週刊フジ 〜名場面編③〜
- 2016/04/27 ● 週刊フジ
2007年 ジョン・バトラー・トリオ@ホワイトステージ
フジロックで一番印象的な思い出とは…。このコラムの依頼があってから自分なりに色々思い返してみたが、自分の撮影した写真を見返す良い機会だと思い、昔のハードディスクを引っぱりだしてみた。
頭の中では、あらかじめ何個かベストアクトの候補はあがっていたが、中でも2007年のホワイトステージで演奏したジョン・バトラー・トリオを撮影した時の事が強く印象に残っている。トリオでの演奏を数曲やった後、ジョン一人がステージに残り演奏を始めたのは、代表曲”Ocean”であった。それまでのトリオによる演奏で、盛り上がっていた会場は一変して、静寂に包まれる。ホワイトステージにはギター一本の音のみが響いていた。ファインダーから覗くジョンからは悲しさや苦しさ、うれしさや楽しさなどの、さまざまな表情が見えていた。そして演奏される音にもそんな情景が現れていて、今まで味わった事のない感覚になり、ファインダー越しに涙してしまったことを覚えている。そんな時に後ろを振り返ると、満月に近い月が出ていて、その下には本当に幸せそうな表情で涙を流している大勢の観客がいた。
このライブの他のカットを改めて見返してみたけれど、本当にみんないい表情をしている。これだけの大勢を同じ感覚にさせる音楽は、改めて本当に素晴らしいと思ったし、この日の出来事は今も写真を撮る原動力になっている。
Photo & Text by 北村勇祐
当時のフォトレポートはこちら
http://fujirockexpress.com/07/report/report.php?id=262
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