フジロック、最近どうよ!? シリーズ その1 ――南兵衛@鈴木幸一さんインタビュー

2月 1st, 2010

1遅くなりましたが、みなさん明けましておめでとうございます。 orgは地味に動いております。
さて、フジロックも13回を数え、苗場でも11回おこなわれてすっかり定着した。成熟したとか、世代交代したとか、マナーが悪くなったとか、いろいろいわれているけど、現場の人たちはどのように思っているのだろうか。まずは、ジプシー・アヴァロンに関わる南兵衛@鈴木幸一さんに登場していただき、語ってもらった。

南兵衛@鈴木幸一さんは、オフィス・アースガーデンの代表で、フジロック以外でも、朝霧JAM、”渚”Nagisa Music Festival、メタモルフォーゼ、ap bank Fesなどフェスや、代々木公園でおこなわれるアースデイ、アースガーデンの現場作りに関わっている。fujirockers org.では以前インタビューをおこなっているので、まずをこちら(前篇後篇)をご覧いただきたい。豪快に笑い、かつ、しっかりとして鋭い視点を持つ人である。実は、このインタビューは全部で1時間半くらいで、まとめるのがもったいないくらい話が多岐に渡った。長くフジロックや野外フェスと歩んできた南兵衛さんからフジロックの変化はどのようにみえるだろうか?

著書『フェスティバル・ライフ―僕がみた日本の野外フェス10年のすべて』・レビュー

アースガーデン HP

南兵衛さんブログ

【「フェス人気が踊り場にさしかかった」説】

踊り場、中にはピークを越したという人もいるけど、そうでなくポジティブな意味での踊り場にあるんだと思うんだよね。定着して、みんな最初は物珍しいからいってた時期が過ぎて、ブームもいくつか起こして、ブームだからゆえにワッと出る時期があって、それを過ぎてまさに一息ついている段階だよね。当たり前もになったし、当たり前だからこそあんまり世の中的には話題にもならないみたいな。でも、製作関係者は意外に明るいというか、淡々としているよね。

例えば飲食の売り上げも、今年、動員数的には落ち着いてはいるんだけど、案外落ちてないっていう。関係者とのやり取りの中で出てくる話でもそういう空気感は伝わってくる。それはね、日高さんがいつも言ってたのは、音楽云々じゃないところでお客さんが確実に来るフェスを作るためにフジロックをやってるんだって、だからこそあれだけステージを増やし、音楽的には余計かもしれない仕掛けをいっぱいするわけだよね。キッズランドもそうだし、ある意味アヴァロンそうかも、NGOヴィレッジやパレスなんかもそういうものがすごくあるし、そういう意味では今まできてその価値がじわっといぶし銀のように出てきてるのかもしれないね。

2洋楽の呼び屋としてスマッシュ的には、ロック・イン・ジャパンやってもしょうがねえだろというのは当然あるだろうし、でも、日本人のアーティストがじわじわ増えているのも確かだよね。実際そうなるよね。だってさ、グラストンとかボナルーとか凄いっていうけど、グラストンなんかは出演者の7割から8割までが、イギリスのアーティストじゃないかと思うくらいだし、ボナルーもアメリカのアーティストがほとんどなわけだから、そういう中で、毎年しみじみ思うけどね、洋楽アーティストが過半数のフジロックはとんでもないことをしてるなあと思うよね。

極東の国まであれだけのバンドを持ってきて、山の中まで連れてって、洋楽アーティストの来たときの気遣いとか、ブッキングの流れとか、俺も自分がフェスの主催をしているからそれなりに見えるけど、あれだけの数のアーティストに対して、あれだけのケアしているっていうのはとんでもないなあと、想像つかないんだよね。フェスティバルの製作の大概のことについては、もう当たり前に想像はつくようになっているけど、洋楽アーティストをホテルの用意から何から何までだからね。それは本当にみんなが思っている以上に凄いことで、グラストンやボナルーの主催者でもちょっと想像がつかないようなところがあるレベルだよね。まあ世界一というかとんでもないレベルだと思うよ。

最初のころは「まずフジロック行かなきゃ」という感覚が凄いあったと思うんだよね。そういう刷り込みがはっきりあった。でも、今の世代はそういう感じじゃないと思うんだよね。フジロックもあれば、サマソニもある。3、4年前までは雑誌の夏フェス特集の見出しの流れは、必ずフジロック、サマソニ、その他みたいに、フジロックが絶対トップだったんだけど、最近はロック・イン・ジャパンやサマソニが頭で、その順番が完全に崩れはじめたんだよね。

まあメディア的に、フジロックに気を使わないと、という空気感が薄くなっていて、それは別にしょうがないと思うんだよね。身近で同じようなものがあって楽しめるわけだから。「フジロック行って何があるの?」っていうところがしっかりないと、フジロックだからできることとか、フジロックだから観られるものとか、フジロックだから何が体感できるかっていうのが、ますます大事になってきているね。まあ、それまで見越して日高さんもいろいろ企画を立てていると思うんだけど、そこが追いついているかといえば、厳しいからこそ動員的にも落ち着いているわけで、何よりフジロックにとって一番の敵であり、味方であるのは苗場っていう環境だから、苗場だからできることっていうのをどこまで本当に追求できるのかだよね。APバンクフェスの「AP」ってアーティスト・パワーということなんだけど、アーティスト・パワーそのもので、引っ張っていくフェスもある。小林武史や桜井和寿がやるっていうだけで、できちゃうことは確実にあるわけだから。清志郎さんが日高さんとやろうというだけで、できたことはあったわけでそういうアーティストが出てくるのか、どうなのか。

【お客さんの変化について】

着々とタフになってて、それが一番うれしいね。何よりもうれしいね。今年のフジロックで、今までで一番雨が降ったと思うけど、もうさぁ、最初天気予報が見たときにどうなることかと思ったけど、お客さん見事なほど平然としていたよね。あの雨の中で平然と、雨の中のアヴァロンで淡々とご飯を食べていて、でも案外辛そうでもないという。結構楽しそうに、雨具もちゃんと着て、足回りもしっかりしてて、ちゃんと準備万端整えて、完全に俺の予想というか、体感を超えてるなあと、よくみんなここまで鍛えられてきたなあ、しみじみ思ったね。いっそのこと丸三日雨続きで伝説の雨のフジロックにしようぜって、ちょっと思ったもんね。そんなこと言うと怒られそうだけど、それぐらいで伝説になったほうが、体感したみんなにとっては「あの雨の中のフジロックを俺たちはやりきったんだぜ」って思えるじゃん。それぐらいの方がいっそいいんじゃないのフジロックにとって、って思ったね。まあ晴れてそれはそれで幸せだったけどね。

いつも夜半過ぎのオアシスに行くと、ごみが凄い散らかっていて、世界一とか言ったって、こうじゃねえかよって見ていたんだけど、なかなかA SEED JAPANも人をつけきれないし、夜はどうしても荒れるから、それはしょうがないことなんだけど、今年とか、去年とか夜遅くにいってもそんなに散らかってないんだよね。そういう意味では、人がちょっと減っているから、その分落ち着いているっていう部分も、もちろんあるけど、逆に言うとそれだけコアなしっかりとした意識を持った子達が来てくれているともいえるだろうし、あんまりマナーはこの2,3年悪いっていう気はしないなぁ。

キャンプサイトでドンキホーテで1万円のテント買ってきてさ、張り捨てていくやつとか毎年それなりにいて、1年目2年目とか、ある程度キャンプサイトの清掃を見ていたから、げっそりしたけどね。相変わらずそういうのが続いているっていう話あるんだけど。でもお客さん全体には、ネガティヴなイメージはそんなにないね。

3雨の中でもみんなタフで、今年ぐらいの雨がもし99年に降っていたらフジロックはこのときで終わってたかもしれない。やっぱり物事っていうのは、天の計らいで動いていくところがあって、やっぱり「続けろ」って背中を押されるときってあるんだけど、フジロックって、苗場の3年目ぐらいまで、まともに雨降らなかったけど、でもその後ほとんど毎年降っていることを考えると、本当に天の計らいだと思うんだよね。やっぱり日本でフェスティバルをやれよ、ってあの3年間で神様が背中を押してくれたんだと、大げさじゃなくてそう思うね。

【朝霧JAMに言いたいこと】

これは日高さんと話したいと思ったんだけど、どういう気持ちで今年のブッキングをしているのか聞いてみたい。決して悪いブッキングではないし、日高さんがズルする人じゃないけど、今までの朝霧のエネルギーからはトーンダウンしたブッキングだと思うんだよね。正直「?」マークだよね。「大自然の中に大勢の人たちを連れ出す」という口実としては、朝霧JAMは役割を十分果たしているし、各アーティストのポテンシャルを引き出すだけの場所と、プロダクションと、お客さんの質が確立しているから、だからこそできるブッキングで横綱相撲でもあるよね。俺にも真似できないし。でも、3年前の朝霧JAMに来た人が「おおっ!」と思えるブッキングなのかということに尽きると思うよ。

邦楽に関してはフジや朝霧に出したいと思っていて伸び始めているアーティストなら、先に渚音楽祭に引っ掛かってくるけど、今はそういう流れが落ち着いちゃっている感じがする。だから出したくてもふさわしいアーティストがいないのかもしれない。

【これからのフェス】

日本って5000人くらいの規模でフェスができるところはいっぱいあって一県一フェスくらいになってもいいと思っているんだよね。フジロックのチケットが高くて行くことができない人でも、入場料が安いフェスだってフジロックほど求めなければいっぱいあるし。そういうフェスを体験してフジロックのすごさを改めて感じることができると思うよ。フジロックは苗場の土地という制約があって、もしアヴァロンをもっとデコレーションしたいと思っても、搬入するための車両を一台入れることや導線の確保とかだけでも、いろいろ大変だったりする。

フジロックとレイヴの違いは規模感の違いで、フジロックの方は規模が大きいことでより社会性が高くならざるを得ないから、レイヴってせいぜい3000人ぐらいだと思うんだよね。で、それとやっぱフジロックの一日最大4万人とかって規模感を比べるたら当然4万人の方が社会性が高いよ、より多くの人が、より当たり前に来ているわけで、そこで求められる社会性ってのは、その辺のレイヴとはケタが違うっていうか、フジロックには当たり前に弁護士もいるわけだし、警察がチェックにくるのも当たり前なわけだし、そういういろんな当たり前にあるわけだよね。でも、3000人の規模で一晩だったら、警察にも保健所にもいかずに音の問題さえなければ、スーとやってスーっと終わっちゃうもんだからね。社会性が必要とかっていう以前だったりするわけよ。まあ、それぐらいの違いなんじゃない?

今後規模の大きいものが日本でできるかどうかわからない。苗場が2倍になるかっていえばならないわけ。グラストンバリーが本格的に規模が拡大していくのは80年代の後半くらいからなんだよね(注)。フェスに当たり前に行くっていう認識が浸透したりする段階で10年?20年はかかっている。フジロックはたかだか10年ちょっとだから、面白いのはこれからなんだよね。

4フジロックが移転して大きくなることがいいことかどうかはわからない。それは天の計らいとしかいえないような何かが絡み合ってはじめて起こることだから、それは想像もつからない何かが起こるかもしれないし。実際、15年前に今のような日本のフェスティバルカルチャーが生まれると思った人はいたのかっていうことで、そういう意味では人は案外10年先のこともわからないんだよね。その10年後に柔軟に力を出せる自分であるように、目の前のことを楽しんで鍛えていくばかりだよね。日高さんがフジロックを始めたのは50歳の前だから、僕は今40なんだけど、自分が本当に勝負していくのは、まだこれから10年先だと思ってるんで。フェスはこんなことさえリアルに突きつける面白いものがあるんだよね。

注……グラストンベリーは1970年に初めておこなわれたときの動員は1500人。83年に3万人、86年に6万人。98年に10万人を超え、2009年は13万4000人だった(公式サイトより)。

text by nob, photo by takumi,yoshitaka,tammy

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いわん

2010/02/11 at 12:36 PM | Permalink

ぶっちゃけた話が聞けて、凄く面白かったです。
これからもこういう企画続けてください!

それから、今年も大将インタビューまってます!

kwzzz (kwzzz)

2010/07/31 at 4:10 PM | Permalink

興味深し→ http://fujirockers.org/10/?p=53

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