週刊フジ 〜名場面編⑥〜
- 2016/06/01 ● 週刊フジ
ジャムバンドシーンへの扉を開いた「萌え系」バンド
「『萌え~』っていうバンドがあるぞ」と、ひやかし半分で向かったヘブンで衝撃を受けた。「moe.」と書いて、「モー」と読む。「萌え」ではない。
2004年、初めてのフジロック。友人に誘われ、大した期待もせずにむかった先で、音楽を軸に広がるワンダーランドに酔いしれた。すべて見てやろうと会場中を練り歩き、最後にたどり着いたのが日曜夜のフィールド・オブ・ヘブン。ミラーボールから放たれる無数の光が舞い、Candle JUNE氏によるキャンドルデコレーションが、ヘブンの一角を美しく彩っている。これがフィールド・オブ・ヘブンを聖地とする、ジャムバンドシーンへの入り口だった。
ロック調の楽曲ながら、どうにも感触が異なる。ほど良いゆるさを持ったリズム上で、各パートが会話をするように音が紡がれていった。「ゆるい」といってもダラダラしているわけではなく、オーディエンスを盛り上げるポイントをバンド全体で探っているような雰囲気だ。体験したのはわずか数十分ながら、すっかりその世界に魅了されてしまった。
moe.のみならず、国内外のシーン動向を追いはじめたのは東京に戻ってすぐのこと。ネットで情報を漁り、CD屋に通った。シーンののれんをくぐると、日本各地の小さなフェス、ファンが支持する独特なライフスタイル、価値観などが見えてくる。バンドやフェスを追って日本、世界を旅した。新しい経験が、また次の経験へのステップになっていく。この旅路に果てはないけれど、スタート地点はハッキリしている。ヘブンで見たmoe.だ。「萌え」ではない。
Text by funa
Photo by 北村勇祐
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