松村雄策さんを偲んで
- 2022/03/15 ● Column
Twitterを見ていたら文筆家の松村雄策さんが亡くなったという知らせが飛び込んできた。音楽雑誌「ロッキング・オン」で長らく連載を担当されていた松村さんはフジロックにも深い関係がある。今から約20年前、フジロッカーズorgのインタビューにも登場していただいた。都心から離れた府中の居酒屋で話は尽きず、終電を逃してしまったくらいだった。
そのとき印象に残ったのは、ビートルズのジョン・レノンとポール・マッカートニーのどちらが好きかという、おそらく松村さんに何百回と浴びせられた質問に「下らない」と切って捨てて、答え慣れている様子で「ビートルズには世界で一番偉い人が二人居たんだよ。それでいいの」といい、ソロになってからの作品はどちらを聴く方が多いのかという問いにも平然と「同じくらいだよ」と即答していたことだった。
そして、そのときにご自身でステージに立たないのかという質問をしたのだが、それがなんと14年後に実現することになる。2015年のジプシー・アヴァロン、水橋春夫グループのゲスト・ヴォーカリストとして「裏切りの季節」「薔薇卍」「黒い鳥」を歌ったのだ。2001年のインタビューでもジャックスの早川義夫を観たいと語っていた(早川義夫のフジロック出演は2004年に実現)けど、同じくジャックスの一員だった水橋春夫と一緒にステージに立てたことは感慨深いものだっただろう。グリーンステージではフー・ファイターズがやっていたので、ステージを観ている人は少なかったけど、熱のこもったステージをみせてくれた。
文筆家としての松村さんの魅力・功績に関しては多くの人が語るでしょうから、ここではフジロックとの関わりだけに止めさせていただきたいと思う。ご冥福をお祈りします。
(※1)本文中の松村さんの著書名に「それがどうした血が吹く」とありますが正しくは「それがどうした風が吹く」でした。お詫びいたします。
text by イケダノブユキ
photo by 小西泰央