フジロックが与えてくれた愛と人生の選択、カメラマンみやちとーるインタビュー
- 2019/06/21 ● Interview
フジロックでかけがえのない思い出を作ったり、毛穴が全部開いちゃうぐらいの衝撃を受けた方もいることでしょう。カメラマンのみやちとーるさんもそのうちの一人。彼は関西でフジロックの写真展を12回も行なっているツワモノだ。なぜ彼が12回もフジロックの写真展を行うことが出来たのか、その原動力や過去にあったフジロックとの出会いや想いを聞いてみました。
─ はじめにみやちさんの自己紹介を。普段どんな写真を撮っているのかお聞きしていいですか?
はい。元々は撮影スタジオに勤務していたのですが、退職し三重県でステキ工房という撮影スタジオをやっています。パンフレットや雑誌の撮影や七五三や成人式の写真なんかを撮ったりしています。
─ みやちさんの写真展のパンフレットを見ていて勤務されていたスタジオを退職された理由のなかに、フジロックの存在もあったというのを見ました。
スタジオを退職した理由はいくつかあってフジロックだけでは無いのですが、2003年のフジロックにミッシェル・ガン・エレファントが出ていたので観に行きたかったんです。ただ、関西から行く事を考えると5日は休みが必要で、ミッシェルもフジにはよく出ていたので諦めたんです。そしたら、その年の秋にバンドが解散してしまって。「やっぱり、あの時に行くべきだった」と悔いが残りました。フジロック自体にも憧れがあり、なおかつ自分の好きなバンドだったので「人生行きたい時に行かないとダメだ」と当時思い知らされましたね。
─ なるほど、それはかなり悔いが残る話ですね。それで、その翌年から行くようになったわけですか?
そうですね。翌年の7月20日に会社を退職して、その数日後にはバイクでフジロックに向かっていました。
─ フジロックの写真での写真展というのはいつ頃から始めたんですか?
写真展は、2008年に宇宙大使☆スターさんと大阪のKARMA(カーマ)っていう今は閉業してしまって、フジロックの期間中だけ会場内で出店しているお店で、SMASH主催で『Enjoy FUJI ROCK ! Photo Exhibition in WEST』というタイトルでやらせてもらいました。
─ そこから継続して毎年写真展をやるようになったわけですね。毎年行きたくなる理由っていうのはなんでしょう?
2004年に初めて行った時の衝撃ですかね。前夜祭を終えて本編初日金曜日、一番初めにみたのがグリーンステージで演奏していたPE’Zでした。自分の目の前に何千、何万という人がたった5人が鳴らしている音を聞いて体を揺らしている。ステージの後ろには緑の山があって青空があって、さらにそれは僕の後ろにまで続いている。その時に自然の中で音楽を共有している姿を見て初めて「音楽でピースってこういうことなんだ」と感動しました。それからフジロックが僕にとって心地よい空間になりました。社会で人と合わないこともフジロックでは許容される。みんな違って当たり前、楽しくこの空間を共有しよう。という雰囲気がすごく心地いいです。行ったことがない人でも、もっとみんなフジロックを知って行ってもらったら、わりかし世の中平和で良い方向に行くんじゃないかと思います。だから、僕の写真展で行きたいって思っている人の後押しになれば嬉しいです。
─ そうですね。そうなると素敵ですね。写真展のタイトルが「Thank you fujirockers!!!」ですが、これにはどう言った意味合いがありますか?
フジロックってSMASHが用意してくたフェスでアーティストのラインナップや会場内のデコレーションがあったりするんだけど、あの楽しくてピースフルな雰囲気ってお客さんみんなで作っていると思っていて。フジロッカーズにありがとう。という意味を込めてこのタイトルにしました。
─ 撮影をしている時に普段とは違う頭の使い方だったり、気にしていることってありますか?
12年目なので、言ったらマンネリするじゃないですか?「以前にも撮ったよなー」とは思うこともあるけど、撮りたいと思った写真は素直に撮るようにしています。テーマは有る時と無い時に両方あります。それと、とにかく楽しむようにしています。撮ることに集中しすぎないことですね。楽しく過ごす中で撮影をして再編集をしてみんなに見せる。という風にしています。
─ 同じような写真でも撮りたかったら撮る。良いですね。確かに思い止まって撮らないことって僕には良くあります…。
シャッターを切ろうと思って思いとどまるのではなく、今は今しかないので、例え同じようであってもそれは違う写真だと思っています。僕には2回目でも他の人は僕の写真を全部見ているわけでもない、それに好きなものってそうそう変わるわけでも無いじゃないですか?よく似たシチュエーションで撮るのは当たり前のことで、それが自分だと思います。
─ 勉強になります!僕もそうします!これまで会場内でたくさん撮影してきたと思いますが、特別気に入っている写真とかはありますか?
うーん、難しいですね。これ!っていうのは出てこないかも。
─ なるほど。一つに絞るというよりかは全て好きだと、そういうことですかね。
うん、撮ってる時は今この瞬間が良いと思って撮っているわけで、仮に構図が完璧でなくても僕にとっては良い写真で、シャッターを切ってる以上、全部良い写真だと思っています。ただ、人に見せる時に適しているかは別で、セレクトして並びを変えたりはします。
─ 22日のイベントから写真展が始まります。フジロッカーズオルグ関西のフジロカーズ・バーとコラボで今回もやるということなんですが、開催に至った経緯を教えてください。
会場が一緒なんですよね。大阪のbigcakeで展示をやらせてもらうようになって何年か経つんですけど、ギャラリーで展示するんじゃなくてもっと音楽が好きな人の近くで写真を展示したいと思って、bigcakeで展示させてもらうようになりました。そのあとにフジロッカーズオルグ関西もbigcakeでイベントを開催するようになり、僕も遊びに行くようになって、そこで話をしていくうちに「一緒にやりたいよね」っていう話になったのが経緯です。
─ そこでコミュニティーが生まれて始まったわけですね。最後にみやちさんからメッセージはありますか?
最後の締めは「苗場で会いましょう」ですかね。あとは、仕事や、交通費で二の足を踏んでる人に僕がいつも言うのが「人生には2通りしかなくて、フジロックに行く人生と行かない人生。この2通りしかない」っていうので、あなたはどっちを選ぶっていう話だと思うんですよね、フジロックに行くって。結局は自分で選べる。行けない理由はたくさん作れるし、なかなか難しいけど一番の優先事項にすれば必ず行けると思う。それだけフジロックというのは大きい存在で体験や衝撃があると僕は思います。
何かに魅了されてしまった人が語る時というのは本当に輝いていて、良いエネルギーに包まれているように見える。小っ恥ずかしげに、でも情熱を、アツく愛を持って語ってくれたみやちさん。今度はあなたが彼にフジロックの魅力を聞きに行っても良いかもしれない。快く受け入れてくれるでしょう。そんなみやちとーるさんの写真展『Thank you fujirockers!!! vol.12 〜嵐の夜を越えて〜』の詳細は以下です。フジロックに行きたいけど踏ん切りがつかない人は、彼の展示がそのキッカケを作ってくれるかもしれませんよ。
取材・文章:Taio Konishi
みやちとーる写真展
Thank you fujirockers!!! vol.12
〜嵐の夜を越えて〜
会期:2019年6月22日(土)〜6月30日(日)
土日:15時〜24時 / 月〜金:19時〜24時
※30日(日)は21時まで
会場:大阪 南堀江 bigcake
大阪市西区南堀江4−9−36 ジョエロ堀江1F
Tel: 06-6578-8010
http://bigcake.jp
南堀江のウエストエリア 日吉橋と玉造橋を結ぶ通り、コスモGS向かい
阪神なんば線「ドーム前駅」、長堀鶴見緑地線「ドーム前千代崎駅」より徒歩約7分
千日前線/長堀鶴見緑地線「西長堀駅」より徒歩約9分
南海汐見橋線「汐見橋駅」より徒歩約9分
阪神なんば線/千日前線「桜川駅」より徒歩約11分
入場無料
但し会場はBARにつき1オーダーお願いします(ソフトドリンクあり)。
新潟県湯沢町・苗場スキーリゾートでは20年目の開催となった2018年のフジロック。
「休めないなら辞めればいいんだ!」と勤めていた写真スタジオを退職して初めて行った2004年以来、僕にとって15回目のフジロックは、なかなかハードでした。
例によって水曜の夜に出て、木曜の前夜祭から月曜の朝まで現地4泊5日をキャンプで楽しみ、火曜日の朝に帰ってくるという1週間の旅となったフジロックは、土曜の晩に今まで苗場で経験したことがないくらいの嵐で、周りのテントも飛ばされ各所に深刻な被害が出るほどだったのですが、僕にとっては嵐よりももっと深刻なほどの体調不良で、フジロックの半分以上の時間をテントサイトで過ごしました。
喉の痛みもひどく、フェスグルメをほとんど楽しむことなく身体に優しそうなシチューやおかゆを求めて食べました。
多くの人が会場に繰り出し人の気配の薄くなったテントサイトで横になっていると、あぁ、あれも見たかったな、あそこも行きたかったなと想いを巡らせながらも、それでも、体調が悪いながらも今年もフジロックに来れて良かったなと、今年もここ苗場に帰ってこれて本当にありがたいと感謝の念に包まれていきます。
そしてしばらくするとグリーンステージやレッドマーキーから風にのって運ばれてくる音楽に誘われるように、ふらふらとカメラを持ってテントサイトを降りて行くのでした。
2018年はいつもに比べて写真を撮っている時間は少ないですが、それでも僕のカメラには沢山のステキな写真が収まりました。やっぱり今年も沢山の人にフジロックの写真を見てもらってその魅力を伝えたい!
カメラを携えフジロックを楽しむ中で出会った景色や出来事、そして人々と、写真撮影というコミュニケーションを通して交わり、そのコミュニケーションの結果の写真プリントを、会場いっぱいにはり巡らせます。
強烈な嵐が来てもイベントを中止することなくみんなで成功させた昨年のフジロックを思い出しながら、忘れがちな偉大なる大自然と共に生きていくということを見つめ直し、クリーンでお互いを思いやる気持ちで持続可能、循環可能なフェスティヴァルの形を一緒に思い描くことができたなら嬉しいです。
より写真展に親しみやすい様に、今年も、毎月fujirockers.orgが開催しているDJイベント「フジロッカーズ・バー関西」とのコラボ企画でOPENING PARTYを開催します。
一足早く夏の苗場に想いを馳せに来ませんか?
そしてこの夏、苗場で会いましょう!
OPENING PARTY ◉ 6/22(土) Start 17:00
フジロッカーズ・バー関西×Photo Exhibition Thank you fujirockers!!! ’19
入場無料(要1オーダー)
Facebookイベントページ
https://www.facebook.com/events/570904763433691/
関西フジロッカーズの根城・bigcakeで毎月開催されている、fujirockers.org主催のフジロックファンイベント「フジロッカーズ・バー関西」とのコラボ企画によるオープニングパーティーが今年も開催決定! DJ陣が繰り広げるGood Musicと昨年のフジロック写真に囲まれて、フジロックに行ったことがない人も、興味がある人も、行ったことがある人も、今年行く人も、そして今年行こうかどうしようか迷ってる人も、みんなでフジロックについて盛り上がろう!
みやちとーる / Tohru Miyachi
1975年三重県生まれ ステキ工房代表 写真家
2004年、「休めないなら辞めればいいんだ!」と写真スタジオを退職して初めて行ったフジロックの感動が忘れられず、単車でのツーリング、青春18切符での旅を経て、ここ7年ほどは車にテントを積んでとなっているが、相変わらず水曜の夜出発して火曜の朝に帰ってくるという1週間の行程を敢行。フジロックが3日間しかないだなんてもったいない! 苗場4泊5日を含む約1週間の旅が僕にとってのフジロック!
2008年に宇宙大使☆スターさんと共にスマッシュ主催のフジロック写真展「Enjoy FUJI ROCK ! Photo Exhibition in WEST」に参加。
その後も毎年『Thank you fujirockers!!!』シリーズの写真展を開催。
朝霧ジャム、りんご音楽祭フリーシェルター、伊吹の天窓などの野外フェスのオフィシャルフォトグラファーをはじめ、ライヴやアーティスト写真の撮影の他、広告、エディトリアル、家族写真など幅広く活動。
近年では、ライヴ会場や展示会場等で撮影した写真をリアルタイムでスクリーンに映し出し、撮る行為そのものを見せる新たな表現形態「ライヴシューティング」でイベントや美術展にも参加。
写真集「永遠の夏休み」を2010年に出版。
HP : https://sutekifactory.com
twitter : @sutekifactory
instagram : @sutekifactory
Facebookページ: みやちとーる(ステキ工房)