ライブ終盤に披露された新曲“Wonder 2”だった。リズム隊までもがギターを手に取り、全員のギターによって作られる轟音は、ウォール・オブ・サウンドの轟音進化系とも言えるもの。それはただただ圧巻であり、間違いなくこの日のクライマックスだった。
大復活作『m b v』を引っ提げたジャパンツアーから確かに感じたこと
フジロック’13のステージに先立つこと5ヶ月前。マイブラは『m b v』のリリースからわずか数日というタイミングでジャパンツアーを行っていた。筆者が行った新木場スタジオコーストのフロアは、ファンの期待と緊張、そして言葉にはし難い不思議な不安感が入り混じった異様な熱気に包まれていた。加えて、フジロックは屋外だったが、今回はライブハウスである。反響しまくる轟音を浴びたら自分は一体どうなってしまうのか、そんな変な期待感も含まれていたのは間違いない。
そんなコーストでのライブで新譜から披露されたのは ”New You” 1曲のみだったものの、ライブハウスでしか味わえない轟音の洗礼と終演後の恍惚感という、最高の体験を観客にもたらしてくれた。そして、それはやはりフジロックとは全く質の違うものだった。会場が屋外と屋内というの違いはあったものの、それ以上に印象的だったのは、この日新譜から唯一披露された新曲 “New You”から漂う『m b v』の空気感。それがライブ全体を通して、薄い霧のように新鮮な違和感をセットリストにまとわせていたからだ。
※こちらは2018年8月豊洲ピット公演の動画です。
ちなみに、このツアー中、来場者全員に「耳栓」が無料配布されていた。要するに「マイブラの轟音から鼓膜」を守るという意味で配られたのは明らかだが、轟音を(聴覚も含め)浴びにきているのに耳を守ってくれという、その矛盾に思わず笑ってしまったのを今でも覚えている。
このタイミングでのツアーは偶然か必然か──
『Loveless』が今年で発売35周年を迎え、『m b v』のリリースからも13年となる2026年。今回の来日公演が2月というのも、偶然か、それとも運命的な巡り合わせか。この絶好のタイミングでのライブが、既存のマイブラのイメージを踏襲し留まったものになるとは到底思えない。加えて「現状維持」の言葉とは縁遠い男ケヴィン・シールズのことである。きっと何かしらの “仕掛け” があることを期待したいところだ。それが具体的に「何がどうなるか」は正直わからない。『Loveless』の更新なのか、『m b v』の真価の発揮なのか、もしかしたら新曲披露もあるかもしれない。
とにかく期待が尽きない今回の来日公演には、きっと新たな「マイブラ体験」が待ち受けているに違いない。
Text by 若林修平
公演情報
my bloody valentine JAPAN TOUR 2026
2026/2/3(火) 大阪 なんばHatch SOLDOUT
2026/2/4(水) 大阪 Zepp Namba SOLDOUT
2026/2/6(金) 東京 東京ガーデンシアター SOLDOUT
2026/2/9(月) 東京 東京ガーデンシアター SOLDOUT
[OPEN/START]
18:00/19:00
▼本公演特設サイト
https://smash-jpn.com/mbv2026/




