フー・ファイターズとフジロック 紡がれた深い縁と絆
- 2025/09/21 ● COLUMN
デイヴ・グロール率いるフー・ファイターズ(以下フーファイ)がいよいよ帰還する。2023年のフジロック以来、単独公演にいたっては17年ぶりとなる悲願の来日だ。新ドラマーのイラン・ルービンを迎え、10月からの日本を含むアジアツアーに先駆けて地元カリフォルニアで2公演を完了。新体制のフーファイを迎えるべく、今月からフジロックの映像が期間限定で順次公開されているのはご存知だろう。台風9号が直撃し暴風雨の中で開催された伝説のフジロック1回目から計5回、デイヴは別バンドのドラマーとして更に2回出演を果たしている。フーファイ結成から今年で30周年。フジロックは28回目を終えたところだ。同じ時代を共有し歩んできたフーファイとフジロック。両者の縁と絆、軌跡をあらためて振り返りたい。
FUJI ROCK FESTIVAL ’97 | 7/26 Sat. MAIN STAGE
はじまりは暴風雨とともに
今では年中、全国津々浦々でフェスティバルが開催されるフェス大国となった日本。そのはじまりは1997年に富士天神山スキー場で開催された1回のフジロックであることは誰もが認めることだろう。レッチリ、レイジ(・アゲンスト・ザ・マシーン)、グリーン・デイ、ベック、ザ・プロディジー…当時を代表する演者たちが勢揃い。イギリスのグラストンベリー・フェスティバルが源の、日本初の本格的なフェスティバル開催に日本中の音楽ファンが沸き立った。が、台風9号が直撃し2日目が中止の憂き目にあうという波乱の幕開けになったのは周知の通り。この伝説の場に立ち会い、吹き荒れる暴風雨の中で激アツのライヴを繰り広げたのがフーファイだ。セカンドアルバム『The Colour and the Shape』がリリースされ、テイラー・ホーキンスが新ドラマーとして加入したタイミング。その後しばらくバンドを離れることになるパット・スメアを含む4人体制だった。フーファイはメインステージの5番手、14:40に登場。ステージ直前、あまりの豪雨と寒さから緊張した面持ちのデイヴの姿が記録に残っているが、開演とともに発せられた咆哮とともに解き放たれたようだ。イヤモニがまだそこまでメジャーではなかった時代だからこその生々しく荒々しいステージ。生で聴こえる音を頼りにバンド全員が一体となって激しく演奏している様がめちゃくちゃかっこいい。ミスなんてものともしない勢いと若さが充満している。冒頭の“Wind Up”から“Weenie Beenie”、締めの“Stick it Around”まで問答無用にロック馬鹿を蹴り上げる曲の連打だ。そして、バンドに応えるオーディエンスがすごい。渦巻く音楽に対する欲求、放つエネルギーと熱気。バンドとオーディエンス、交歓した互いのエネルギーが「自分は本当に生きているんだ!」と解放し、またとない瞬間を生み出している。デイヴはその後も度々この時の特別な体験と、その場にいたということの重要性を語っている。フジロックとフーファイがここで創り上げたものはあまりに大きい。ここからすべてがはじまったのだ。
<セットリスト>
01. Wind Up
02. Wattershed
03. Hey, Johnny Park!
04. Monkey Wrench
05. Alone + Easy Target
06. Doll
07. See You
08. My Poor Brain
09. For All The Cows
10. Enough Space
11. Big Me
12. Up In Arms
13. Weenie Beenie
14. Everlong
15. New Way Home
16. This Is A Call
17. I’ll Stick Around
FUJI ROCK FESTIVAL ’00 | 7/28 Fri. GREEN STAGE
初苗場で魅せたバンドの確かな成長
フーファイが出演した2度目のフジロックは2000年。前年から会場が苗場となり、開催日も3日間に拡大、ステージ数も出演者も来場者数も増え、世界有数のフェスティバルとして定着しつつあったタイミングでの出演となった。サマー・ソニックもはじまり、ブランキー・ジェット・シティとミッシェル・ガン・エレファントが金土連日、日本のバンドで初のヘッドライナーを務めた年のフジロック。新たな世紀のはじまりに、日本の音楽における輝かしい未来にワクワクしたのを覚えている。フーファイはブランキー・ジェット・シティがバンドとして有終の美を飾った初日のグリーンステージ、夕方5時に登場。本年以降のフジロックはすべてグリーンステージのトリを務めることになる。サードアルバム『There is Nothing Left to Lose』ツアーの一環で、日本ではシフティことクリス・シフレット加入後初のステージだった。ステージ後方にでかでか「FF」と掲げられたフーファイのロゴ、雨が降りしきる苗場の大自然の下、のっけの必殺曲“Monkey Wrench”からバンドもオーディエンスも終始野に解き放たれたかのようにその瞬間を楽しんだ。圧巻だったのは“Stacked Actors”。デイヴがステージ下に降りて来て、最前列のファンたちとバンバンとハイタッチし、興奮したファンたちにもみくちゃにされながらグリーンステージ一帯を更に加熱した。近年見られないデイヴの自由かつ強引なパフォーマンスを確かな演奏力とグルーヴでがっちりと支えるテイラー、ネイトにシフティ。バンドとして一段と成長した姿で集ったフジロッカーたちに応えたのだった。
<セットリスト>
01. Monkey Wrench
02. Learn To Fly
03. Breakout
04. For All The Cows
05. I’ll Stick Around
06. Big Me
07. Stacked Actors
08. Next Year
09. This Is A Call
10. Ain’t It The Life
アンコール:
11. Alone + Easy Target
12. Everlong
FUJI ROCK FESTIVAL ’05 | 7/29 Fri. GREEN STAGE
遂にヘッドライナーとして堂々たる帰還

Photo by Keiko Hirakawa
フーファイとして帰還する2005年の前に、デイヴは2002年のフジロックにクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのドラマーとして姿を見せている。クイーンズにとっても初来日にして初ステージだった。デイヴが参加したラストステージが本フジロックとなってしまったが、スクリーム、そしてニルヴァーナで魅せてきたドラマーとしての真骨頂を堪能できたのは幸運としか言いようがない。フーファイは、デイヴのスタジオ606にて制作した5枚組にして2枚組の大作『In Your Honor』をリリースした2005年。5月下旬にリリース直前のプロモーション来日してフジテレビ放映用のフリーライヴをお台場で開催、7月には3度目のフジロック出演を果たした。しかも、初日のグリーンステージのトリという堂々たる帰還だった。バックには4つの紋章のようなフラッグが並び、スピーカーが雑多に積み上げられ、派手なグリーンのレーザーが飛び交うというヘッドライナーたる大掛かりなセット。ニルヴァーナがあのような形で終了を余儀なくされ、デイヴがフロントマンとしてフーファイを始動させて10年という節目の年だった。キッスのジーン・シモンズTという永遠のロックキッズたる出で立ちで苗場の大舞台に立ち、初日のクライマックスを盛り上げている姿に目頭が熱くなったのは私だけではないだろう。デイヴはオーディエンスの中を突き進み、10メートル以上あるであろう照明やぐらのてっぺんに登ったり、テイラーがアンコールで歌った一曲“Cold Day In The Sun”ではドラムを披露するサービスまで。見どころ満載の熱いステージを届けてくれた。
<セットリスト>
01. In Your Honor
02. All My Life
03. Times Like These
04. My Hero
05. Best Of You
06. Up In Arms
07. Learn To Fly
08. The Last Song
09. The One
10. Stacked Actors
11. This Is A Call
12. Everlong
13. Monkey Wrench
アンコール:
14. Cold Day In The Sun
15. Breakout
FUJI ROCK FESTIVAL ’15 | 7/24 Fri. GREEN STAGE
足骨折すれど玉座から骨の髄までロック

Photo by Ryota Mori
デイヴは2010年のフジロックにゼム・クルックド・ヴァルチャーズのドラマーとして出演しているとは言え、フーファイとして苗場に帰還するまで随分と間が空いてしまった。2011年にリリースされた7枚目のアルバム『Wasting Light』の大規模な日本ツアーが予定されていたものの、デイヴの喉の不調からキャンセルに。そのツアーは2011年の東日本大震災から1年後となる3月に開催予定で、しかも仙台公演が含まれていた。日本のファンたちと感動の再会になるはずだったのだが…。2015年、8枚目のアルバム『Sonic Highways』を引っ提げ、来日公演自体が2008年来7年ぶり、フジロックには10年ぶりの帰還となった。出演は初日の金曜日。もちろんヘッドライナーだ。待ちに待った来日にしてバンド結成から20周年を迎えたタイミングであること、その前月にデイヴがスウェーデン公演でステージから転落し足を骨折するというアクシデント込みの話題性満載な状態でのフジロック。ステージの模様は速報レポートがあるので以下リンクからぜひ確認いただきたいが、問答無用に過去最高のステージだった。パットも戻り、キーボードのラミ・ジャフィーを含む6人体制となり、百戦錬磨のスタジアムバンドに上り詰めたフーファイ。デイヴは歩けずとも特製の玉座から髪を振り乱し、ギターをかき鳴らし咆哮する。終始バンド渾身のロック魂あふれる音とパフォーマンスで完全に場を制圧したのだった。
▼当時のライヴレポートはこちら | FUJIROCK EXPRESS ’15
https://fujirockexpress.net/15/p_2864.html
<セットリスト>
01. Everlong
02. Monkey Wrench
03. Learn To Fly
04. Something From Nothing
05. The Pretender
06. Big Me
07. Congregation
08. Walk
09. Band Introduction(I’m The One – Van Halen cover ~ Another One Bites The Dust – Queen cover ~ School’s Out – Alice Cooper cover)
10. Cold Day In The Sun
11. My Hero(Acoustic)
12. Times Like These(Acoustic)
13. Under Pressure(Queen & David Bowie cover)
14. All My Life
15. Outside
16. Breakout
17. Best Of You

Photo by Ryota Mori
FUJI ROCK FESTIVAL ’23 | 7/29 Sat. GREEN STAGE
生きる場所は今、ここ 失意の先にたどり着いた感動のステージ

Photo by Ryota Mori
直近最後の来日にして5回目のフジロックとなった2023年までの間に様々なことが起きた。世界がコロナ禍に見舞われた2020年以降、フーファイは立ち止まることなく、2021年に10枚目のアルバム『Medicine At Midnaight』をリリース。ツアーの最中、2022年3月25日にデイヴの親友にしてバンドの要でもあったテイラーが急逝してしまう。更に追い打ちをかけるかのようにデイヴの最愛の母親、ヴァージニアが同年8月17日にこの世を去る。翌年の2023年、デイヴはフーファイの活動続行を決断し『But Here We Are』をリリース。そして、8年ぶりとなるフジロックに花形である土曜日のヘッドライナーとして帰ってきた。デイヴはかけがえのない二人を失って失意のどん底にいたことだろう。失意を超えて繰り広げられたステージ。直前に亡くなったシネイド・オコナーに捧げた“Mandinka”をアラニス・モリセットとの共演、テイラーが一番好きな曲だったからと披露した“Aurora”、そして“Best of You”でのオーディエンスの大合唱…目頭が熱くなる瞬間ばかり。デイヴは次はもっと早く戻って来たいと、そしてツアーで回りたいと明確な日本への愛を表現しステージを後にした。
▼当時のライヴレポートはこちら | FUJIROCK EXPRESS ’23
https://fujirockexpress.net/23/p_1613.html
<セットリスト>
01. All My Life
02. Pretender
03. No Son Of Mine
04. Rescued
05. Walk
06. Mandinka
07. Learn To Fly
08. Times Like These
09. Under You
10. Breakout
11. My Hero
12. Big Me
13. Monkey Wrench
14. Aurora
15. Best Of You
16. Everlong

Photo by Ryota Mori
デイヴとフーファイがいかに大切な節目のタイミングでフジロックに出演しているかがお分かりいただけたのではないだろうか。今後も互いの縁と絆は更に深まっていくことだろう。去る7月1日に結成30周年を記念してデイヴがテイラーへの想いも込められた長文のエッセー「FOO FIGHTERS 2025 BY DAVE GROHL」とともに新曲“Today’s Song”を発表した。デイヴはエッセーをこう結んでいる。「俺は今も、人生に、愛に、音楽に、そしてこれからどこへ向かうか分からないという神秘に、心から感謝しているんだ。さあ、まだまだ前進し続けよう」
さぁ、17年ぶりの単独公演はもう目前だ。デイヴとフーファイの帰還を総出で祝福しよう!
Text by 三浦孝文
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[LIVE] Foo Fighters × FUJI ROCK ’05 – “BEST OF YOU”【限定公開 〜 9/26(金)17:00】
[MESSAGE] A Message from Foo Fighters
[MESSAGE] Foo Fighters 2025 by Dave Grohl
[MV] Foo Fighters – “Today’s Song”
公演情報
“FOO FIGHTERS LIVE IN 2025”
2025年10月8日(水)さいたまスーパーアリーナ ※追加公演
サポート・アクト:マキシマム ザ ホルモン
2025年10月7日(火)さいたまスーパーアリーナ *SOLD OUT
サポート・アクト:おとぼけビ~バ~
2025年10月10日(金)ジーライオンアリーナ神戸 *SOLD OUT
※注釈付きチケット追加販売が決定