週刊フジ 〜名場面編④〜
- 2016/05/11 ● 週刊フジ
2014年7月26日、土曜日の夜。当日の取材を終えてキャンプサイトへ戻り、就寝前のビールを買い求めに店へ行ったときのことだ。どこかで見たことのある、怪しい男の姿がそこにあった。
2014年7月26日、土曜日の夜。当日の取材を終えてキャンプサイトへ戻り、就寝前のビールを買い求めに店へ行ったときのことだ。どこかで見たことのある、怪しい男の姿がそこにあった。髪はボサボサで無精髭、顔を覗き込んでも、視線を合わせようとしない怪しい奴。そう、そこにはなんと、元プロ野球選手・野村貴仁がいたのである。
…というのは嘘で、僕の目の前にいたのは翌日に出演を控えたザ・フレーミング・リップスのボーカル、ウェイン・コインだった。
「なぜ、ウェインがキャンプサイトに?」と思ったが、僕は「ハロー」としか声を掛けることができなかった。その後、一緒に居たスタッフとビールで乾杯し、話をしていたが、ウェインだけは口を開かず、僕が腕につけていた趣味の悪い、トゲトゲのブレスレットをずっと見ていた。
ビールを飲み干し「そろそろ帰ろうか」と思ったとき、ウェインはようやく口を開き「そのブレスレットはどこで買ったんだ?」と僕に聞いてきた。どこで買ったのかを説明できなかった僕は、それを彼にプレゼントした。すると、先ほどまで不機嫌そうだった表情は一転。それを右腕につけて、写真を撮らせてくれた。それがこの写真だ。この話は14年のフジロック・エキスプレスにアップしたのだが、実は続きがある。
フジロックも終わり「きっとウェインはブレスレットを捨てただろう」と思っていたとき。SNSに1枚の画像が流れてきた。それはウェインが表紙を飾ったヨガ雑誌だ。その画像をよく見ると、なんとびっくり。彼の右腕には、僕がプレゼントしたブレスレットが写っていたのである。
フジロックの会場内を歩いていると芸能人やミュージシャンとすれ違うことがある。だけど、きっと後にも先にもこんな経験をすることは無いだろう。ウェイン、ありがとう。
Photo & Text by アリモトシンヤ
当時のレポートはこちら
http://fujirockexpress.net/14/p_7846
「週刊フジ」はフジロッカーズオルグのスタッフがそれぞれの観点で、フジロックへの思いを綴るコラムです。毎週水曜更新!一覧はこちら。