都市型フェスとは少し違う、フジロックの宿事情。
「4人1部屋、前夜祭から4日間宿泊」が原則の宿が多いため、
初心者にはもちろん、「1人では参加しにくい」との声も聞きます。
そこで、挑戦してみたいのが「宿シェア」。
数人で1部屋を分けることで、1人より泊まりやすく、さらに仲間もできるというメリットがあるそう。
その真相を探るべく、宿シェアで出会ったという2組にインタビューしてみました。
今回はそのうちの1組目について、宿シェア事情をお送りします。

宿シェアを募集した側：
まーさん（写真左）
40代女性　フジロック歴15年/宿シェア歴15年
【好きなアーティスト】!!!、The Chemical Brothers

宿を探していた側：
平凡さん（写真右）
20代男性　フジロック歴8年/宿シェア歴5年
【好きなアーティスト】小沢健二、SCOOBIE DO

シェアしている宿：
荷物預り所付近（会場徒歩圏内）、約10畳の部屋

見ず知らずのフジロッカー2人が、宿シェアメイトになるまで

─ お二人の宿シェアのきっかけを教えてください。

まーさん：私は、初めてフジロックに行ったのが2003年くらいなのですが、どこの宿をどう予約すればよいのか分からなくて。フジロッカーズオルグのBBS(※)に書き込んでみたら、宿を押さえている方に声をかけてもらって、8人の相部屋で泊まったのがきっかけです。そのメンバーと何年か一緒に宿に泊まったり、いろんな宿を転々とした結果、2007年ごろから自分で部屋を押さえて、シェアメイトを募集しています。
※当時は宿情報が少なかったため、BBSで情報交換などが行われていました。

平凡さん：僕は、2010年に初めてフジロックに行って。人生初めてのキャンプだったのですが、天候がむちゃくちゃ悪くて、ライヴ以外の部分で体力を消耗することが多かったんです。僕はなるべくライヴを沢山観て1日を満喫したいタイプなので、宿をとろうと思ったのがきっかけです。いっしょに泊まる友達がいないから、オフィシャルツアーの仮眠プランを利用した年もありましたが、会場により近い宿に泊まりたくて、5年前に初めて宿シェアをしてみました。まーさんの押さえている宿にお世話になっているのは、その次の年からです。

─ なるほど。宿の募集・応募はどのようにして行われているんですか？

まーさん：募集も応募もSNSですね。私は、mixiの「フジロック宿シェア募集」のコミュニティを使っています。自分から「募集しています」と書き込むこともあれば、「探しています」という人に連絡することもあります。

平凡さん：宿を探すときはmixiやtwitterで探しています。まーさんの他に宿シェアメイトを募集している人はいたのですが、会場との近さや、条件などを総合的に判断して、まーさんに連絡しました。

─ 応募者多数の場合、どうやってシェアメイトを決めるんですか？

まーさん：応募してきた人のmixiのプロフィールや、入っているコミュニティなどを参考にして、ピンときた人に決めています。

─ 平凡さんしようと思った決め手は？

まーさん：まず、ハンドルネームが「平凡」って面白いなと思って。そして、入っているコミュニティが「ワタナベイビー」とか「いとうせいこう」とか、20代にしてはシブすぎるんですよね（笑）。それが決め手で、会ってみたいと思いました。同じ部屋に泊まる予定の人たちにも賛同を得られたので、ぜひ！って感じでした。

平凡さん：そんなにシブいかなぁ（笑）。でも、エレファントラブとかは明らかに世代じゃないですね。音楽の趣味では、同い年よりも年上の人の方が合いやすいので、色々と語れる仲間ができてよかったです。

シブいセレクトに定評のある平凡さんのmixiコミュニティ（一部）

─ （笑）。宿が決まったあと、メンバーとの顔合わせは、どんな感じで行うんですか？

まーさん：いつも、「フジロック予習会」という名目の飲み会を事前に開いて、そこで顔合わせをするようにしています。事前にお互いのことを知っておいたほうが安心できますよね。フジロック終わってからは、お盆に反省会とか、年末に忘年会をすることもあります（笑）。

観たいものをそれぞれ観る！基本的には別行動

─ 4日間のうち、シェアメイトと一緒に過ごすことはありますか？

平凡さん：宿以外は、基本的に別行動ですね。朝食は一緒にとることもあります。

まーさん：宿を出ていく時間はバラバラ、帰っていく時間もバラバラですね。鍵はひとつだけなのですが、フロントに預けてあるので、「今から宿に帰ります」「鍵を預けて宿を出ました」など連絡はLINEで取り合っています。タイミングが合えば乾杯したり、観たいアーティストが合えば一緒に観ることもありますよ。

─ シェアメイトとの間で、トラブルは起きないんですか？

まーさん：それが、本当にないんですよね！みんな、マナーをしっかり守れる方ばかりで助かっています。そして、「来年も宿シェアしてもらいたい」って言われることが多い。宿は帰って寝るだけの場所なので、他人と一緒でも気にならない人が集まっているんだと思います。

平凡さん：これといったトラブルはないですね。僕は結構人見知りなのですが、全然知らない人と過ごすのに、人見知りを発揮することなく楽しく過ごせました。宿のメンバーは、シェアの中で出来上がったコミュニティだから、知らない人にも寛容なのかなって思いました。

持参いただいたタイムテーブル。初対面でも話題に花が咲く！

フジに行きたいタイミングを「宿」で逃してほしくない

─ お二人が考える、宿シェアのメリットって何ですか？

平凡さん：フジロックって、誰にでもオープンな場所だけど、初心者や音楽友達が少ない人にとってはハードルが高いんですよね。それに、会場からアクセスの良い宿って、常連のフジロッカーがキープしちゃっていると思うし。そういったときに、宿シェアって、とても有効な手段だと思うんですよ。

まーさん：うんうん。私は、「1人だから宿が取れない」とか「1日だけ行きたいけど宿がないから行けない」って人が泣く泣く断念しちゃうのがすごく残念で。できれば1日参加や2日参加で宿がないという人とシェアすることによって、参加できる人が増えればと思っています。色んな方と交流できるのも嬉しいので。そのぶん宿代の支払いとか、シェアメイトとの連絡も大変だけど、それも含めて楽しいんです。

─ なるほど。それぞれの視点からのお話、興味深いです。

平凡さん：だから、とくにフジロック初心者の人にはぜひ宿シェアをおすすめしたいです。時間に余裕のある大学生のときとか、観たいアーティストがいる年とか、観たいタイミングを宿が理由で逃してほしくないんですよね。行きたいと思った時に行くのが一番いい。

まーさん：結婚したら行けなくなったとか、子どもができたら行けなくなったとかもあるしね。これからも宿シェアを続けていこうと思うので、もし宿に困っていたら、ぜひシェア募集を探してみてください。

─ ありがとうございました。

インタビュー・文：梶原綾乃

まーさんの押さえている宿に泊まりたい方、募集！

上記を本文に記入の上、本記事のライター、梶原までご連絡ください。
満室などで、お受けできない場合がありますのでご了承ください。

※募集は終了しました。