Thx、Remi Wolf♡ 記念すべき初来日は、人間愛溢れるパフォーマンスと気持ちを揺るがすパワフルな歌声で、骨抜きにされた1時間半
- 2025/02/27 ● Report

Photo By MITCH IKEDA
平日に開催されるライブの待ち時間、少しだけ感動する。同じアーティストを好きな人がこれだけたくさんいて、みんな仕事の休みを取ったりなんとか間に合うように調整したりして、たまたま同じ会場に居合わせている。そう思うと、いつもいたたまれない気持ちになる。この日のZepp Shinjukuは、直前にまで迫ったRemi Wolfのライブを心待ちにしている気持ちがその場の空気を包んでいるようだった。
昨年フジロックへの出演は残念ながら直前キャンセルとなり、今回が記念すべき初来日ツアー……!昨今の円安の影響を考えると本当に来日ツアーが実現したのも嘘みたいだったし、次いつ来てくれるかわかんないもん。楽しみにしている気持ちと緊張感が混ざった空気にもそりゃなっちゃいますよね!
定刻通りに大音量のSEが流れてサポートメンバーの3人とRemi Wolfが登場し、まずは“Cherries & Cream”。広いステージを左右に行き来しながら、Remiがリヴァーブの効いた美しい裏声を響き渡らせる。間奏中の歓声には熱がこもり、シングアロングも本当に初来日ライブなのかと思ってしまうほどばっちり!この声のボリュームの大きさだけで、会場にいる人たちがRemi Wolfのライブを待ち望んでいたのかがよくわかる。優雅でゆったりとしたこの曲は、オープニングとして完璧だったのではないでしょうか。
そのまま間髪入れずに2曲目は“Cinderella”。待ってました!Remiの歌詞は、人生の戸惑いや悩み、葛藤を書いていることが多いけれど、実際のライブとして体験すると、感情を押し上げていく力強い歌声に、コーラス、更に心地よいギターのサウンドがより一層ポジティブな気持ちにさせてくれる。Remiがステージを歩き回り、踊るたびにブラウンのボリュームたっぷりのチュールスカートとカールのかかった黒髪がふわりと揺れ、その楽しそうな様子だけでも十分に魅入ってしまう。“Pitiful”では、一緒に踊ったり、ジャンプをしてみたりとサポートメンバーとのやり取りも微笑ましい。
「ありがとう!」「元気?」という流暢な日本語を聞かせてくれたあとは、ローファイな歌声が心地よい“Kangaroo”!Drのメンバーに変わってRemiがドラムを叩くワンシーンも見せてくれた。サポートメンバーよりも音が一層パワフルだったのも、ドラムの彼がちょっと暇そうにしていたのも笑いそうになってしまう。“Alone In Miami”では、アコースティックギターのアルペジオでしっとり聴かせると思いきや、頭を振り、やっぱり常に動き回っているRemi。音源では、タイトル通り埋まらない寂しさや孤独を感じる1曲だったけれど、実際に目の前で聴いていると音を媒介にしてRemiの感情がダイレクトに突き刺さるようだった。瞬きや呼吸をするのがもったいないくらい、目の前の演奏に思わず見惚れる。
ピンクとパープルの照明が美しく、原曲よりもスローテンポな“Sexy Villain”、切実なシャウトに呼応するように観客たちの腕が上がった“Michael”。丁寧に歌い上げながら、ファンサービスにも応じる。このあとも、Empire Of The Sunの“Walking On a Dream”、そして観客3人から「Potato」「Pickles」「Mochi」と、なかなかレシピの思いつかない食べ物シリーズで単語のリクエストをもらいながら、即興で演奏をしていく。楽しいひと時であった。
Remi Wolfのライブパフォーマンスの評判のよさって一体何なのだろう?歌がより一層パワフルに聴こえるからなのか……そんな風に考えていたけれど、ステージ上の彼女の様子を見ていると、演奏や歌うことだけではなく、目の前にいる人たちとのコミュニケーションすら心から楽しんでいるのがわかる。単純に歌うだけでも体力を大きく消耗しそうなのに、Remiは常に踊り、飛び跳ね、時に観客に向けてジェスチャーを返す。握手だってするし、手だって振る。確かに、あの会場には数えきれないほどの人がいたけれど、Remiはひとりひとりをしっかりと見つめながら、反応を返していく。「日本のお客さん」としてではなく、ひとりずつの存在をきちんと認識しようと努めていたように見える。その様子は空間そのものを楽しみ、今この瞬間でしか見ることのできないパフォーマンスに感じられ、だからこそ彼女のライブが評判がよいのだと理解できた。そして、説明がしにくいのだけれど、Remiから愛情/人間愛みたいな感情が容赦なく溢れ出ていて、とにかく彼女のことを絶対に好きになってしまう。それはもう、他のことを考える暇を与えず、1時間半のライブがあっという間に感じられるほど。あの空気も、気づいたら骨抜きにされてしまう感覚もその場に立ち会わないと見えてこない部分だった。
頭に角ポーズを作り、サポートメンバーたちとキュートなダンスを披露してくれた“Wave”のあとは、この日一番の歓声があがった“Toro”。会場の隅々まで伸びていく豊かな声、アレンジの加えられたドラムもうれしい。身体をのけ反らせて訴えかけるような歌声が印象に残る“Guy”のあとは、頭上のミラーボールが揺れる“Disco Man”。気持ちの乗ったソウルフルな歌声と音楽に、身を任せて踊りながら聴き入ってしまう。エンドロールみたいな“Soup”では、歌詞のとおりまるで私たちの未来がよくなることを祈るようなひと時であり、それを体現するかの如く、時間の許す限り観客たちを見つめ、ひとりひとりに反応を返していくRemiが記憶に残っている。
アンコールは、“Photo ID”。最後の最後まで、自然体でありながら空間そのものを愛し、楽しさしか感じさせなかった1時間半は本当にあっという間に過ぎていったのだった。
ああ、より一層Remi Wolfが大好きになってしまう。申し分ないくらいに素晴らしかった!本当に素晴らしかったんだけど……欲を言うのであれば、あのパフォーマンスをフジロックのWHITE STAGEで見てみたかった!(笑)先日、第一弾アーティストが発表されたばかりで2025年の夏が楽しみになっていたので、余計に気持ちが募ってしまった……!大好きだよ、Remi!日本に来てくれて本当にありがとう。次回は、絶対にフジロックでね♡♡♡
REMI WOLF THE BIG IDEAS TOUR
2025/02/18 (Tue) Zepp Shinjuku
セットリスト
1.CHERRIES AND CREAM
2.CINDERELLA
3.PITIFUL
4.LIZ
5.KANGAROO
6.ALONE IN MIAMI
7.SEXY VILLAIN
8.MICHAEL
9.Walking On a Dream
10.Potato, Pickles and Mochi
11.WAVE
12.TORO
13.GUY
14.DISCO MAN
15.SOUP
〜アンコール〜
16.PHOTO ID
Text by あたそ