Radical Music Network 25周年─小宮山ショーゴ独占インタビュー
- 2025/06/28 ● INTERVIEW
アルゼンチン育ちの日本人であり、世界中の音楽を聞いて周り、日本に紹介し続けてきたJAPONICUS代表の小宮山ショーゴ。ブエノスアイレス、バスクなど世界各地で鳴らされてきた、政治や社会、歴史と切り離せないリアルな音を、日本に持ってきている。その集大成とも言えるイベントが、Radical Music Networkである。今年、25周年を迎えるこのイベントは、フジロックの前夜祭の前夜祭とも呼ばれる。あらゆる国とジャンルを越えたものである。
本稿では、JAPONICUS代表として今も現場を駆け回る彼の人生を辿るとともにフジロック、音楽のあり方、そしてRadical Music Networkについて語ってもらう。

Photo by Kosuke Kobayashi
フジロックとの出会い
─ 日本に最初に来たきっかけは何ですか?
農業だよ。21歳の時に、三重県に研修で来たんだ。完全に農業留学。そのあと北極に行って仕事して、コスタリカに引っ越したり、アルゼンチンでレイヴパーティーやったり。でも日本からオファーがきた。音楽とは関係ない 食品関係のビジネス。それで東京と沖縄に事務所を持って仕事をしてた。そこそこ順調だったよ。でも、どうしても音楽から離れられなかった。やっぱり音楽で生きていこうと思った時、支援してくれるって言ってた人には、半年で捨てられて。電話も切られて、貯金も全部なくなった。借金まで作って、マイナスからの再スタート。でもね、今になって思うけど、あそこで試されたんだと思ってる。あの時点で、やっぱ無理だって戻ってたら、今の自分はいないよ。
─ 自分を試す場所だった?
そう、今も試されてる感覚はあるよ。支援がなくなっても、誰にも呼ばれなくても、やるかどうかは自分次第だから。
─ フジロックとの関わりは1999年が最初だったんですよね。
当時、僕の幼なじみがやってるバンド、トドス・トゥス・ムエルトスが来日することになって、俺が成田に迎えに行って、そのまま苗場まで連れていったのが最初。
─ まだ食品ビジネスをやってた時期ですね。
そうそう。実は裏話があってさ。当時、99年はメスカレロスが出演していたから、ジョ-・ストラマーもフジに来てたんだよ。で、俺、彼のホテルにメッセージを預けたの。「大ファンです。明日うちら、トドス・トゥス・ムエルトスがグリーンステージでこの時間帯にやるので、良かったら遊びに来てくれませんか?」って。そしたらファックスの紙で返事来て、「絶対行くよ!」って。で、グリーンステージのラスト。ジョ-・ストラマー、ちゃんと観に来てくれてさ。メンバーも大興奮でさ、そりゃもう酒もビールも飲み放題(笑)。終わったあと、バックステージのビール全部なくなってたけど、誰も文句言わなかった。それくらいの事件だったんだよ。

Photo by Kosuke Kobayashi
─ 小宮山さんにとって、フジロックって何ですか?
人生を変えた場所。それ以外にない。あの日高さんと出会わなかったら、今の俺はいない。あの出会いがなければ、音楽を仕事にしてるなんてありえなかった。俺、世界中のフェス行ってるけど、フジロックはマジで世界一だと思ってる。 でも、だからこそ言いたいこともある。大好きだから言いたくなるんだよ。期待されてるから、応えたいんだよ。
─ コロナ禍では、日本人アーティストのブッキングもされていましたよね。
外国のアーティストが呼べなかったとしても、それは俺にとってはチャンスだった。自分の中で音楽に何ができるのかを試すタイミングだった。お金のためじゃない、ただ信じてるからやってる。
─ 信じてる場所として、フジロックはあり続ける。
そう。俺にとってフジロックに関わるってことは、試される場所に立ってるってこと。この場に立てるってことは、誰かがちゃんと見てくれてるってことだし、そのチャンスを無駄にしたくない。だから、情熱的になるし、声もデカくなる。ラテン人だからさ(笑)。

Photo by Sean Scanlan
ENG: The Last Samurai – Shogo Komiyama | Interview by Sean Scanlan https://fujirockexpress.net/24/p_2961.html
小宮山ショーゴが語る音楽のありかた・演奏の場
─ 小宮山さんが音楽を聞きにいくうえで大事にしているのは何ですか?
言葉を超えたところに空気がある。英語とか関係ない。俺、今まで100回聴いた話よりも、一回自分の目で見たことの方が信じられると思っててさ。だから俺は、そういう伝わる空気を持ってるバンドしか信用しない。最近、日本でライブ観ても、うまいけど伝わってこないって思うことが多くて。逆に、たまたま連れてきた無名のバンドの方が全然やばかったりするんだよ。技術じゃないのよ。
─ その音楽の空気ってどのように判断しているんですか?
まず、その人が信じてる音を鳴らしてるかどうか。それが大前提だね。だから音ももちろん聴くけど、俺が聴いてるのは、音にその人間が出てるかなんだよ。あとたくさん聴くこと。僕、ライブに行くと全部見るね。日本人は好きなバンドを見て帰っちゃう。あれの意味が理解できなくて、僕は最後まで全部見て、それのおかげですごいいいバンドをいっぱい発見してる。最近は台湾、香港、シンガポール、中国、モンゴル、韓国にしょっちゅう行ってたくさんバンドを見てる。その中でもモンゴルはすごいアイデンティティがあって、メタルとかデスメタルが多いんだけど、相当やばいバンドがいっぱいいる。
─ 日本のライブのあり方についてお伺いしたいです。
日本は、音楽を観に行くものとしてしか捉えてない人が多い。ライブは客が静かに観て、ちゃんと盛り上がるタイミングで盛り上がるみたいな。なんか正解があると思ってるよね。 でも、海外じゃそうじゃない。バンドがイマイチだったら観客は喋るし、良ければ喋ってた人が一瞬で黙る。音楽って、言語より先に届くからね。
─ ステージだけじゃない。空間そのものが音楽になる。
そう。もっと自由にしていかないと。そのために俺は、イベントを路上でもバーでもやる。形式なんて関係ない。あとさ、名古屋のライブハウスでイベントをやった時かな。すごい客が入ったのに、バンド側には全然金が残らない。 これ、誰が得してんの?って話でさ。結局ライブハウスだけが儲かってるんだよ。
─ イベントは成功したんですよね?
もちろん、 パンパンにしたよ。でも、このやり方、もう意味ないなって確信した。だから俺は自分で条件をつける。酒は絶対売れるし、盛り上げる自信あるから、それに見合う取り分をくださいって思う。
─ ライブハウスだと“チケットノルマ制”の問題もありますよね。
30枚売らないと赤字みたいな。バンドが全部抱え込んで、しかもドリンク代をさらに客から取ってるでしょ? こんなの、もう終わってる。
─ 会場の格にもこだわらない?
全然こだわらない。バーでも、公園でも、街角でもやれる。 逆にフェルミンが楽屋なしの小さな場所でやってるってだけで、どれだけ人がびっくりするか(笑)。でも、彼がそれを受け入れる人間だから呼べるんだよ。そうじゃないと一緒にやれない。 音楽ってもっと自由でいいはずなんだよ。
─ 日本って、音楽はコンサートで聴くものみたいな雰囲気がありますよね。
あるよね。でもそれ、間違ってると思う。世界じゃ、音楽ってもっと日常にあるものなんだよ。路上でも、公園でも、フェスでも、生活と一緒にある。
Radical Music Networkについて

Photo by Kosuke Kobayashi
─ Radical Music Network の名前の由来は何ですか?
最初は自分で考えた名前じゃなかったんだよ。ある音楽誌のライターが、俺らの活動を取り上げてくれて、特集を組んでくれたんだよね。当時まだ無名に近いアーティストをまとめて、Radical Music Networkって。
─ それがそのままイベント名に?
レベル・ミュージックって本当は言いたかったんだけど、当時の日本ではまだ誰もその言葉を知らなかった。だから、その記事のタイトルをそのままイベント名にしたのが始まり。
─ それが今や25周年。
信じられないよね。でも、俺は人が知らない世界を広げているだけ。英米のバンドを呼ぶなんて誰にでもできる。誰にもできないことをしないと意味がない。ラテンアメリカやアジア、ヨーロッパの声を上げるバンドを日本に呼ぶのは、俺にしかできないって思ってる。日高さんがよく言っていたフジロックの前にイベントするバカはどこにいるのかって、一番難しい日じゃない?って。それでも、コケても続けていくと時間が経っていくうちに、そのバリューも変わっていくからって言われてて、まあ今年これでなんやかんで25周年。今年のフジロックもRadical Music Networkから出るアーティストも結構いる。土曜のホワイトステージのトップはフェルミン・ムグルサ。それ以外にも、クリスタルパレスに素晴らしいアーティスト達がでるのでぜひ楽しみにしていてほしい。

昨年大規模なワールドツアーから引退する事を発表したフェルミン・ムグルサ。7.23(wed)のclub asia、7.25(fri) FRF’25(CRYSTAL PALACE TENT)、7.26(sat)のFRF’25(WHITE STAGE)に出演する。これを見逃したら日本で彼のライヴは見られなくなるので、お見逃しなく。
・FERMIN MUGURUZA backed by Tex & Sun Flower Seed | FUJIROCK EXPRESS ’15
・FERMIN MUGURUZA KONTRAKANTXA | FUJIROCK EXPRESS ’13
・FERMIN MUGURUZA KONTRAKANTXA | FUJIROCK EXPRESS ’13
聞き手:花房浩一 丸山亮平 渡邊育子
撮影:Kosuke Kobayashi
Text:渡邊育子
Radical Music Network 2025
Special 25th Anniversary!
開催日:2025年7月23日(水)
会場:渋谷 clubasia
Open/DJs Start: 17:30~22:00
[LINE UP]
FERMIN MUGURUZA (バスク)
SOUTH CARNIVAL (韓国)
RANKIN TAXI
CARIBBEAN DANDY
THE ZOOT 16 (渡辺俊美)
STOMPIN`RIFFRAFF
原広明
DANNY JIN (パレスチナ・日)
MEXICAN CLUB BAND
& more tba…
「Special Guest DJ`s」
DISCOS FANTASTICO! (ペルー)
BELLBOY (韓国)
SATRIA RAMADHAN (インドネシア)
Aka DAVO (スペイン)
「Guest DJ`s」
Dr IHARA
SUNSUKE (Snokey Records)
milklatino(club tropicana)
MIKIO CHUNG (Special Beat Selecter)
MICCYAN (Frantic Brown Beat!)
VIVA MEXICO CABRONES (栃木)
shingo maeda (birds melt sky)
NAKANO (Drink`Em All)
SNOW (倶楽部西原宿)
KAIGA (Mexican Club Band)
ELL (Mobstyles)
& more tba…
「Resident DJ`s」
藤井悟 aka SATOL.F (Caribbean Dandy)
KAZ SUDO (Zoot Sunrise Sounds)
AMEMIYA KSK (discos Papkin)
TXAKO (Japonicus)
DOC.KOYAMANTADO (Rumba Loco)
TAGOOD (Monte Bailanta)
YONESUKE-SYSTEM (Stretch Four)
MATXA (Los Tequila Cokes)
visuals: MATCHA (Rebel Fiesta Party)
shops: VIVERO TOKYO・DISCOS PAPKIN・etc
food: BAJA YARO!・マリめし
Tickets:前売 ¥4,500 / 当日 ¥5,000 (+1D)
clubasia/Japonicus
discos Papkin:https://discospapkin.com/?pid=187149374
Livepocket:http://t.livepocket.jp/e/rmf2025/
受付開始日:3/7販売開始
メールでの前売り予約は → info@japonicus.com(7/22〆切)
地方在住の方: 前売 ¥4,000 (メール予約のみ/締切り7/22)
当日 ¥4,500 (+1D)
*電車、バスなどの領収書等、証明出来るものを持って来た方は500円割引致します。
(会場の渋谷から100km以上離れたところ在住の方に限ります)。
22時以降は20歳未満の方はご入場出来ません。入場時にIDチェックを実施します。
Info:clubasia 03-5458-2551 / http://asia.iflyer.jp/venue/
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