• 非日常体験を創るサーカス一家の日常 さくらサーカス グランドオープン!


    時間を忘れて夢中になった後の、心地よい疲労感が勲章のように残っている。海の日の7月23日、和歌山県は日高郡、印南(いなみ)町の特設テントにて開催された、大家族サーカス団「さくらサーカス」のグランドオープン公演。2年前のこの日、フジロックの前夜祭を賑やかし、パレス・オブ・ワンダーの非日常を彩ったマルチネス・ファミリーによる「さくらサーカス」の旗揚げだ。ハラハラドキドキ、手に汗握るスリリングなパフォーマンスに、集まった観衆はマスクの下で驚嘆の表情を浮かべていたに違いない。

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    生のサーカスをほとんど観たことがない僕は、未知なる期待感を胸に和歌山への道を行く。ありふれた田舎道の途中、突如桜色のテントが見えた瞬間、さながら苗場のキャンプサイトが見えた時のように一気に視界がヴィヴィッドに輝きだす。テントに入ると小さな子からおじいちゃんおばあちゃんまで様々な人々が集まっている。キャパ500人ほどの大きなテントの中という非日常も相まって、初夏のジメジメも何だか愛おしい。初日のバタバタもあり少し開演が遅れるものの、どこか清々しい気持ちでサーカスは始まりを迎えた。

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    開幕一番、大きな球の中をバイクが猛スピードで回るパフォーマンスから、早速釘付けになる僕ら。宙を舞うクラブを2人で奪い合いながらのコミカルなジャグリングや、観客をピックアップして何やら始まる一幕など、次々に何が起こるかわからない怒涛のステージが展開される。団長のアラン・マルチネスさんも登場した綱渡りでは、綱の上でアランさんの上にさらに人が乗ったりと、思わず祈るポーズをとってしまうような光景が繰り広げられる。時折現れるピエロの身振り手振りも観衆のワクワクやソワソワをそのまま表象し、僕らは興奮の渦に巻き込まれていった。生でサーカスを体験するということはこれほどまでに想像と違うのか。

    休憩を挟んだ後半では、二つの円が縦回転する内外を2人の演者がグルグルと回るパフォーマンスからスタート。思わず「危ない!」と叫んでしまいそうな展開の中でも、バシッと決まったときのカタルシスがたまらない。大掛かりな装置の転換の最中でも、熱がそのまま伝わってくる臨場感のある火吹きのパフォーマンスや、客席に飛び込んだ首輪投げなど、片時も僕らを飽きさせないサーカス団の面々。一方で最速で確実に転換をこなす裏方の尽力も見逃せないポイントだった。そして、寝転んだダビッド君の足の上で、嵐君が宙返りを続ける足技アクロバット。世界中のフェスティヴァルで金賞を総ナメにした、アランさんの息子たちマルチネス・ブラザーズによる絶技には、憚られると理解しつつも思わず歓声をあげる僕ら観衆の姿があった。とりわけ13歳にして堂々たるカリスマを放つ嵐くんは、集まったちびっ子たちにはヒーローのように映っただろう。

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    終盤に差し掛かると、アランさんの妻、尚恵さんによる旗揚げの挨拶が始まった。7年前にここ印南の地に土地を買い、支え合いながら積み上げてきた待望の日。まるで結婚式のスピーチのようにお世話になったひとりひとりに感謝を告げる姿は、この地で育まれてきたものを知らない僕でさえ感慨深いものがあった。昨今の状況で来日が叶わなかったスタッフもいたようで、その代打として急遽手伝ってくれた方もいたり、ステージに立つ演者も売り子を兼任していたりと、まさに一丸となって作り上げたステージ。暖かい祝福の気持ちが会場を包んでいた。挨拶の裏で準備が完了し、最後はサーカスの花形空中ブランコ。頭上を見上げるド迫力には圧倒されっぱなしで、興奮冷めやらぬまま「さくらサーカス」の初演は大団円を迎えた。

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    終演後、尚恵さんは「これから反省会です!」と息巻いていたが、初日ということもあり課題も残ったのだろう。しかし、ヒヤヒヤさせる失敗の演出なのか、本当に失敗した後の見事なリカバリーなのか、僕にはまったく区別がつかないほどの素晴らしいパフォーマンスがここにはあった。これは彼らのショーマンシップがなせることでもあるとともに、ここに集まった近隣の人々や協賛企業の方々、印南の町との一朝一夕ではない熱い信頼関係のあらわれだったのではないだろうか。

    良かったことも悪かったことも全部ひっくるめながら、非日常体験を創り上げる彼らの日常、印南公演は10月11日まで続く。ここに溢れている興奮や熱気、感動の体験は印南の地まで足を運んでこそ感じられる。次はぜひあなたにも体験してもらいたい。

    Photo by Koichi Hanafusa
    Text by 阿部仁知

    Information

    sakuracircus2020

    SAKURA CIRCUS 印南公演
    2020/7/23(THU)〜10/11(SUN)
    特設会場/和歌山県日高郡印南町大字宮ノ前307

    [チケット購入・お問い合わせ]
    SAKURA CIRCUS 印南公演事務局
    TEL:050-8880-6545
    FAX:050-3451-8540
    MAIL:contact@sakura-circus.com
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