【LIVE】史上最高のオアシスがウェンブリー・スタジアムに堂々のカムバック!世界よ!これがロックだ!ロングライブレポート公開!
- 2025/08/21 ● REPORT
2009年のフジロック、ヘッドライナーとしての出演以来、16年ぶりに観たオアシスのライブは、ライブが終わった後もしばらく呆然としてしまうほど、期待の遥か数光年先を行く、規格外のステージだった。それは1994年のデビューから31年(解散中も含む)という彼らの歴史をパッケージしたとも言えるが、そこに同窓会的な雰囲気は微塵もなかった。オアシスというバンドの歴史、バンドメンバーそれぞれの歴史、そして会場にいたすべてのファンが過ごしてきた今までのオアシス体験の歴史、それらをすべてをその場に凝縮させたような──かくも不思議な「集大成」であり「原点回帰」でもある、最高な2時間だった。今回は7月30日にロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われたライブの模様をレポートしていこうと思う。
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日本でのラストライブとなった2009年のフジロック。あの日に体験した “Champagne Supernova” は、あまりにも美しく幻想的なものだった。あの日は一日中雨。トリの時間を迎える頃には雨足はさらに強まり、そのままライブに突入した。ファンにとっては過酷な状況ではあったものの、その代わりに “Champagne Supernova” が演奏される中に降りしきる雨粒が照明に乱反射してきらめく──そんな感動的な光景を僕らにもたらしてくれた。あの時の光景は、かけがえのない記憶として今も鮮明に残っている。そんな”奇跡”のフジロックから約1ヶ月後の2009年8月29日、突如バンドの解散が報じられる。筆者も当然ショックではあったが、フジロックの感動体験が心に強く残っていた(バンドのピリオドにも納得感を感じていた)からか、すんなり受け入れられた。あれから16年。あの日から止まっていた時計の針が、ついに動き出す──。
2024年8月27日、「銃声が静まり、星が一列に並んだ。長い待ち時間は終わりだ」という印象的な言葉とともに、リアム・ギャラガー(Vo/Tamb/Maracas、以下リアム)とノエル・ギャラガー(Gt/Vo、以下ノエル)、二人の最新ビジュアル写真が公開。併せて、16年ぶりの再結成とライブツアー『oasis live ‘25』の開催を発表した。このニュースを受け、チケット争奪戦は壮絶を極めた。発売当日にはチケットマスターに全世界から約1,000万人ものファンがアクセスするほどで、かなり厳しい状況ではあったが、筆者もなんとか7月30日のウェンブリー・スタジアムのチケットを手に入れることができた。
その後も、日本公演(東京ドーム2DAYS)の発表、そして熾烈なチケット争奪戦、さらにはデビュー30周年記念のオアシス展開催など、オアシス関連の話題は尽きることがなく、この1年の間、筆者の頭から「オアシス」の存在が離れることはなかった。16年という空白期間中にギャラガー兄弟のソロ活動や発言が今回の再結成ツアーにどのように繋がっていくのか──その必然や偶然、その意味、それら全部ひっくるめて考え続けてきた。だからこそ、「2025年のオアシス」がどんなライブを見せてくれるのか、そのライブの幕が降りる瞬間が迫るほどに、期待は自然と胸が膨らんでいった。
『oasis live ‘25』は、2025年7月4日にカーディフのミレニアム・スタジアムで幕を開け、初日から圧倒的なパフォーマンスで観客を魅了、その熱狂は瞬く間にYouTubeやXなどのSNS、ネットニュースを通じて世界中に拡散された。続くギャラガー兄弟の地元マンチェスターのヒートン・パークでの5日間のライブは、言わずもがなだが凄まじいほどの熱狂ぶりを見せたという。そのマンチェスター公演のMCで、ノエルはこう語っていた。「(ツアーが始まって)この10日間、世界中の目がマンチェスターに注がれてきた。俺が言いたいのは、マンチェスターのみんな、お前らのことを心から誇りに思うってこと。この街に滞在して改めて感じた。マンチェスター、お前らは今でも本当に最高だ」。この言葉は、地元愛の強いノエルだからこそ出てくるものであり、同時に彼のリアルな感情が伝わってきた。
マンチェスター公演から約1週間、次なる会場は「ロックの聖地」と称されるロンドンのウェンブリー・スタジアムだ。映画『ボヘミアン・ラプソディ』でクイーンが伝説のパフォーマンスを披露したチャリティーイベント『ライブエイド』(今年で開催40周年!)の会場でもあり、2007年に全面改装されたとはいえ、いざ会場を目の前にすると、その歴史的な現場の空気の “質” の違いに思わず圧倒されずにはいられなかった。
筆者がウェンブリー・スタジアムを訪れたのはロンドン公演3日目。この日は平日にもかかわらず、昼間から幅広い世代のファンが会場に詰めかけ、会場や現地のポップアップストア、アディダスショップで購入したオアシスグッズを皆身にまとっていた。そして、開演まで数時間を切り、高まる緊張と期待を感じながら会場へと足を踏み入れた。
発表から1年間、溜まりに溜まった期待が爆発したイントロの“Fuckin’ In The Bushes”、そしてオアシスからの挨拶代わりの“Hello”!
会場に入りまず目を引いたのは、ステージの裏側のスタンド席のほとんどを覆うほどの超巨大なワイドスクリーン。まるで壁のようにそびえ立つスクリーンの手前には、ステージが突き出すように設置されていて、真横からでもオアシスのパフォーマンスを存分に堪能できるようなステージセットだ。
20時15分、まだ明るさが残るロンドンの夕暮れ空の下、それまで流れていたSEが鳴り止んだ。ライブの開始を察知したファンが会場を揺らすほどの大歓声を上げる中、スクリーンにはアナログのデシベルメーターが映し出され、映画『未知との遭遇』のワンシーンの音声サンプリングに同期するように針が揺れ動く。さらに、映画のセリフとともに、スクリーン全面にどデカく《THIS IS NOT A DRILL / これは訓練ではありません》という文字が映し出されると、「覚悟しろよ!準備はいいか!?お前ら!!」とでも言いたげな挑発的な演出にオーディエンスは「来いよ!いつでもいいぜ!」と大歓声をあげ、一気にボルテージを上げていった。
すると会場に爆音重低音ドラムビートが鳴り響き始めた!待ちに待ったオアシスライブの幕開けとなる “Fuckin’ In The Bushes” だ!スクリーンには、ギャラガー兄弟の過去から現在までの写真に加え、ツアー開始までのニュース記事やSNS投稿の切り抜きが目まぐるしくコラージュされ、次々と切り替わる。その間に挟み込まれる挑発的な言葉────
《Oasis Reunited? Are Oasis Back? It’s on! It’s on! This is it, this is happening Rock Icons Reunited / オアシス再結成?オアシスは復活するのか?始まる!始まるぞ!これだ!これが現実になる!ロックアイコンが再結成だ!》
これがオーディエンスの興奮をさらに煽っていった。その興奮が頂点に達しようとしたその瞬間、オアシスのメンバーが入場!すると、会場からは先ほどの歓声以上の、まるで怒号のような大歓声が湧き起こった。先頭を切って登場したリアムとノエルは、カーディフやマンチェスターと同様に手を取り合い、両腕を頭上高く掲げて入場。カーディフ初日では、照れたような表情を見せていたノエルだが、公演を重ねるごとに満面の笑みを浮かべるようになり、この日も穏やかな笑顔を浮かべていた。再結成に否定的で、リアムに煽られても柳のようにかわし続けてきたノエルが、今この瞬間、笑顔でリアムと手を取り合っている。この光景に「こんな日が来るとは…」と思わず感慨深くなった。加えて、数々の困難を乗り越え、再結成を決意したノエルの心境を思うと感極まってくる。そんなセンチになっているところで、リアムが放った一言。「Oasis is back. Yeah Yeah!Back in London Yeah!」。感情を切り裂くようなその言葉に思わずハッとさせられる。そう、これは幻ではない、紛れもない現実なのだ!
そこからライブは本編に突入!1曲目の “Hello” が始まると、会場のオーディエンスは当然のように全力でシンガロング!《Hello, hello, it’s good to be back. / ヤァ、ヤァ、戻って来れて嬉しいぜ》と、バンドと共に一体となって歌える喜びを噛みしめる。続く “Acquiesce” で大合唱はさらに大きくなり、待ちに待ったリアムとノエルの掛け合いでは、リアムがノエルにパートを引き継ぐ際にちらりと視線を送る姿にすら、「ああ、仲直りした二人が…」と感動を覚え・・・涙。リアムからボーカルのバトンを受け取ったノエルは、《Because we need each other. We believe in one another. And I know we’re going to uncover. / 何故なら俺たちにはお互いが必要だから お互いを信じているから 俺はわかっているんだ》と歌い上げる。この “Hello” から続く歌詞は、まるでオアシスからファンへのメッセージのように響きわたった。
それにしても、バンドの仕上がり具合は、冒頭2曲だけでも非常に目を見張るものがあった。リアムの伸びやかなボーカルからはコンディションの良好っぷりが伺え、ノエルはその安定感抜群のギタープレイに加え、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ(以下NGHFB)での経験から得た表現力豊かなボーカルを披露。兄弟のバックを固めるのは、長年ギャラガー兄弟を支えてきたゲム・アーチャー(Gt)、後期オアシスを支えたライドのアンディ・ベル(Ba)、そして今回の再結成の立役者の一人でもあり初期オアシスの要的存在でもあったポール・“ボーンヘッド”・アーサーズ(Gt)という、前期・後期オアシスを支えた重要なメンバーたちだ。彼らそれぞれが現在のオアシスの“ベスト”なサウンドを奏でている。さらに、今回の再結成においてジョーイ・ワロンカー(Dr/Per)の存在は計り知れないほど大きかった。彼の経験・経歴(アトムス・フォー・ピースなどに参加、リアムのソロではドラムも務めている)に裏打ちされたドラムテクニックは楽曲を最大限に引き立て、オアシスの爆音ウォール・オブ・サウンドを変幻自在な重低音ビードで支えるという、極めて重要な役割を担っていた。