フジロックで朝ドラの主題歌を聴きたい!
- 2025/06/25 ● COLUMN
現在放映されているNHK朝の連続テレビ小説(通称・朝ドラ)『あんぱん』を観ているときに「このドラマの主題歌を歌っているRADWIMPSはこの曲(“賜物”)をフジロックで演るだろうか」と思った。
フジロックと朝ドラというのは縁遠いようで意外と近い世界である。朝ドラ出演経験のある人がお客さんで来ていたりする。苗場にあるホテルの朝食会場にすごいイケメンがいて誰誰?と思ったらのちにヒロインの夫役で出演していたり、ある作品のヒロインと夫役の人が奥地(フィールド・オブ・ヘヴンから先のエリア)でいるのを目撃されて本当に付き合ってるんだ、ということもあった。
朝ドラ出演経験者がステージに立つこともある。ミュージシャン枠でカメオ出演的な登場が多い中、トータス松本(『おちょやん』)のように主人公の父親役をやったり、野田洋次郎(『エール』)のように音楽関係者の役をやることもある。星野源、ピエール瀧、満島ひかりなど俳優でもミュージシャンとしても活躍している人も多い。また、グループ魂が2017年に主演したので、阿部サダヲ、皆川猿時、三宅弘城、村杉蝉之介の各メンバーはそれぞれ朝ドラ出演経験がある。あと、ミュージシャンのゲストとして登場した例としては、2011年のenvyのステージに上がった奥貫薫(『天花』『ごちそうさん』『とと姉ちゃん』に出演)や、2021年のRADWIMPSのステージに上がった菅田将暉(『ごちそうさん』『まんぷく』に出演)など複数いる。
朝ドラの主題歌を手掛けたアーティストとフジロック出演に関しては表にまとめたのでご覧いただきたい。なお、朝ドラは4月~9月と10月~翌年3月の年2本放送されるため、前者を「前期」、後者を「後期」と記載しています。
※コロナ禍のため、2020年後期『おちょやん』は2020年11月30日~2021年5月14日、2021年後期『カムカム・エヴリバディ』は2021年11月1日~2022年4月8日と放送時期が変更となった。
◆1993年後期
ドラマタイトル | 『かりん』 |
---|---|
主演 | 細川直美 |
主題歌 | “カナディアン アコーデオン” |
アーティスト | 井上陽水 (2002、2012) |
◆1996年前期
ドラマタイトル | 『ひまわり』 |
---|---|
主演 | 松嶋菜々子 |
主題歌 | “DREAMING GIRL” |
アーティスト | 山下達郎(2025) |
◆1998年後期
ドラマタイトル | 『やんちゃくれ』 |
---|---|
主演 | 小西美帆 |
主題歌 | “あそぼう” |
アーティスト | ウルフルズ(2014) (※1) |
◆1999年前期
ドラマタイトル | 『すずらん』 |
---|---|
主演 | 遠野凪子(現・なぎこ) |
主題歌 | “すずらんのテーマ” |
アーティスト | 吉田美奈子 (2014) (※2) |
◆2002年後期
ドラマタイトル | 『まんてん』 |
---|---|
主演 | 宮地真緒 |
主題歌 | “この街” |
アーティスト | 元ちとせ (2002)(※3) |
◆2004年前期
ドラマタイトル | 『天花』 |
---|---|
主演 | 藤澤恵麻 |
主題歌 | “名前のない空を見上げて” |
アーティスト | MISIA (2018、2021) |
◆2005年後期
ドラマタイトル | 『風のハルカ』 |
---|---|
主演 | 村川絵梨 |
主題歌 | “風花” |
アーティスト | 森山直太朗 (2025) |
◆2011年後期
ドラマタイトル | 『カーネーション』 |
---|---|
主演 | 尾野真千子 |
主題歌 | “カーネーション” |
アーティスト | 椎名林檎 (2015) (※4) |
◆2013年前期
ドラマタイトル | 『あまちゃん』 |
---|---|
主演 | 能年玲奈(現・のん) |
主題歌 | “あまちゃんオープニングテーマ” |
アーティスト | 大友良英あまちゃんスペシャル・ビッグバンド (2014) (※5) |
◆2018年前期
ドラマタイトル | 『半分、青い。』 |
---|---|
主演 | 永野芽郁 |
主題歌 | “アイデア” |
アーティスト | 星野源 (2006、2012、2015) (※6) |
◆2019年後期
ドラマタイトル | 『スカーレット』 |
---|---|
主演 | 戸田恵梨香 |
主題歌 | “フレア” |
アーティスト | Superfly (2010、2019) |
◆2020年後期
ドラマタイトル | 『おちょやん』 |
---|---|
主演 | 杉咲花 |
主題歌 | “泣き笑いのエピソード” |
アーティスト | 秦基博 (2021) |
◆2021年後期
ドラマタイトル | 『カムカムエヴリバディ』 |
---|---|
主演 | 上白石萌音、深津絵里、川栄李奈 |
主題歌 | “アルデバラン” |
アーティスト | AI(作詞作曲が森山直太朗)(※7) |
◆2023年後期
ドラマタイトル | 『ブギウギ』 |
---|---|
主演 | 趣里 |
主題歌 | “ハッピー☆ブギ” |
アーティスト | 中納良恵 (2022)・さかいゆう・趣里 (※8) |
◆2025年前期
ドラマタイトル | 『あんぱん』 |
---|---|
主演 | 今田美桜 |
主題歌 | “賜物” |
アーティスト | RADWIMPS (2021、2025) |
(※1) ヴォーカルのトータス松本はROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRAなどで2013年~2024年までほぼ毎年出演。
(※2) TRIM (吉田美奈子&河合代介DUO meets 村上”PONTA”秀一)名義でオレンジコートに出演。
(※3) ゲストヴォーカルとして2015年(CHTHONIC)、2018年(jizue)、2021年(THE SKA FLAMES)にも出演。
(※4) 東京事変として2004年に出演。
(※5) 大友良英は第1期DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENのメンバーとして2002年に出演しているはず……
(※6) 星野源はSAKEROCKとしてはルーキーを含み5回出演。
(※7) 本曲は森山直太朗のソロライヴでも歌われている。
(※8) 中納良恵はEGO-WRAPPIN’としても多数出演。さらにROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRAのヴォーカルなどにも参加している。
自分の知る限り、1993年の『かりん』の井上陽水から放映中の『あんぱん』まで、かなりのフジロック出演歴のあるアーティストが主題歌を歌っているのだ(漏れがあったらご教示いただきたい)。それ以外にもドリカム、松任谷由実、福山雅治、竹内まりや、aiko、いきものがかり、SMAP、ゆず、AKB48、中島みゆき、宇多田ヒカル、ミスチル、スピッツ、BUMP OF CHICKEN、あいみょん、米津玄師、前作のB’z……など、あとV系アーティストさえ加われば、日本で売れている人は大抵やっているのでは? と思うほどさまざまなアーティストが名を並べる。
フジロックで朝ドラ主題歌が聴けたのは……
さて、そのアーティストが主題歌をフジロックで演奏した例はあるだろうか。自分が調べた限り2例ある。
まずは、『あまちゃん』のテーマで、この曲を作曲・演奏した大友良英率いるあまちゃんスペシャルビッグバンドが2014年のフジロックで「あまちゃん音頭」として演奏された。『あまちゃん』は、当時社会現象をもたらした朝ドラで、放映中の2013年には前夜祭のDJ MAMEZUKAが「あまちゃんのテーマ」を回してレッドマーキーが盛り上がったということもある。
2021年には、秦基博が『おちょやん』の主題歌“泣き笑いのエピソード”をグリーンステージで歌った。コロナ禍でおこなわれたこの年のさまざまな制限のあるフジロックでこの曲は不安に寄り添う優しさがあって沁みたのだった。
ちなみに、2017年『ひよっこ』の主題歌“若い広場”を歌ったのはサザンオールスターズの桑田佳祐であるけど、この年サザンオールスターズのトリビュートバンドである桑田研究会バンドがオレンジ・カフェに登場してこの曲を演奏したのだ。なので「フジロックで朝ドラの主題歌を聴く」ことは達成されている。
惜しいのは……
惜しい例がある。まずはSuperflyが歌った2019年『スカーレット』の主題歌“フレア”である。フジロックには2019年グリーンステージに登場。しかし、このときには朝ドラの主題歌を歌うことは発表されていなかった。『スカーレット』はこの年の9月に始まり、Superflyが主題歌を手掛けることが発表されたのは8月である。この年の9月から始まったSuperflyの単独ツアーでは歌われたようなので、あと2ヶ月くらい早かったら、と思うのだ。これに似た例として元ちとせの『まんてん』の主題歌“この街”で、『まんてん』は2002年放映で、元ちとせは2002年に出演。調べた限り歌ったという記録はなかったけど、実際に元ちとせのステージを観た人の情報を頂きたい。
そして、今年は?
今年出演予定のアーティストは、山下達郎、森山直太朗、EGO-WRAPPIN’(中納良恵)、RADWIMPSである。
山下達郎の“DREAMING GIRL”(『ひまわり』)は30年くらい前の曲で、自分が調べた限り、近年演奏されている形跡がない。森山直太朗の“風花”(『風のハルカ』)は8年くらい前のツアーでは演奏されているけど、近年はない。むしろ作詞作曲を担当した“アルデバラン”(『カムカムエヴリバディ』)の方が一昨年から昨年にかけてのツアー時に演奏されたので、まだ可能性がありそう。中納良恵はゲストを迎えてまで“ハッピー⭐︎ブギ”(『ブギウギ』)をやるかどうか。RADWIMPSの“賜物”が現在放映中でもあるし、演奏される可能性は1番高い。当日は期待してステージを観たい。
text by イケダノブユキ