雨と霧、そして泥が印象深かった今年の朝霧ジャム。テントの設営や足元に苦労した人が多かったようです。2つのステージ前は水浸しとなり、歩いていて、次の一歩を踏み出す場所に迷うほどでした。霧がなかなか晴れず、会場は白い壁に囲まれたようなミステリアスな雰囲気に。富士山はおろか、100メートル先が見えなくなってしまうこともありました。それでも、1日目はそれほど気温が下がらず、いったんは天候も回復。フリスビーにシャボン玉、バーベキューといった、いつもの朝霧の光景が見られました。

　そんな天候の中、びしょ濡れのテンションを上げてくれたのが、出演アーティストたち。トップバッターのチャラン・ポ・ランタンは、水浸しのステージ前に集まったおとなしめの観客たちを元気づける演奏で、ライブ後半にはすっかり自分たちのテンションに持っていき、シアターブルックが幻想的なシチュエーションの中で『パープル・レイン』を演奏すれば、霧が天然のスモークになって、紫の照明が映える演出に。2日間、残念ながら足元がよくなることはありませんでしたが、開きなおって裸足やサンダルで闊歩する人が続出。2日目のオイスカルメイツでは、曲に乗せられた観客たちがステージ前で、全身泥だらけになって踊る一幕もありました。

　そんな今年の朝霧ジャムでは、２日目のお昼ごろにようやく富士山が顔を見せてくれました。朝からだんだんと雲が晴れていき、足元を気にして下を向きがちだったお客さんが、誰かにつられて山をあおごうと、次々に顔を上げていく場面が印象的でした。ザ・スカタライツの演奏が中盤にさしかかるころには、富士山が夕日で、きれいな赤に。クレーンに乗ったカメラマンが富士山にカメラを向けると、お客さんが次々に振り返る場面もありました。陽気でハッピーな雰囲気から、クライマックスに向けて高まっていく会場の熱気。星が輝く夜空と寒さで冴え渡っていく空気が、さらなる高揚感をもたらしました。
　大トリを飾ったのはコンゴ・ナッティと、あらかじめ決められた恋人たち。離れたステージ同士で異なるジャンルの音楽がぶつかるような迫力のラストに歓声が鳴り止まず、予定より時間を押すかたちでステージは幕をおろしました。

　残念ながら天候には恵まれなかったものの、「自然に合わせてのんびりいくのが朝霧だよね」という声が聞かれた今年の朝霧ジャム。濃霧、びしょ濡れ、泥だらけ、それでも、マイペースに、タフにポジティブに音楽とアウトドアを楽しむ人たちの笑顔と歓声が、いつも通り響き渡る２日間でした。

Text by 高橋舞日

すべての写真は以下よりごらんになれます。