• 6年ぶり2度目、ゴンちゃん捜索隊始動。雨で流されたゴンちゃんは存在するのかを検証する。

    1ヶ月ぶり、今年5回目の苗場からこんにちは。ボードウォークキャンプやらなにやら回数を重ねすぎて、ここにくることへの新鮮味を失いかけつつある自分が、今回は何をしにきたかというと、ずばりゴンちゃんを探しに、来た。ハァ?ゴンちゃんってフジロック本番中にいなくなっちゃうのに何言ってるの?バカなの?と思われるであろう。

    だがしかし、われわれは6年前フジロック後のゴンちゃん捜索活動でゴンちゃんの化身に出会っている。2019年、伝説級の豪雨で川は増水し各エリアが閉鎖されるほどの荒天だったあの年。ゴンちゃんも濁流に飲まれたのではと踏んで1ヶ月後に捜索活動をした結果はこちらのレポートの通りだ。

    ゴンちゃんは今…。あの大雨と共に姿を消したゴンちゃんを捜索せよ!

    今年のフジロックの大きなトピックとして挙げられる久々の豪雨の洗礼の影響で、一時は川も閉鎖されていたと聞く。となれば、あのときの豪雨ほどではないにしろ、ゴンちゃんも流されたのでは…衝動にかられたわれわれは6年ぶりに始動した…!

    とは言え、せっかくちょうど1ヶ月後の苗場だ。アフターフジロックのにおいを探してまずは少し散策してみるとしよう。

    なまなましく哀愁が残るパレス付近とか。

    うどん?これ開催中もあったっけ?と思いをめぐらせたり。

    いつ見ても気持ちがいいステージのないグリーンステージだったり。

    グリーン後方で拾ったプラカップと八海山のキャップはいつの名残か。

    静かすぎるボードウォーク。

    サッカーコートという本来の姿に戻ったオレンジエコー。

    そして差し掛かったジプシーアバロンエリアにて、何やら気配を感じる。

    猿…だね。

    猿!!!!!

    遠目に10匹はいただろう。確実にそれは群れで、彼らの生活を感じる。もちろん近づくことはなく、いつもはきみたちのフィールドなんだよね、貸してくれてありがとうねという気持ちを送って静かに退散。フジロックの森は、われわれが取材の特権で入りこんでいるわけではなく、基本的にいつでも自由に入れるようになってはいるが、当然野生動物も生息している。熊がいることも十分にありえると聞くので遊びに行く際には十分に意識を持ってほしい。

    そしてようやく川にたどり着いた。1ヶ月前、暑さでもう無理帰りたいと泣きたくなった私を冷やして鼓舞してくれた浅貝川だ。改めて思うが、フジロック会場にこの川がなかったらあの過酷な環境を耐え抜く心はとっくに折れている。

    そんな思いにふけるひまもなく入水!なんてったって8月のこの日ももちろん酷暑だったのだ。

    本番とは打って変わった静けさだが水は同じように冷たい。ひるみながらも川沿いの茂みや川底を丁寧に見てまわる。ひさびさの捜索活動にはりきってはいるが、昨今川辺の事故も多い。気を引き締めた大きなおともだち4人が必死の形相である。

    あ!この色はペイントの落ちかけなのでは!と川底に手を伸ばしてつい手に取ってしまう赤みがかった石はいざ手にとると完全に天然の色合いをしている。

    数年前に「ゴンちゃんに生まれ変わる候補の石拾い」に参加したことがあったが、そう言えばそのとき選ばれていたのはいわゆる石色をした白っぽいグレーの子たちばかりだった。

    集められたゴンちゃん候補たち

    ゴンちゃんを探せ~エピソード0~「ゴンちゃんの石拾い」とは?苗場からゴンちゃん誕生の序章をレポート

    だからこの天然の赤みや黄色味の子たちは違う。わかっているつもりなのにいざ水のなかに色を帯びた彼らのシルエットを見つけるとつい手にとってしまう。もはやDNAレベルに刻まれたわれらの習性なのかもしれない。

    6年前当時出会った彼ら

    結果、ない、ぜんぜんない。
    前回わりとたくさんみかけた目が消えて、鮮やかな色を失いかけつつも息吹のあった子たちがいない。圧倒的に色が目に入ってこない。 

    川を進んでいくうちにいくつか見かけたのがこの石タワー。何かの儀式的な意味がありそうな出立ちを見ていると、ゴンちゃんの魂はここにはないというメッセージを受け取れるような気がしたりしなかったり。

    そして見つかったものといえば、フジロックのショッパー。しかもなぜか2011年版。

    その他GUのサングラス、扇風機、オーザックあっさり塩味。これらは責任をもって持ち帰りました。

    そもそも。大げさにこんな企画を敢行しておいてそもそも論にもほどがあるが、ひさびさの洗礼といえども、岩がゴロゴロ濁流をころがるほどの雨だったのかと思い返すと正直そうでもなかった。ごめん、わかってた。わかってたよ。ちょっとだけ前回の盛り上がった記憶がよみがえってここまで来たけれども、やっぱり今年のゴンちゃんたちはひとり残らずお迎えされて苗場を去ったんだ。

    ぶっちぎり居残りコースだと思われたこの推定100kgの緑ちゃんですら、今は三重県の素敵なカフェを新居としていると後に知った。

    それでよかったんだよね…それが運命だよね…。いい加減に川遊び、否、捜索を切り上げようとしたとき、捜索員から大きな声が上がった。昔って川沿いの草むらとかにオトナの本とか落ちてたよなあ、そっち系でも見つかったかね?ともはや無心で駆けつけ指さされた茂みをのぞく。

    え?

    え?

    はあ???

    はああああ?????

    そこにあったのは川に流されてペイントがはがれることもなく、静かにここで時をとめてわれわれを待ち続けていたかのような綺麗なゴンちゃんだった。まぎれもなく、ゴンちゃんだ。

    え?サプライズ?誰か仕込んだ?わたし誕生日だっけ?(ぜんぜんちがう)

    いやいや、もしかしてゴンちゃんって実はフジロック以外のときにもアートチームの遊び心で密かに放たれてる???(詳しい筋に聞いたけどありえないって)

    綺麗すぎるゴンちゃんの登場に困惑し、いろいろ想像してみたが、落ち着いてシンプルに考えると、フジロック中に誰かがお持ち帰り用キープとして茂みにひそませて、そのまま何かの理由で放置されてしまったという説が妥当だろう。もしくはそのゴンちゃん返してきなさい!とお母さんに怒られてここにひっそりと戻されたのかもしれない。

    あんなにいた中からたったひとり残ってくれたと思うと…

    おおげさ?
    そう思われてもいい。
    これは、8月いっぱいフジロックの疲れを引きずるくらいにはがんばった夏のご褒美だ。
    言ってのけよう、運命だ。
    放置してくれた人、なんかすまんけどちゃっかりありがとう。

    やっと会えたね…とサイケちゃんに微笑みかけると同時に、自分で見つけたわけでもないのに「いいよね???」と捜索隊員たちから強引に承諾を得て無事この子は私の家の子になった。本当にこの子は1ヶ月ここにいたのだろうか。ゴンちゃんの神隠し。そんなワードが頭に浮かぶ。信じるか信じないかはあなた次第。

    見つかったゴンちゃんの化身っぽい子たちと共に祀って、来年のフジロックも無事に開催されますようにと勝手に祈願をした。今年のフジロックがやっと終わったのだ。

    というわけで、壮大な自慢で締めくくるアフターフジロックレポートだが、最後に言っておきたいことは、フジロックのシーズン外の苗場もとても魅力的だから、ぜひ足を運んでほしいということ。直近では10/4(土)にボードウォークキャンプも開催される。涼しくなって秋めいた苗場でのキャンプも格別だろう。ゴンちゃんがいるかいないかはさておき、こんな、ご褒美みたいに楽しい体験が待っている、かもしれない。

    ボードウォークキャンプの申し込みは9/29(月)17時まで!
    https://www.fujirockersforest.com/news/news-2285/

    Text by 東 いずみ
    Photo by おみそ、Ryota Mori

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