• 【LIVE】L’Impératrice @ KANDA SQUARE HALL 2025/11/25 ライヴレポート – 大絶賛まで「あと一歩」

    11月25日(火)に、東京のKANDA SQUARE HALLで、L’Impératriceの来日公演が開催された。会場を見渡すと、自分が見る限り、観客の約半分は海外からのファンで、年齢層はやや高めのように見えた。開演前のフロアはゆったりとした雰囲気に包まれていた。ゲストとして登場したMaika LoubtéがゴリゴリのテクノDJを披露し、会場が温まり始めると徐々に客席が埋まり、いよいよ本編がスタート。

    噂通りの実力派バンド

    気さくな感じでドラムとボーカル以外のメンバーが手を振りながら登場。拍手で迎えられ、イントロ・セッション的に1曲目の“Cosmogonie”が始まった。宇宙服のような衣装を予想していたが、彼らはアジアツアーのフライヤーのようなラフなスタイルでプレイ。続いてドラムのトム・ダヴォー(Tom Daveau)が加わり、一気に会場は熱気を帯びた。ギターのアシル・トロセリエ(Achille Trocellier)は体調が悪そうで、マスクをつけており、座りながらでもステージで演奏を続ける姿にはただただ頭が下がる。

    そして最後に現れたボーカルのルーヴ(Louve)は大きな歓声に迎えられ、そのまま“Amour Ex Machina”へ突入する。彼女が持ち込んだ力強い声とエネルギーは、良くも悪くもL’Impératriceが目指すスタイルを象徴していた。ステージ上で自由自在に動き回り、指ハートを客席へ投げ、シンセを弾いたり踊ったり、華やかである。観客もそれぞれに楽しんでおり、手を繋いで踊るカップルの姿など、幸福感に満ちた光景が広がった。

    ルーヴ加入後に発表された新曲“chrysaills”は観客の多くがまだ馴染みのない様子だったが、のりやすいメロディで場内は盛り上がった。各メンバーのソロが続く中でも、リズム隊の存在感は抜群。ダヴィド・ゴゲ(David Gaugué)のベースも、次第にバンドの軸となるグルーヴを響かせていくのがたまらなかった。

    Hypnoloveのカバー“La piscine”では、トムがギターを手にし、ダヴィドと2人でステップを踏みながら四方向を向いて演奏。楽しんでいる気持ちがそのまま表情に出ており、観客からは笑い声も漏れるほど幸せな空間だった。この場面は今回の一番のハイライトになりそうだ。それにしても、トムは手拍子を促したりMCで観客に喝を入れたり、とにかく盛り上げ上手で、ステージの空気をつかむ力が群を抜いていた。

    また、韓国にルーツを持つシンセサイザーのハニ・グォン(Hagni Gwon)が「元気ですか~!」と声を上げると大きな歓声が返ってきた。その後の“Agitations tropicales”では、ルーヴの歌い方が前ボーカル、フロール・バンギーギ(Flore Benguigui)の歌唱に驚くほど似ていた。“Danza Marilù”では観客にサビを一緒に歌うように促す場面もあったが、反応は控えめ。続く“Sweet & Sublime”はErick the Architectのラップ部分がインストのみで、ちょっと物足りなさもあった。

    “Matahari”では、フロアに映画『サタデー・ナイト・フィーバー』のような踊りをする人まで現れ、まるで80年周辺のディスコに迷い込んだような不思議な没入感があった。本編ラストはさっさと退場。あっさりした引き際がむしろ心地よい。アンコールもすぐに戻ってきてくれて、そのテンポ感は好印象だった。

    アンコールでは“Voodoo ?”を披露。「これはルーヴの声で録り直されているのだろうか」とどこか心がチクチクするような仕上がり。一方、Daft Punkの“Aerodynamic”カバーは、あの鐘の音が鳴った瞬間に「きたーー!!」と歓声が上がるほどの盛り上がりで、彼らの実力が最大限に伝わる最高のバンド演奏能力を見せつけた。最後は多くの観客が「メルシー!!メルシー ボク!!」と叫びフランス語で感謝を伝えたのが印象的だった。

    大絶賛まで「あと一歩」の理由

    今回のライブを通して、L’Impératriceが大絶賛されるバンドになるには、どうしても越えてほしい課題があるように感じた。

    自分の周りには、彼らの音楽は大好きなのに今回のライブに足を運ばなかった友人が何人もいる。理由はもちろん、前ボーカルのフロールが語ったバンド内での精神的苦痛の告白だ。あれは本当に耳を塞ぎたくなるほど重い内容で、バンド側のその後の対応も十分とは言い難い。

    どれだけ演奏が素晴らしくても、L’Impératriceで欠かせない存在だったフロールの脱退の経緯に納得できなければ、心の底から彼らの音楽を楽しむのは難しい。今回、自分はフロールが残した作品を聴くために会場へ向かった。しかし、パフォーマンスが良ければ良いほど、心のどこかに引っかかりが残り、ルーヴが楽しそうにすればするほど、フロールが「ステージで笑顔を作るのが精一杯だった」と語っていたことを思い出してしまった。実際ルーヴは楽しんでいるかもしれないし、現実はわからないが、L’Impératrice現メンバーのフロールに対する言及が甘く、うやむやになっているから疑ってしまう。

    彼らがこれほど素晴らしい作品を生み出すバンドであるからこそ、表に出てしまった問題について真正面から向き合う姿勢を見せてほしい。そうでなければ、どれだけ演奏が良くても、気持ちよく聴くことはできない。ぜひ次の来日までに、この問題に対してより誠実なアクションを起こし、改めて私たちを楽しませてほしい。心からそう願っている。そして私は、フロールの来日を密かにずっと待っている。

    set list

    Cosmogonie
    Amour Ex Machina
    La lune
    Anomalie bleue
    Me Da Igual
    chrysalis
    Vacances
    Submarine
    La piscine (Hypnolove cover)
    Agitations tropicales
    Danza Marilù
    Sweet & Sublime
    Matahari
    Aquadanse

    Sonate Pacifique
    Erreur 404
    Voodoo?
    Aerodynamic (Daft Punk cover)
    ENTROPIA

     

     

    Text by こっこ
    Photo by リン(YLC Photography)

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