• 訪れた人を魅了するウンカイナチュラルキャンプとは?規模感と距離感がもたらすスペシャルに満ちたフェスティバルの記録


    もちろん忘れちゃいない!多種多様なライブアクトたち

    音楽フェスに行っておいて、音楽とは関係ないことをさんざん語ってしまったので、「やっぱり知らない出演者が多いし、ライブは二の次だったんじゃ?」と思われそうだが、全くそんなことはない。筆者がもともと知っていたのは、「GOMA」と「蓮沼執太×ユザーン」だけだったけど、他の出演者に関してはあえて予習ゼロで臨んでみた。その場でどんな出会いがあるかを楽しみたかったからだ。これは、フジロックのようなフェスではなかなか出来ない過ごし方だろう。あれも見なきゃこれも見なきゃと忙しい大型フェスの焦燥感は幸せで贅沢なことだが、ここでは焦りとは無縁だ。

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    地元のかあちゃんたちで結成され、その子供たちも歌って踊るもんぺーずのゆるーい演奏を皮切りに、寝っ転がらずにはいられなかったアンビエントのHaco×Jesse Perlsteinや、バリバリの関西ファンクでねっちこくアレンジされた「愛の賛歌」でいとも簡単に会場を沸かせたザ・たこさんなど、音楽性も実にさまざま多種多様。

    ライブステージは森の中の坂を少し下ったところにあり、自然をダイレクトに感じられる場所だ。土のにおいを感じ、空気の冷たさに気を取られ、夜にはまわるミラーボールの光を浴びながら、目の前で鳴らされる音楽に体を満たされるとき、楽しさに身震いするように感極まって泣きそうになったりした。

    ロックンタスケロール & ザ・キャプテンスウィング

    ロックンタスケロール & ザ・キャプテンスウィング

    ロックンタスケロール & ザ・キャプテンスウィング

    ロックンタスケロール & ザ・キャプテンスウィング

    そんな感情を演者も持っていたんじゃないかと思う場面もあった。森の中を縦横無尽に動き回りゴキゲンなサウンドを鳴らす「地獄から来たサーカス団」ロックンタスケロール&ザ・キャプテンスウィングは、終盤に「明日から絵にもならない日常がまたやってきます。みなさまのそんな日常を応援しています。」と語って観客の心を掴んでいた。(ピエロが怖くて泣いちゃった女の子をのぞいて。)

    Mahina Apple Band

    Mahina Apple Band

    Mahina Apple Band

    Mahina Apple Band

    伸びやかな歌声と踊れるサウンドで気持ちよく体を揺らしてくれたMahina Apple Bandのボーカル・マヒナアップルは、MCで「昨日仕事クビになったんですけど(!)、けど今日すっごい楽しくて、こういうところでクソみたいな日常忘れて踊れれば最高じゃん」と笑っていたのが痛快だった。

    演者たちにもここで見せる姿とは違う日常があって、それには少なからずの憤りが伴っている。彼らが自分たちと同じような感情を抱えながらここにいて楽しんでいるというリアルを垣間見せる距離感も、この規模のフェスだからこそのいいスパイスなのかもしれない。日常と非日常を行き交う中で、自分が何を喜びとして生きているのかをわからせてくれる時間が存在していた。

    GOMA

    GOMA

    もちろん、そんな中でのベテラン勢の存在感はすさまじく、「そこにいるだけでストーリー」と言いたくなるようなGOMAのディジュリドゥは、相変わらず生命力をビンビンに響き渡らせていて圧倒的であった。

    蓮沼執太&U-zhaan

    蓮沼執太&U-zhaan

    蓮沼執太×ユザーンは寒さに構え、前アクトのザ・たこさんのときよりお客さんが立っていなくて盛り上がっていない、と序盤は本人たちが気にしていたのもなんのその、ダブルアンコールが終わるころにはもちろん全員総立ち、森の中のダンスフロアに熱気を帯びさせていた。そんな有名どころが超間近で見られるのもとても贅沢だ。

    the engy

    the engy

    そして大ラスを飾ったthe engyは、アンコールをバチバチに盛り上げた後のダブルアンコールに、「さっきのでいつも終わるから曲考えてないんだけど…。」と困惑しつつも、「よっしゃー!もう一曲やるぞ」と叫ぶ姿は喜びに溢れていて、その喜びがみんなに伝染したように実にあたたかなムードの大団円となった。

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    これらのライブに加えて、1日目の夜から2日目の朝にかけてDJエリアが2ヶ所出現するので夜遊び好きも飽きないであろう。筆者は両日とも焚火の前で寝落ちしたため夜遊びは楽しめなかったが、夜型にシフトして夜通し踊り狂うのもいいすごし方だなと思っている。

    この規模感と距離感がもたらすもの

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    DJのプレイを耳にしながら焚火を囲み、ライブがはじまればふらっと森の中へ。基地に戻って火に放り込んであった焼き芋にかぶりつき、腰を下ろしてまた火にあたる。大した計画もせず、気ままにそのときのおもしろそうな方に誘われていく。そんなゆったりした時間をすごした2日半。オーバーナイトでキャンプした2日目の夜には、近くのテントで出演者たちがギターを弾いて宴をしていた。

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    帰り際、一緒に行ったスタッフに「もう少し有名どころが出てくれたらもっと楽しいかもね。」と話したところ、「けど、そうしたらこのフェスらしさが薄まってしまうんじゃない?」と言われてハッとした。もっと有名なアクトが出て、もっと人が集まるほうがイベント的には成功なのだろうけど、でも今だからこその空気も残ってほしい。この規模だからこそ自分たちのとっておきにしておきたい。そんな欲が出てくる。同じフェスティバルという催しでも大型フェスとはまるで趣の違う充実感がここにはあった。

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    「このフェスなんでこんなに楽しいんだろうねーーー?」
    と、東京に戻る前の少しの時間、スタッフたちで酒を交わしながらそう言って笑った。その「なんで?」がまだまだ知りたくて、また足を運んでしまうんだろう。撤収に時間がかかって、観光のひとつも、地元の名店に行くこともできず終いだった悔しさも、来年のために取っておくことにする。

    Unkai Natural Camp(ウンカイナチュラルキャンプ)
    https://natural-camp.jp/
    https://www.instagram.com/naturalcamp/
    https://twitter.com/naturalcamp
    https://www.facebook.com/naturalcamp/

    Text by 東いずみ
    Photo by HARA MASAMI、Ryota Mori

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