週刊フジ 〜初フジロック編①〜
- 2016/06/15 ● 週刊フジ
フジロック初体験記
初めてのフジロックを体験したのは2005年だった。一日券で最終日のみ。欲を言えば三日間参加したかった。だがキャンプ用品は持っていないしそれを扱う知識もなかった。いろいろ買うよりも宿泊費を払うべきなのか?などの疑問を明確にすればするほど支出予想が増えていった。当時学生だったので、とにかく先立つ物がなく、共に計画している友人達も頭を抱えていた。これは前もってフジロック貯金をしておくべきであったと悩んでいるうちに、車を出してくれる予定だった友人が不参加を表明。これをきっかけに色々と断念せざるを得なく、気づけば三日間はおろか一日だけの参加も諦めることとなった。
しかし、急遽他の友人から1日だけ車で行く予定でしかも席に空きがあると告げられた。詳しく聞けば私が一番見たい日に行く予定だったので、即参加の返事をした。十年以上前の事なので記憶が定かではないが、チケットを取ったのは7月中旬だったと思う。ギリギリだった。
初めてのフジロックの事を考えると、どうしても思い起こしてしまうのが、行くまでに苦心した記憶。おそらくこのような経験者は少なくないだろう。
そして迎えた当日、一日だけの参加だったので雨具を持っていかなかった。なぜなら天気予報は晴れだったからだ。もちろん山の天気は変わりやすいという話は聞いていた。だがこれまで生きてきて、身をもって体験したことは無かった。つまり聞いてはいたが知ってはいなかった。油断はのちに後悔を産んだ。
急に崩れた天候のせいで足元はぬかるみ、お気に入りの白いスニーカーは泥だらけ。一歩踏み出すたびに染み込んだ水分が不快な音を立てて滲み出す。天候が回復しても、苗場を後にしても靴の中は変わらず大惨事。たまらず帰りに駅の売店でサンダルを購入。スニーカーは洗っても元の白さには到底戻らず破棄することに…。この経験をしてからは雨具の備えは慎重に行うようになった。
一番記憶に残っているライブは2005年のジョン・バトラー・トリオだ。場所はフィールドオブヘブン。その時間帯は特にお目当てがなく、どの会場に行くか悩んでいた。すると偶然あった知人がこれからジョン・バトラー・トリオを見に行くところだと言うので、物は試しについて行ったのがきっかけだった。今思うとこの選択が大正解。CDショップの試聴機で軽く聴いたことがある程度で、なんとなくジャンルを把握しているくらいの知識しかなかったバンドに骨抜きにさせられたのだから。
ライブが始まって直後は良いバンドだなという印象だった。だがセットリストが進むにつれて凄いライブを見ているのがじわじわ実感できた。良いバンドってレベルじゃないぞ!と感じながら、最後方からグングンと前方へ移動。詳しく知らないバンドにライブで引き込まれていくのは本当に気持ちいい。初めての”Ocean”を見せられた時にはもうファンになっていた。
結局この年のお目当てのどのバンドよりも、ジョン・バトラー・トリオが観れたことが最高の喜びとなった。
Photo by 北村勇祐
Text by 松村大介
「週刊フジ」はフジロッカーズオルグのスタッフがそれぞれの観点で、フジロックへの思いを綴るコラムです。毎週水曜更新!一覧はこちら。