搖滾台中的故事 ~台湾のロック・フェスに行きたいわん~
- 2025/01/08 ● Report
*第一天*
闇夜のなかに『搖滾台中』のカラフルなゲートが照らしだされる。とにもかくにも、やっときた! 文心森林公園は週末の静まりかえったオフィス街のどまんなか、日比谷野外音楽堂や服部緑地公園の野音の倍以上はある大きな野外のメインステージの外には、入れ替わりで入場をまつ長蛇の列が、公園の外周の歩道にまであふれだしている。まずは乾杯! 銘柄の宣伝を兼ねているのか、ビールが3缶で100元(500円弱)と安い。おまけにスルスルと無限に呑める南国仕様。ビールは美味いし女の子はかわいい…ここはParadise Cityですか?
でも、雑貨や古着を売るテントばかりで、期待していたフェス飯の屋台は一軒もない。たぶんゴミを考えてのことだろうか、入場無料なのも台中市が主催のフェスだからで、2007年から続いているのだとか。現地の人たちは近所のコンビニで買い出しして、野外ステージのすぐうしろの芝生の丘に座って、漏れる音楽を聴きながらまったりしている。無料のフェスだからか、観客の大半は10~20代の若者たち。ぼくらも倣って、コンビニで買ったスナック菓子と鶏排(ジーパイ=唐揚げ)をぱくつきながら、缶ビールを煽る。家で朝食のバナナを食べて以来、この日2食目だ。沁みる。
メインの「能量舞台 Energy Stage」から轟く音楽を浴びて、背景には摩天楼が夜空にそびえ立っている。演奏していたのは「甜約翰 Sweet John」というバンドで、キラキラしたシティ・ポップ風味が、蒸し暑い夜に爽やかな彩りを添える。『可樂果』という手羽先味のスナックがまた、ビールを止まらなくさせる。こうしてのんびりまったりライヴの演奏を聴くのも、ずいぶん久しぶりな気がする。もうそれだけで充分、解放感に浸れる。小雨の天気予報も、どうやら心配なさそうだ。短パン持ってくればよかった。
公園のなかに大小4つのステージが設置されていて、常設されたリンクでは、近所の子どもたちがインライン・スケートを滑っていたりする。芝生の丘を下って反対側の広場が「Rookie A Go Go ステージ」で、Ålborgのオルタナ・チェンバー・ポップ、DNA GAINZの90年代風のストレートなロックと、音楽性はちがえど両者ともに熱のこもった演奏を、地元の観客たちも興味深く、積極的に受け入れている印象だ。駐車場に設置された「跳躍舞台 Jump Stage」では、フランスのFunkindustryが山下達郎のカヴァーを日本語で披露していたり、いちばん小さな「衝撃舞台 Smash Stage」では、インディというかローカルというか、各演者が親密な盛りあがりを見せたりしていた。ほかにも韓国とタイのバンドが出演していて、過去にも日本のアーティストが出演しているのだとか。
初日のメインステージのトリは「怕胖團 Papun Band」。じつは公園の外にまでのびた長蛇の列は、このバンド目当ての観客たち。「能量舞台」に入りきれなかった人々が後方の丘にぎっしり鈴なりになって、轟く演奏にあわせて野外ステージの客席もふくめゆうに1万人以上が大合唱している光景は、圧巻をとおり越して、痛快。みんな満面の笑顔で、全力で、手をふり体をよじらせて、声に声を重ねてシンガロングしている。開演直後にはスマホがビィビィと緊急通知を受けとって、繁体字の漢字の列を読み解くに、ステージどころか公園自体が入場規制されました、と。とにかく人気。とくに最後に演奏した曲「魚」で大合唱するのが、サライじゃないけど恒例みたい。一度聴けば耳に残るメロディに言語は関係ない。その光景を目の当たりにできただけで、もう、来た甲斐があったというか、旅費の元はとれたようなもん。まったく本人たちを見てないけど。