• 我到家了!搖滾台中 ~台湾のロック・フェスに行きたいわん Vol.3~

    *第一天*

     最近、とくにこの夏はThe Blue Heartsの「青空」がよく頭のなかでリフレインしていた。日本の村社会から台湾に来ると、凝りかたまった心がおおらかさに解きほぐされる。この10月末の復活来日にあわせて、NHK『クローズアップ現代』が「オアシス再結成 なぜ彼らの歌は”刺さる”のか?」という特集番組を放送していたのが隔世の感だったのだけれど、Oasisよりも刺さるのはブルーハーツだ。といわけで?「日本代表」という気概、というかノリもちょっとはあって、《搖滾台中》の初日は、アジアの若い世代にもよく知られたザ・ブルーハーツのTシャツを着て臨む。

     そのまえに、朝から近くのカフェで頭と体を立ちあげたあと、午前中は宿から徒歩5分のところにある誠品書店のフロアの一角の誠品音楽へ。「お勧めのレコード」の棚に〈淺堤 Shallow Levée〉とネオ・ソウルの女性歌手〈9m88 Jiu em ba
    ba
    〉の過去作のLPがあった。台湾インディーズの棚には〈五月天 Mayday〉や〈告五人 Accusefive〉といった90年代から活躍するいまや超大物のCDが充実していたけれど、すでに台北で購入したアーティストのほかに探しているものは見つけられず。少し歩いて、《審計新村 Shenji xincun》という雑貨や作家のアトリエ、オーガニック食品などのマーケットが立ちならぶ、官舎跡をリノベーションした区画を散策する。宿にもどりシャワーを浴びて少し仮眠をしてから、ブルーハーツのTシャツに着替えて、徒歩で会場へ。20分ほどの道のりで歩いて通うにはぎりぎりの距離。おまけに湯船のなかを歩いているような湿気と日射しだけれど、会場の《文心森林公園 Wen xin senlin gongyuan》まではただひたすらの一本道だ。

     都心のオフィス街のどまんなかにある森林公園に近づくにつれ、まだまだ盛夏を思わせる青空にくぐもった轟音が流されてくる。はやる気持ちを抑えつつ、去年の経験を踏まえて会場近くのコンビニで〈可樂果〉を1袋購入。「香菜貢丸湯」味はなくて、これまた期間限定だという「焼肉醬」味。あと、暑さにそなえて水は1リットルのボトルを買ったけれど、これで足りるかどうか。メインゲートからではなく反対側から入場すると、林立する高層マンションを背にした《緑色舞台 Green Stage》では〈上山 Over The Top〉が演奏の真っ最中。なんせバンド名が人の苗字みたいで事前に検索してもひっかからなくて、初見だったのだが、ちょっとエモめの歌謡曲ロックで、台湾のレミオロメンといった感じ?(※個人の感想です)。観客も照りつける日射しに負けず、大声で合唱している。

     一気に、フェスの雰囲気のまっただなかに惹きこまれる。

     となると、やっぱりビールだな! 去年とおなじ銘柄が販売テントを出していたけれど、去年は3缶買うと手さげ袋がついてきたのが、今年は6缶で保冷用のでかいドラム・バッグ付きになっていた。200元(NTD)で日本円だと約1,000円(※円換算はすべて当時のレート)ほど。買ったCDがすでに10枚以上、それらを携えて帰国しないといけないので、ドラム・バッグ目当てにビールを6缶購入。飲みきれないぶんは宿に持って帰ろう。やはり去年とおなじく飲食の出店はなかったが、今年はそろいの販促用Tシャツとデニムのショートパンツ姿の女の子たちが、キャンプ・カートに山盛りにした〈ドリトス〉を会場のいたるところで配り歩いている。もちろん無料で。ポテトチップスの〈レイズ〉はディップ用のサルサ・ソースを。〈可樂果〉買う必要なかったやん。台中市が主催の入場無料のロック・フェスティバル。芝生は青いし女の子はかわいいし、おまけにスナックはタダだし、ここはParadise Cityですか?

     物販のテントをのぞいてみたものの、出演アーティストのグッズはいろいろあれどフィジカルな音源はまったくなくて、《搖滾台中》と《Rookie A Go Go》のコラボ公式Tシャツを記念に購入。その隣では、今年も1ℓ10元で水筒やボトルに水を補充できる給水所や、モバイル・バッテリーを貸し出すブースがある。ステージ別のタイムテーブルが描かれたバナーのまえでは、若者たちが入れ替わり立ち替わり記念撮影をしている。

     いい感じにテンションも上がったところで、ゆうに8,000人は入れそうな常設の野外ステージ《能量舞台 Energy Stage》へ。背景の摩天楼がシャンパン色を帯びた陽光に輝いている。このところよく名前は聞く日本の〈Cody-Lee (李)〉も初めて観たのだけれど、シーケンサーも多用したZ世代の歌謡曲ロック、といった印象。今年の《搖滾台中》初日はそういう流れなんだろうか。16時を過ぎてようやく太陽も傾きだして、すり鉢状の客席にのびる影の長さとともに観客も徐々に増えてくる。日中は日射しがとにかく過酷。途中まで観て、公園沿いの駐車場に設置された《跳躍舞台 Jump Stage》へ。台湾版『イカすバンド天国』的な勝ち抜き音楽番組で人気の〈老猫探偵社 Lao mao zhentan she〉は、70ʼs ロックとサイケデリック・ロックなサウンドにのせて今風に歌いあげる。「加州旅館」なる曲があるくらい(あの超名曲のカバーではない)、温故知新な感じ。

     またメインステージの《能量舞台》へともどって、昨日、西門でCDを買った〈VH〉。これもバンド名が広すぎて事前に検索でひっかからなかった、女性Vo.と男性G.のデュオ。J-POP風ディーバ系の歌謡曲ロックで、やっぱりぜんぜん〈草東沒有派對〉じゃなかった。サポート・メンバーのうちB.が〈ゲシュタルト乙女〉の阿司 A su だ。半分ほど観てから、去年は初日が《Rookie A Go Go Stage》だった《緑色舞台》に。〈惰性 Random〉は2000年代初頭のメロコア~エモを経由した歌ものパンク。日本でいうAir Jam~京都大作戦系か。 最後の数曲だけ観たのだけれど、観客もモッシュと大合唱で盛りあがっていた。

     おなじく《緑色舞台》での〈P!SCO〉は結成16年と日本でも名の知られたバンドで、個人的にもこの日観たかったアーティストの1つ。超キャッチーで終始元気なダンス・ロック× アイドル・ソングで、シンプルな振り付けと一緒に観客も会場一体となって飛び跳ね、踊りまくる。湾流ロックの盛りあがり方のお手本のようなライブ。Vo.のCatLunはレズビアンを公表していて、G.のRachelはトランスジェンダーと、アジア初となった2019年の同性婚合法化でも積極的にキャンペーンの一翼を担っていた。おそろいのベースボール・シャツとともに、虹色の旗はP!SCOのライブでは象徴的なアイテムだ。最後は、この日の《緑色舞台》のトリの〈ぜんぶ君のせいだ。〉のメンバーもステージに乱入しての代表曲「Penguin Disco」で大団円。

     そのあと、いちばん小さな《衝撃舞台 Smash Stage》で〈歩行者 Pacer〉。スケール感のあるMogwaiばりのインスト・シューゲイザーだけれど、シンセ・ストリングスや金管系の通奏音はシーケンサーを重ねていた。シーケンサーを多用すると、ステージ上で表れるその人の”人となり”が、覆い隠されてしまうように感じる。「表現」ではなくて、「演技」を観ているような気になってしまう。個人的には、音源の音をそのままライブで再現する必要はないと思うのだが。機材の進歩もあって、それがわりと手軽にできてしまう時代なのだけれど。

     トリまえの〈䎅子與白痴 Fool and Idiot〉からそとは入場まちの大行列だった初日のトリの〈美秀集團 Amazing Show〉で、今年も《能量舞台》は入場規制。入りきれなかった観客たちを眺めつつ(台湾の人たちの根気強さにはいつも頭が下がる)、この日は早めに退散する。さぁ、このあとは夜市がまっている。その詳細は最後の食レポのページで。

     

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