NAEBA SESSIONS | KEEP ON FUJI ROCKIN’ Ⅱ
- 2021/01/05 ● Report
フジロック会場の”各名所”で披露された『NAEBA SESSIONS』。そのパフォーマンスはどれも苗場の風景と相まって、たまらない情緒や風情が感じられるステージとなりました。こちらのコーナーでは、速報ページで公開したレポートをパッケージしてお届けします。
17:10〜17:35 T字路s@ドラゴンドラ
11月の苗場で撮影されたスペシャルコンテンツ『NAEBA SESSIONS』からの1組目T字路sは、なんと移動するドラゴンドラの中からの演奏!“これさえあれば”では《フジロックさえあれば平気さ》と歌い替え、この地に集えなかった悔しさごと昇華するようなセッションが繰り広げられる。眼下に広がる雄大な苗場の紅葉とともに、「ありえへんシチュエーションでございますな!」と意気揚々に奏でる伊東妙子(Vo/Gt)と篠田智仁(Ba)。スカやソウルのフィーリングをまといながら最新作『BRAND NEW CARAVAN』から立て続けに披露する中でも、モニター越しの僕らを鼓舞するように伊東は力強く弾き語る。最後は雪化粧する苗場の森をバックに「この地球上から憎しみ悲しみが少しでも減りますように」と祈りながら、人生の応援歌“泪橋”を魂のかぎり熱演。背中を預け合うような2人のたくましい演奏は、どんな困難な状況にも立ち向かっていく心意気を僕らに届けてくれた。
Text by 阿部仁知
18:40〜19:10 BIM@木道亭
2発目の『NAEBA SESSIONS』。木道亭でスペシャルなセットを披露したのは、ラッパーのBIMだ。ボードウォークをステージに向かって闊歩しながら、自身の地元の日常を語る”KIRARI deck”を皮切りに、”Time Limit”から”Wink”へとスムーズに繋げていく。これが初めてだという森の中でのライヴ。手ごたえを感じてか、自ら他のアーティストにお勧めしてしまうほど、BIMの穏やかな声で繰り出されるフロウから醸成されるヴァイブスは木道亭にドンピシャだ。フラッと遊びに来て踊っていたSTUTSが、シーケンサーでビートを刻んで突如参加することになった二人の共作曲”想定内”など見どころが満載。苗場の豊かな木々に囲まれて生み出されたとしか言いようがない、終始自由な雰囲気に包まれたステージだった。
Text by 三浦孝文
20:00〜20:30 STUTS @ところ天国
『KEEP ON FUJI ROCKIN’ Ⅱ』内のスペシャルコンテンツとしてアーティストのライブの間に流れるのは『NAEBA SESSIONS』。そのひとつで、ところ天国で収録されたのは、ヒップホップのトラックメーカーSTUTSのライブだった。フジロック期間中は涼を求めてたくさんの人が集まる清津川の河原の飲食スペースである。
その場所に機材を設置してSTUTSが一心不乱にサンプラーのパッドを叩く。男が大自然の中、ひとりで機材を操作するだけの映像なんだけど、晩秋の苗場なんで舞い散る針葉樹の葉、川のせせらぎと透き通った水、機材と一緒に並べられたゴンちゃん……天候のよさもあるし、心地よいビートも相まってフジロックを愛する人たちにはたまらん動画となっている。木道亭でのライブを終えたBIM(BIMのライブにSTUTSが参加しているので、そちらも観てね)がホワイトステージから橋を渡ってやってきて一緒に“マジックアワー”を演る。一曲演って「苗食(苗場食堂)で待ってるよ」とBIMが去っていくところなんか、ああもうフジロックの一場面じゃん! と思ってしまうのだった。苗場の景色とグルーヴが溶け合った素晴らしい動画なんで何度も観たくなるのだ。
Text by イケダノブユキ
21:50〜22:10 TENDRE @みどり橋
「NAEBA SESSIONS」のトリを飾るのは、河原太朗のソロ・プロジェクトTENDRE。クラウドファンディングによって完成した苗場の新名所・みどり橋の情景を一身に、最新作『LIFE LESS LONELY』から“LIFE”、そのままシームレスに“NOT EASY”と優雅に奏でていく。ミニマルなビートを基調に奏でるメロウなエレクトリック・ピアノの調べが、浅貝川のせせらぎと混ざり合いなんとも清々しい。ビートの厚みを増した“hanashi”で《話したいの 苗場に帰りたいの 夏》と歌う姿は照れくさそうだが、情感が宿る歌唱は眼前の自然達と語らうかのよう。最後は昨年のフジロック、レッド・マーキーでも最後に披露した“RIDE”。その時の音源とともに「一番楽しそうに踊ってください」と語り、グルーヴィーなダンス・トラックであの夏の熱狂を秋の寒空に重ね合わせる。音楽の高揚、雄大な自然。フジロックの魅力が詰まったステージを終えた彼は、静かにボードウォークに消えていった。
Text by 阿部仁知