• フジロック大道芸人チーム・リーダー 芸人まことインタビュー


    いよいよフジロック目前。前夜祭へのカウントダウンが始まりました! 毎年フジロックの前夜祭から最終日まで、多彩なパフォーマンスで私たちを楽しませてくれる大道芸人チームのみなさん。今年は史上最多の12組14人が出演します。fujirockers.orgでは大道芸人チームのリーダーである芸人まことさんに、お話をうかがいました。芸人まことさんの巧みなトークとともに繰り出される、ダイナミックなファイヤーショーやジャグリングを見かけたことのあるフジロッカーは多いはず。大道芸人としての25年のキャリアの大半をとおして、フジロックに参加し続けてきた思いを語っていただきました。

    Photo courtesy of SMASH

    Photo courtesy of SMASH

    芸人まこと(The大道芸人)「ございんまつり」- とおがった大道芸272023・サテライトステージ – 2023/06/03
    https://www.youtube.com/watch?v=RemyAz27jlg

    ひとりで参加した1999年。日高さんから「好きなところでやっていいよ」と言われて

    2

    ─ 芸人まことさんがフジロックに参加されるようになったきっかけを教えてください。

    フジロックにはコロナで開催されなかった2020年と、あと1回参加を休んだ年以外は苗場で開催が始まった1999年からずっと参加しています。1999年にスマッシュの日高(正博)さんが、フジロックに大道芸に呼びたいということで、スマッシュ・ロンドンのジェイソンが新宿に大道芸人を探しに来たんです。

    そのとき僕の友達が大道芸をしていて、パフォーマンスが終わったら、ジェイソンが友達に「フジロックで大道芸をやらないか?」と話しかけていました。友達はロックとは無縁みたいなやつで、友達がその話を断りかけていたんです。僕は全く英語喋れないんですけど、フジロックっていう単語だけは聞こえてきたんですよ。ジェイソンに「え、何かフジロックでやらないかって言ってる?」って聞いたら「言ってる」っていうから、熱意だけで「俺もパフォーマーなんだ」「俺はフジロック好きだから、見て」と伝えて、その場でジェイソンにパフォーマンスを見せました。

    その結果、スマッシュに行って日高さんに会って、フジロックに行くことになりました。2年目は日高さんに年明けから連絡してみたんですけど、いつも不在で全然繋がらなくて、6月に日高さんから電話がかかってきて、「もしもし、何度か電話もらってごめんね。今年もよろしく」みたいなノリで決まって、最初の3年ぐらいは、日高さんと直接やりとりしていました。フジロックが大きくなっていって担当者は変わりましたけど、安定的に出演させてもらっています。もう20年以上やっているので、当然のように「今年も行くんだろうな」と思っているし、フジロックでパフォーマンスできることは僕の一要素になっていますね。

    ─ オファーは日高さんのアイデアだったんですね。フジロックのモデルになった英国のグラストンバリー・フェスティバルにも大道芸人がたくさん来ていますし、サーカスやコメディのテントもありますので、とてもうなずけます。最初はどれくらいの人数でフジロックに来ていたんですか。

    一番最初は僕ひとりです。最初はめちゃくちゃアバウトだったんです。日高さんが「好きなところでやっていいよ」と言うので、自分で勝手に場所を見つけてやっていました。周りに出店もあるし、「なんかうまいことやってよ」っていうスタイルでした。僕、元々ロックが好きで、第1回目の富士山のフジロックにめちゃくちゃ行きたかったんです。でも、そのときびっくりするぐらい貧乏だったので、行けなくって。2回目は街中(豊洲)だなと思って、あんまり惹かれなかったけれど、苗場に行かせてもらって楽しかったので、ちょっと次の年は誰か誘ってみようと思って、しゅうちょう(大道芸人チームのメンバー)を連れて行ったんです。毎年、「今年はこれでいきます」って僕が選んでメンバーを増やしています。大道芸は狭い業界なんで、メンバーはもともと繋がりのある人や、友達から勧められて、実際に見て面白かった人に声をかけています。いままで芸人の数は10組が最多だったんですが、今年は12組14名です。メンバーには「仕事として稼ごう」みたいな意識で来られても困っちゃうので、フジロックというフィールドを楽しめるメンバーを選んでいます。

    大道芸なので、やっぱり、たまたま出会うかたちであってほしい

    4

    ─ 今年は前夜祭と、あとどのあたりで大道芸が見られるでしょうか。

    基本的にはオアシスエリアのやぐらのところと、ところ天国。あとイエロークリフ、オレンジカフェです。あと、アヴァロンのちょっとハンモックとかがある森林の辺りとか。例年通りだったら、こんな感じだと思います。

    ─ タイムテーブルは決まっているのでしょうか。

    制作側から、「誰がどんなタイミングでやっているかを知りたい」って言われますし、大道芸をお目当てに来てくれるお客さんも増えているので、タイムテーブルを組むんですけど、結局雨でできなかったりとか、他のライブやお客さんの流れの兼ね合いでうまくいかないときもあります。メンバーみんながなるべく平均的にパフォーマンスできるようにしたいので、現地のその場で臨機応変に変えています。短めの演目をいっぱいやるメンバーもいるので一概には言えないんですけど、どのメンバーも1日2回以上、雨などがなければ3回できればと思っています。さっき挙げた5ヶ所ぐらいのところをちょこちょこ見て回ってもらえると、いろんな大道芸が見られます。今年は当日書き込めるようなタイムテーブルを作ろうかなと思っています。ただ大道芸なので、やっぱり、たまたま出会うかたちであってほしいです。

    ─ フジロック期間中はどのように過ごされていますか。

    以前は苗場プリンスホテルを取っていたこともあるんですけど、予算的に厳しかったので、10年ぐらい前に何人かの芸人でお金を出し合って、ちょっと立派なテントを買って、キャンプサイトに泊まって、ごはんもそこで普通に食べています。

    ─ キャンプは大変ではないですか? 例えば2019年は豪雨に見舞われましたが、大丈夫でしたか。

    そうですね、最近はあまりないけど、たまに朝7時ぐらいからテント内が灼熱地獄みたいなときがありますね。2019年の豪雨は僕らが寝ているところは大丈夫でしたが、テントが雨漏りして一晩中顔に水滴が落ちてくるので、鉄板を顔の上に乗せて寝たりしました。

    フジロックは朝まで飲めてしまうので、初参加とか2年目のときは、グダグダ過ごして、夕方ぐらいから何回かひとりでやればいいみたいな感じだったんですけど、今は僕がメンバーを呼んで、タイムテーブルを組んでみんなのケアとかフォローもして、昼から動いているので、その分夜寝るようになりました。

    ─ 普段の活動と比べて、フジロック特有の雰囲気を感じることはありますか。

    ホームグラウンドは横浜で、横浜や東京で許可を受けて大道芸ができる場所や、出演依頼されたイベントでパフォーマンスしています。あとは全国の大道芸フェスティバルのオファーが年間10本ぐらいあります。

    日本の場合はお客さんが最初は斜に構えたり、「私、関係ないですよ」みたいな位置で観る人たちが結構いるんですけど、面白いことをやったり、すごいことを見せたりすると、クローズマインドだったのがオープンマインドになってくるんです。最初は引いてるけど、だんだん打ち解けてきて、そうなったお客さんっていうのは結構最後までいい味方でいてくれる。

    フジロックや海外でのパフォーマンスだと、お客さんが立ち止まった以上、最初から楽しむぞっていう空気があります。初期のフジロックって、パンクキッズとか、ライブにすごく思い入れの強い人がいっぱい来ていたので、こっちが「フジロック!」って叫んだら「ウォー!」って盛り上がったり、そういう意味でやりやすくもあるけど、「時間だ、行こう」みたいなこともある。それは当然のことだけど、普段と比べると「ここまで盛り上がっていたら、これぐらいお客さんの心がつかめてる」という手応えが、フジロックでは測れない部分もあります。

    夏フェスがずいぶん広がってきたなと思った頃から、お客さんと喋るとフェスに参加するのが初めてどころか、ライブも行ったことがないみたいな人にも会うようになって、割と普通っぽい、横浜でやっているときのような空気感のお客さんも結構増えたなと感じています。前夜祭から来る人は、全部楽しもうとする人が多いですね。一日券のお客さんもいるし、いろいろだなという印象です。

    ホームレスから大道芸人へ。バイタリティーあふれる転身

    1

    ─ 芸人まことさんが大道芸の道に飛び込んだのは、どんなきっかけだったのでしょうか?

    25年前、21歳のときにホームレスだったんです。そのとき名古屋に住んでいて、風俗嬢のヒモをしていたんですが、彼女が「私、大阪に行く」って言い出して。多分「別れよう」って意味だったと思うんですけど、大阪までついていって、少し経ったら振られたんです。最後に彼女から「これで」って言われて1万円を渡されたんですけど、多分あれはね、地元に帰るお金だったと思います。ヒモといっても、お金をもらってたわけじゃなくて、日々食わしてもらっていたみたいな感じだったんだけど、現金1万円が嬉しくて、漫画喫茶とかに行ってすぐに使い切って、大阪でホームレスになって、4ヶ月間ダンボールで寝たりしていました。

    そんな折に、街中で風船でプードルとかを作って売ってる子を見つけて、知り合ったんです。「ちょっとお金になるから、真似しよう」と思って、風船を買って、大阪のロフトの前で作っていたら、女子高生がやってきて、「これ売ってるの?」って聞かれて、「(値段は)お気持ちで」って言って初めて風船を売って、その日1日で60個ぐらい売れたんです。東京だったら平日でも人がいるんじゃないか? と風船を売ったお金で東京に行って、下北沢で風船を売り始めました。それからもホームレスみたいな生活をしていたんですけど、風船を売って生きていたら、しゅうちょうに話しかけられたりして、大道芸は風船より儲かりそうだと思って、大道芸を始めました。

    ─ 大道芸を始めるとき、誰かに弟子入りをされたんでしょうか。

    独学です。最初からファイヤーショーをやっています。フジロックでやるのはファイヤーショーと、ジャグリングをいくつかと、マジックって感じですかね。

    ─ 普段のパフォーマンスでもフジロックでも、お客さんはパフォーマンスを観て「すごいな、面白かったな」という気持ちを投げ銭で示しますよね。昨年からフジロックでは出店のお会計が完全キャッシュレス化しましたが、なにか影響はありましたか。

    そんなに変わらなかったですね。若い子はキャッシュレス決済のみになっている人もいますけど、フジロックは比較的お客さんの年齢層も高いし、僕の周囲はやっぱり不安だからか現金も持ってる。メンバーはそれぞれが個人事業主ですから、PayPayなどで投げ銭を受け取れるように登録している人はいます。僕は電子マネーの対応はやってないんですけど、ネットショップで僕らの画像とかを投げ銭代わりに買ってもらえるQRコードのボードを掲示していると、そこから買ってくれるお客さんもいますよ。

    「ありがたいな、生かされてるな」と思ってやっているだけ

    ─ フジロックで大道芸チームのパフォーマンスを観ると、みなさん華があって、普通の人にはとてもできない、磨き抜かれた芸で食べていることに誇りを持っているように感じます。

    それほどでもないですけどね。本当にいい加減にやってるんで。みんなにも言うんですけど、僕は甘い世界だと思ってるので。

    ─ 注目されて輝いて見える反面、シビアな面もあるのではないかと思うのですが、甘い世界とはどういうことでしょうか?

    なんだろう。世の中には演劇とかお笑いとか音楽とか、いろんなエンターテイメントがあるけど、大道芸はその中で限りなく分母が少ないから生きていけると思っているんです。その道の最上級が100点だとしたら、僕は10点ぐらいしかやってないのね。しかも大道芸ってつまらない人は帰っていくし、楽しんでる人だけが残っていくシステムなんで、空気が悪くなることもない。だから気持ちよくできるし、甘い世界だと思ってるんですよ。

    もちろん昔より分母が増えてきてるし、技術のレベルも上がってきている。だんだんだんだん変わってくるとは思うんですけど。誇りというよりは、死ぬほど大道芸が好きですから。「ありがたいな、生かされてるな」と思ってやっているだけなんで、感謝しかないですね。

    ─ 将来の展望を聞かせてください。

    僕自身は気楽にやっているんですが、去年から大道芸を教えている子がいて。その子は元々ステージでマジックを11年ぐらいやっているマジシャンなんですけど、大道芸も始めたいって言われて、教えています。その子が成長してうまくなってくれたらいいなと思って見守っています。

    ─ 今年のフジロックへの意気込みをお聞かせください。

    今年は久々にフジロックらしいフジロックになると思っています。コロナ禍、特に2021年はほとんどのイベントが中止になっていくなか、「フジロックに行けばなにかがあるんじゃないか」と思って、救いを求めるような気持ちでフジロックに行ったんです。あの年、来たお客さんの数が少なかったし、お酒もなければ、ごはんも黙食で、オアシスエリアとかでのんびりしている人が全くいなかった。やれただけありがたかったですけど、あまりにいつもと違ったので、逆にフジロックの方がコロナ禍を感じさせられた思いがありました。

    今はコロナが5類になって街で大道芸をやっていても、4割ぐらいはもうマスクしてないなと思ったりします。それがいいか悪いかわからないですけど、だんだん戻ってきているなと感じています。きっと僕も含め、いろんな人がここ数年鬱々としていたぶん、今年のフジロックでは全部ぶっ飛ばしたいです。

    ─ 全部ぶっ飛ばす勢いのパフォーマンス、期待しています。ありがとうございました!

    3

    Interview & Text by 平川啓子

    【関連リンク】

    フジロックをさらに楽しむ!MORE FUN ACTIVITY
    https://www.fujirockfestival.com/news/detail/4427

    2021年のパフォーマンスの様子
    http://fujirockexpress.net/21/p_1210

    2019年のパフォーマンスの様子
    http://fujirockexpress.net/19/p_6692

    【芸人まことさん出演予定のイベント】

    アートタウンつくば大道芸フェスティバル2023
    https://arttown.amebaownd.com/

    開催日時
    2023年8月26日(土) 12時00分〜21時00分
    2023年8月27日(日) 10時00分〜21時00分

    開催場所
    つくばエクスプレス 『つくば駅周辺』
    (つくば中央公演通り、エキスポセンター前、水上ステージ)

    【今年のフジロックに参加予定の大道芸人チームのメンバー】

    芸人まこと
    https://twitter.com/makotofire

    しゅうちょう
    http://p-jam.net/~shu/

    SUKE3&SYU
    https://twitter.com/Suke3Syu

    ボールド山田
    https://twitter.com/baldyamada

    マサトモジャ
    https://masatomoja.jimdofree.com

    EPPAI
    http://www.anglipogachan.net/eppai.html

    アストロノーツ
    https://cocu38.wixsite.com/astromotive

    川村建太
    https://twitter.com/Tsubaki16219914

    フレディーノ
    https://twitter.com/Y8CjINPdNWwIhgP

    Performer SYO! 
    http://performersyo.com

    ゼロコ
    https://www.zeroko.net

    加納真実(仮) 
    https://twitter.com/kanomami_blue

Fujirock Express
フジロック会場から最新レポートをお届け

フジロッカーズ・オルグ盤『フジロッカーズの歌』7インチアナログEP

フジロッカーズ・オルグ盤『フジロッカーズの歌』7インチアナログEP

bnr_recruit

bnr_recruit
PAGE TOP
301 Moved Permanently

301

Moved Permanently

The document has been permanently moved.