• 【朝霧JAM’25総括vol.1】自然と戯れながら奥深い魅力をゆったり満喫 – 朝霧JAM’25のんびり滞在記

    Photo by Ryota Mori

    今年も楽しかった朝霧JAM。思い返しても夢の中にいたような体験だったオーバーナイトも含めた3日間は、あっという間だけどとっても濃厚で、あくせく準備をしていたのが遠い昔のように感じられたほどでした。富士山はあまり見えませんでしたが、ドラマチックな天候のマジックがあって、朝霧JAMのさまざまな魅力が感じられたとてもいい週末でしたね。

    フジロッカーズ・オルグでは何人かのライターそれぞれの視点で振り返りの記事を書いていきますが、まずはこちらをひとつ。ライブも程よく楽しみながら、キャンプを中心にゆったりと過ごした滞在記をどうぞ。

    ワクワク溢れる土曜日の昼下がり

    大阪からの新幹線→シャトルバスで、お昼くらいに到着した朝霧高原。初参加の前回は一人でテントを張っていましたが、今年はフジロッカーズ・オルグの取材チームの拠点(通称オルグ村)でお世話になることにしました。気心の知れた面々と一緒だと、面倒な設営も楽しいですね。

    レインボー・ステージのYOGEE NEW WAVESの賑わいを遠くに感じつつ、ゆったり目に設営を終えてカーニバル・スターにふらりと向かうと、我らのボス、DJ HANA-Gこと花房浩一(花さん)が気ままにヴァイナルをスピン。再会の挨拶がそこかしこであって、これから始まるひとときへの心地のいい期待感がただよういい時間でした。

    ちなみに拠点にしたサイトMは、テントのあたりからだとレインボー・ステージ、少し歩くとカーニバル・スター、もう少し歩くとムーンシャイン・ステージの音が聞こえる立地で、程よく混ざって移り変わる遠くのサウンドも、さりげなくキャンプを彩ってくれました。

    DJ HANA-G(Photo by エモトココロ)

    そんなこんなで、そろそろメインステージの方へ。ムーンシャイン・ステージの開幕でやたらジャムいサウンドチェックをしていたグソクムズは、なんとか雨は降らずにたもっている曇り空に、染み入るような歌心を存分に聞かせてくれました。ゆったりと聴き入りながらマーケットをふらりと見たり仲間たちと乾杯したりして、レインボー・ステージの方へ向かってみましょう。

    グソクムズ(Photo by エモトココロ)

    Aサイトのテントの並びが壮観なレインボー・ステージに到着すると、今回特に楽しみにしていたアンジー・マクマホンのライブが始まりました。ゆっくりと深呼吸をして、まずはこの場の空気を身体に取り入れる様子が印象的なアンジー。『メダリスト』のいのりさんの初海外遠征の時みたいに、とか言って通じるのかよくわからないですが、特別な時間が始まるような清廉なムードから、ジリジリと内なる力が湧き上がってくるようなライブ運びが印象的です。

    演奏の間や静かなところをとても大切にしていて、コミカルに左足を上げたりしながら荒々しい演奏に移行する流れもとってもナチュラル。どんな心象にも無理なく馴染む、柔らかく慈しみ深い空気がレインボー・ステージを包みます。2年前ここで観たKITTY, DAISY & LEWISの姿も思い出す無骨なロックンロールのスタイルと、インディーフォークの憂いのトーンがちょうどよく溶け合っていて、先鋭的な面も感じさせつつ、ほんわかふわふわした気持ちになるのも彼女の持ち味。人々と木々たち、そして犬たちが戯れるこの光景をとても気に入ってる様子で、ここに居合わせた幸福をみんなで祝うようなハートウォーミングな時間が流れていきました。

    ANGIE McMAHON(Photo by 堅田ひとみ)

    それからバックステージに招いてもらいアンジーのインタビューに編集者として同行。はい、役得ですみませんが、彼女はとてもリラックスした様子でにこやかに話してくれました。このインタビューの様子やもう少し詳しいライブレポートは「我こそが!」と買って出てくれたインタビュアーに譲りますが、パーソナルな心情の話に深く共感して、ハグを交わす二人の姿を温かい気持ちで見守っていました。音楽に救われる部分がある。その一点は僕らもアンジーもまったく一緒なんだなと、気持ちを通わせることのできた時間でした。インタビュー記事もお楽しみに!

    自然の悪戯もドラマチックに映える土曜日の夜

    その後は少しバックステージで談笑しつつ、竹原ピストルの演奏を聞いていたのですが、観ていなくても明らかに伝わってくる彼の気迫と聴衆の熱量。フォトグラファーの写真にもあらわれるその気概を共有したレインボー・ステージは、さぞかしいい光景だったことでしょう。暗くなる時間のメインステージを彼に任せる、タイムテーブルに込めた哲学もひしひしと感じましたね。

    竹原ピストル(Photo by エモトココロ)

    日も暮れて、ムーンシャイン・ステージに戻ってからのFULLHOUSEがつくりあげる光景は、僕の中でとても象徴的なものでした。前方に詰めかけた人は奔放に踊りながら、DJを観るでもなく周りの仲間とはしゃぎあっていて、後ろの方では座って眺めていたり、中には本を読んでいる人もいたりと、それぞれの憩いの時間が流れています。そこに楽しそうに歩きながら手を振り上げる人もいたり、知ってる曲なんかないだろうにちびっ子たちも無邪気に踊っていたり、気持ちのいいバイブスがじわじわ伝播していくこの感じがたまらない。

    BOILER ROOMのような卓を囲むスタイルで、ステージ上のクルーの面々も気ままに踊ってるのも一層いい雰囲気。ビートを軸にしながら綿密につなぎながらも、「そうきたか!なら俺はこうだ!」みたいな、B2Bのグラデーションとバラエティを楽しむ姿が輝いていました。一人として同じように過ごしていないのに、フィールド全体の不思議な調和を感じたこの時間は、僕がクラブやレイヴを愛している理由、朝霧JAMが大好きな理由が全部詰まった最高のパーティーでした。

    FULLHOUSE(Photo by エモトココロ)

    ちょっとだけハイエイタス・カイヨーテを観に行ってから、再びムーンシャインに戻ってアンソニー・ネイプルズ。トライバルなビートを交えつつスケールの大きなサウンドを展開する中でも、やはり無理なく自然と身体が動くのがトップDJの空間コーディネート。「僕らはどっか行きたいだけ」って感じのうわついた気分を、さりげなくもしっかりと捉えてくれるんですよ。

    ちなみに喫煙所にも少し触れておきたくて、フェスやアウトドア界隈では愛好者も多いアメリカン・スピリットが提供するブースは、ちょうどよくお酒などを置けるところもあって、さながら立ち飲み屋さんみたいな居心地に。遭遇した取材スタッフと4本くらい煙草を吸いながらだらだら談笑しつつ(混んでる時はさっさと出ようね)、ここからでもほぼ遜色なく聞こえるアンソニーのプレイを、聴くでもなく浴びるのもまたいい体験でした。

    そこそこ時間が経って外に出てみると、もやがかかった幻想的な景色になっていたのには思わず二人で声を上げてしまったもので、これもまたここにしかない瞬間だなって思いましたね。

    ANTHONY NAPLES(Photo by 堅田ひとみ)

    Photo by HARA MASAMI(HAMA)

    そしておまちかねのキャンプの時間。持ち寄ったお酒やおつまみを分けあったり、どうでもいい話をしたりしながらいい感じにふけていく夜。遅れてきた後輩のテント設営を先輩ヅラしながら手伝ったりもしましたが、これも花さんをはじめとした先輩から学んできたものだし、こうやって伝えていけるのもキャンプの醍醐味なのかもなって思ったり。次は自分で張りながら後輩達にも伝えてあげてね!

    夜には満点の星空が出迎えてくれて、先ほどのもやがかかった光景も含めて、自然のロマンチックな移り変わりをみんなで楽しみました。終始快晴で常に富士山が見えていた前回とは打って変わっての体験でしたが、1stからより深みを増した2ndアルバムを聴くみたいに、今年の朝霧JAMはさまざまな素敵な表情を見せてくれました。

    しかしそこそこ酔っていたこともあって、この夜に何を話したのかあまり覚えていない(笑)。でもなんか楽しかった感覚だけは残ってる。それがキャンプのいい夜ってことでまた明日。

    Photo by 堅田ひとみ

     

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